ケルビエル氏の不正取引、仏金融事務職のトレーダー転身チャンス奪う

フランスの銀行ソシエテ・ジェネラルの元 トレーダー、ジェローム・ケルビエル氏(31)が行った未承認取引の影響で、同 国の金融機関では事務職がトレーダーに昇進するのが難しくなっている。

ケルビエル氏はソシエテで法令順守や管理など、いわゆるミドルオフィス 職に5年間従事した後、2005年にトレーダーとなった。同氏の未承認取引が 49億ユーロ(約7720億円)の損失につながったと同行が公表したのは、先月 のことだ。

コーン・フェリー・インターナショナル(パリ)で金融業界の人材あっせ ん業務顧問を務めるゲール・ドロクフイユ氏は「ミドルオフィス職はトレーダ ーへの跳躍台ではなくなるだろう。転身はもともと難しくなっていたが、少な くとも短期的には可能性は完全になくなった」と語る。

人材あっせん会社によれば、フランスのトレーダーの出身校は通常、HE C経営大学院のようなエリート養成高等教育機関群である「グランゼコール」 で、ケルビエル氏が金融サポートで修士号を取って卒業したリヨン第2大学で はない。ソシエテは、同氏に同行の管理システムの知識があったため、欧州株 価指数の先物取引で500億ユーロものポジションを秘密裏に積み上げることが できたと指摘する。

バックオフィスやミドルオフィスの仕事は事務、法令順守、リスク管理面 などでトレーダーをサポートするもので、金融のプロ育成会社デュモの代表、 バンサン・リオット氏によれば、年収はボーナスを含めて6万-12万ユーロ。 これに対し、トップトレーダーの稼ぎは400万ユーロにも上るという。

ボーナスへの期待

外国為替コンサルティング会社でリヨンに本拠を置くリスケッジのリスク 管理専門家、シャルロット・ジョフル氏は「バックオフィスやミドルオフィス で優秀だった人材の一部は常に、フロントオフィスでさらに稼ぐという考え方 に魅せられてきた」と語る。

ケルビエル氏は1月26、27両日の取り調べで検察官に対し、2007年に60 万ユーロのボーナスがもらえることを期待していたが、ソシエテが示唆してき たのは30万ユーロに近い数字だったことを明らかにしている。検察当局は、ボ ーナスへの期待が銀行の規定を超える規模の取引に同氏を走らせたとみている。

ケルビエル氏の起こした事件をきっかけに、金融機関はミドルオフィス職 に対する研修を拡充するとともに、手当も増やす可能性があると、ドロクフイ ユ氏はみる。同氏は「フランスの金融機関は英米と比べ、ミドルオフィスやバ ックオフィスに対する支払いが低い」と指摘。「フロントオフィスの金融商品が 高度化し、ミドルオフィス職が非常に重要になっている」と語った。