ウォール街:株式公開がリスク意欲の元凶か-賭けるのは「他人の金」

ウォール街最後の主要なパートナーシップ 企業だったゴールドマン・サックス・グループが株式を公開してからもうすぐ 10年になるが、株主は業界のリスクテーク拡大の資金を出し、その損失を被る 格好になっている。株主の損失はパートナーたちにとっては考えられないよう な水準だ。

米証券大手5社のうち4社は昨年、時価総額にして830億ドル(約8兆8700 億円)を失った。ブルームバーグ・データによると、これはゴールドマンが株 式を公開した1999年以来の純利益の約90%に相当する。これにより、モルガン・ スタンレー、メリルリンチ、リーマン・ブラザーズ・ホールディングス、ベア ー・スターンズ4社の株式の9年間の投資収益率は年平均9.7%と、16.8%から 低下した。

プライベートパートナーシップだったころの各社は資本の安全を重視し、 最近のようにレバレッジを効かせることはしなかった。ニューヨーク大学スタ ーン経営大学院の金融学教授で元ゴールドマン・サックス・グループのパート ナー、ロイ・スミス氏によれば、大手証券会社がリスクを取るのは、顧客のた めの大口株取引とM&A(企業の合併・買収)関連株の売買ぐらいだった。

株式を公開してから、多くの金融機関がこのような慎重姿勢を捨てた。1994 年にモルガン・スタンレーを引退したアンソン・ビアード氏は「他人の金で賭 けをする方が、自分の金よりもリスクを取りやすい」と指摘する。モルガン・ スタンレーは1986年に株式を公開した。同氏は「報酬として会社の持ち分を受 け取っているときと、現金を受け取っているときでは考え方が変わる。うまく いけば勝ち、うまくいかなくても負けではない賭けだ」と話した。

米国のサブプライム(信用力の低い個人向け)住宅ローン関連証券とレバ レッジド・バイアウト(LBO)融資で打撃を受けた証券会社の株主の損失は、 さらに膨らむかもしれない。

今年も下落

モルガン・スタンレー、メリル、リーマン、ベアー・スターンズの株価は今 年に入ってからも、3-19%下落している。金融保証会社(モノライン)が格 下げされ、評価損が膨らむ懸念などが背景にある。仕組み金融商品やLBO向 け融資からの収入の減少に加え、米景気減速でM&A助言や証券引き受け事業 も減速する公算が大きいとアナリストらはみている。

昨年のサブプライム関連損失を免れたゴールドマンも、株価は年初来13% 下落した。中国工商銀行株など保有株式の下落や投資銀行業務の収入減で、今 年は減益になると予想されている。

1971年に上場したメリル株のリターンがS&P500種株価指数を上回った のは過去10年で5年のみ。モルガン・スタンレーは4年だ。両社とも、昨年は 外国政府に株式を売却し、株主利益を希薄化させた。

トレーディングでの賭けの大きさで知られていたソロモン・ブラザーズ(当 時)を1980年代に率いたジョン・グッドフレンド氏は、株式を公開すれば賭け るのは「しょせん、『他人の金だ』」とコメントした。

緩衝材

今では、各社とも社員の持ち分は3分の1に満たない。ウォール街の上級 経営陣の報酬は通常、少なくとも半分が株式だが、好業績時に受け取った現金 賞与が、痛みを和らげる緩衝材となっている。