【経済コラム】豪州はパーティー気分、中銀を除いては-J・ベリー

オーストラリア準備銀行(RBA)のグレ ン・スティーブンス総裁は先月、空路ロンドン入りした際、「太平洋の時間帯か ら欧州の時間帯に移動した人が出会う『著しい信頼感の温度差』」に気付いたと 話した。

総裁がもしニューヨークやワシントンに来ていたら、その温度差はもっと 大きかったかもしれない。

米金融当局が消費者信頼感の低下に対応し、リセッション(景気後退)回 避に向けて利下げを実施している一方で、スティーブンス総裁が抱えているの は正反対の問題だ。

RBAは今月5日に0.25ポイントの利上げを実施し、政策金利を11年ぶ り高水準としたが、それだけでは連続プラス成長が17年目となっている過熱し たオーストラリア景気を抑制するのに十分ではないと、スティーブンス総裁は 心配している。

総裁は1月18日、ロンドンでの講演で「オーストラリア人は、1年間にわ たり目いっぱい成長した経済に対応した後、夏休みに充電期間を取った。その 一方でこちらの世界の人たちは、世界経済の見通しを立てようと懸命に努力し ている」と語った。

オーストラリア東部の状況を見る限り、そもそも充電など必要ないのでは ないかとも思えてくる。シドニー港に隣接する人気観光スポット「サーキュラ ーキー」に集まる大勢の人々。複合施設「オペラハウス」で高額オペラ「カル メン」を鑑賞する前に飲食を楽しむ人たち。メルボルンのヤラ川沿いの遊歩道 は中国の春節(旧正月)を祝う人たちで大混雑し、世界最大の珊瑚礁「グレー トバリアリーフ」のハミルトン島に向かうジェットスターの格安便は、ビーチ ウエアを着た家族連れで満席だ。

心配の理由

皆がパーティー気分に浸っているように見える。例外はおそらく、利上げ に伴って金利が上昇した変動金利型住宅ローンを抱える住宅所有者だろう。こ の国の住宅ローンは固定金利型よりも変動金利型が支配的だ。

オーストラリアの熱狂は、同国の国際商品輸出の需要が大幅に伸びたこと に伴う並外れた好況がもたらした産物だ。昨年12月の失業率は4.3%と、30年 ぶりの低水準に低下。企業利益は伸び、政府の財政黒字は持続。過去5年間に は毎年減税が実施された。

一方で、昨年10-12月期の基調となるインフレ率は3.8%と、16年ぶりの 高水準を記録し、RBAの目標レンジ(2-3%)を上回った。スティーブン ス総裁の心配の理由はここにある。

過去4年間にわたり、オーストラリアの金属や石炭などの輸出量は約20% 増加した。同時に商品相場も大幅に上昇したため、同国の輸出利益は50%を超 える伸びとなった。支えになったのは、中国の原材料需要の拡大だ。

RBAは2月5日、オフィシャル・キャッシュレートを0.25ポイント引き 上げ7%にするとともに、声明で追加利上げの可能性があることを示唆した。

米国や欧州に多大な影響を与えた金融市場の混乱だが、オーストラリアが 受けた影響はかなり小さかった。それでも株式相場には影響が及んでおり、年 初から下げ基調が続いている。

追加利上げ?

スティーブンス総裁は、設備稼働率が高く、熟練した労働力は短期的に不 足し、「インフレ率は比較的高い水準を維持する可能性が高く、おそらくさらに 上昇するだろう」との認識を示した。

この認識は、11日公表されたRBAの四半期報告書でもあらためて示され た。報告書は「インフレ率が居心地の悪い高さをしばらくの間維持するリスク はかなり大きい」と指摘するとともに、「経済リスクがさらに下方にシフトして いないため、今後は引き締め気味の金融政策を取る必要がある可能性は高い」 と指摘した。

シドニーやメルボルンのアナリストの多くはこの報告書を、以前より速い ペースで追加利上げが実施されることを意味するものと受け止めた。

RBAはこれまで、各四半期の中央の月に政策金利を変更することが圧倒 的に多かった。消費者物価指数(CPI)が3カ月に1回だけ、各四半期の最 初の月の終盤に発表されることも理由の1つだ。

RBAは昨年12月、政策金利を据え置いた場合にもその理由を説明する発 表文を出すことや、政策決定会合の2週間後に議事録を公表することなどを柱 とした情報公開の新たな方針を発表した。議事録はこれまで非公表だった。

待つ必要なし?

現在、アナリストの間で関心が高いのは、スティーブンス総裁が、追加利 上げが必要なら5月まで待つ理由はないと判断するかどうかだ。総裁はこれま での慣習を再び破って3月に利上げを実施すべきだとの結論に達するかもしれ ない。

アナリストの間には、RBAは来月利上げをすべきだという声や、5月ま で待つべきだという声のほか、利上げの必要性そのものに疑問を投げ掛ける声 もある。

スティーブンス総裁が願っているのは、RBAが再び住宅保有者の怒りを 買うこともなく商品相場を下落させることで景気の抑制効果が見込める、米景 気の減速かもしれない。 (ジョン・ベリー)

(ジョン・ベリー氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。 このコラムの内容は、同氏自身の見解です)

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