【経済コラム】中国の大雪は政府系ファンドに利益もたらす-ムカジー

中国を襲った壊滅的な大雪の影響により、 少なくとも60人が死亡し、経済的損失は75億ドル(約8010億円)に上ると 推計されている。今回の被害は、中国における天候デリバティブ(金融派生商 品)の必要性を浮き彫りにした。

米国のサブプライム(信用力の低い個人向け)住宅ローン担保証券をめぐ る問題が発生して以降、金融イノベーションを促進する動き(さらに言えばイ ノベーションに対する寛容さ)は後退してしまったかもしれない。このような 状況で、クレジット・デリバティブに対して強硬な姿勢を取る新興市場の中央 銀行当局者らを非難することができるだろうか。

ただ、科学者らが気候変動と自然災害の頻度の劇的な増加との関連につい て警告を発するなか、中国での今回の大規模な被害は、近代的な金融手段を駆 使することによって、悪天候がもたらす結果に対処する必要性が引き続き高い ことを示している。

ここ10年で発展した、気温や降水量などの気象条件に関連した先物の年 間取引高は190億ドルに上る。アジアはこれまで、これらの先物取引に活発に 参加してはいなかった。アジアの天候関連先物市場で優勢なのは台風に関連し た金融商品もある日本だ。2004年10月には台湾の金融当局が、銀行による天 候関連オプションの取引を解禁した。

中国もインドなどアジアの他の主要な新興経済国同様、大きく変化する天 候の影響を非常に受けやすい。

中国のリスク

中国経済はインドの2.5倍の規模を誇り、悪天候の影響を受ける業種も公 益や運輸関連、小売店、保険など広範囲に及ぶ。悪天候の影響で治安上も緊張 が高まることが今週、明らかになった。広東省深センなどの工業都市では、数 百万人の出稼ぎ労働者らが、春節(旧正月)の連休を過ごすため、ことしは廃 墟と化してしまった故郷の村々に向かっている。これらの労働者は足止めされ、 いら立ち、怒っている。広州駅では女性1人が雑踏のなかで死亡。駅の過剰な 混雑による2人目の死者となった。

ブラックスワン

06年半ばに天候関連先物の取引を開始する計画を発表した大連商品取引所 は、早急に計画を実行に移すべきだ。中国政府は、2000億ドルを運用する中国 の政府系投資ファンド(ソブリン・ウエルス・ファンド、SWF)、中国投資 公司(CIC)に投資を呼び掛け、市場の関心を高めることもできる。

その際、CICにとってただ1つ制約となることがある。それは、元オプ ション・トレーダーのナシム・タレブ氏が「ネガティブ・ブラック・スワン」 と呼んだ現象だ。つまり、ちょうど、過去50年で最大規模となったことしの 大雪のように、比較的頻度が低く、好ましくない結果が発生した場合、 CICによる投資が大きな影響を及ぼす可能性があるということだ。

災害が発生しなければ、銃撃部隊に待ち受けられているような脅威をCI Cが感じることもない。実際、政府の投資による毎年の損失額も少額にとどま るはずだ。利益が上がれば、政府はその資金を、悪天候により被害を受けた公 共施設の修理や被災者の救援に充てることができる。

リスク分散

CICが予想できる通り、気温が平年を大幅に上回ったり下回ったりすれ ば、その反対の状況になると見込む投機筋が不足することはないだろう。銀行 も投資を呼び掛けるだろう。ただ、銀行の参入は注意深く規制されるはずだ。

しかし、銀行自身が天候リスクをヘッジすることは許容されるべきだ。標 準的な先物は取引所で取引され、さらに複雑な解決策を必要とする企業は店頭 取引を利用することになるだろう。店頭取引では、銀行以外の企業がリスクを 取ることになる。

天候関連の市場は、米経済のリセッション(景気後退)や中国のインフレ によって消滅する可能性が低いため、ことしに入って損失を出し打撃を受けて いる中国の株式投資家らは、リスク分散が可能な資産区分に投資できることを 喜ぶだろう。 (アンディ・ムカジー)

(ムカジー氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。このコ ラムの内容は同氏自身の見解です)