【書評】元モルガンSのビッグス氏:金持ちはこの3つの教訓を守れ

元モルガン・スタンレーのチーフ・グロー バルストラテジストで、退社後にヘッジファンドのトラクシス・パートナーズ を設立したバートン・ビッグス氏は、金持ち向けにちょっと変わったアドバイ スをする。戦争や大災害に備えて人里離れた土地に農場か牧場を買い、「種と肥 料、缶詰、ワイン、医薬品、衣服、その他」を備蓄しろというのだ。

「その他」は銃を意味するのに違いない。ビッグス氏は新著「Wealth, War and Wisdom(富、戦争、知恵)」で、「近寄ってくる盗賊どもの頭上に数発ぶっ 放してやれば、もっと簡単に襲える農場があると思わせる相当な説得力になる だろう」と書いている。

もっとも、本著のなかには最後まで、そんな活劇は出てこない。同氏は本 著で、第2次世界大戦が株価を暴落させ富を消滅させた過程から、今も投資家 が学べる教訓を拾い出す。その教訓とは、市場に耳を傾けよ、歴史から学べ、 最悪に備えろ、ということだ。

「Wealth, War and Wisdom」は、書物の世界での空白地帯を埋める。図書 館には第2次世界大戦に関する本がたくさん並んでいる。株式市場の歴史につ いての本もある。しかし、2つの関連を取り上げた本がいったい何冊あるだろ うか。

頭韻を踏んでいるこの本の題のなかの「Wisdom」は、市場が未来を予言す る不気味な力を指している。ビッグス氏は株式市場が戦争の大きな転換点を予 知する不思議な現象に偶然気付き、それに魅了されたという。

3つの転機

英国株は1940年6月末に底を打ち、ロンドン大空襲のさなかの7-10月に 上昇し始めた。当初劣勢だった英空軍は最終的に、本土防衛に成功する。ダウ 工業株30種平均は1942年の4月末と5月初めに「歴史的底打ち」をし、ミッ ドウェー海戦で日米戦争の流れが反転した6月よりずっと早く、上昇し始めた。 ドイツ株はロシアに侵攻したドイツ軍がモスクワに迫った直前に、ピークを付 けた。

ビッグス氏は、この3つは「第2次大戦中の重要な転機」だが、当時それ を認識したのは株式市場だけだったと記述している。もちろん、「ミスター・マ ーケット」が常に正しいというわけではなく、「頭に血が上ってパニックと不条 理に陥る」こともあるが、長期的に見ると市場はジェームズ・スロウィッキー 氏が著書で言うところの「みんなの意見」の表出だとビッグス氏は分析する。

ビッグス氏は、市場の動きは個人が別々に行った判断を集めて集合的判断 へと集積したものだと考え、この説を大恐慌から朝鮮戦争の終わりまでに世界 を驚かせた出来事に当てはめて検証している。

安心は間違い

ビッグス氏によれば、人類は「膨大な富の破壊」を少なくとも1世紀に1 回経験する。従って、金持ちはいつも、津波や相場暴落、イスラム過激派によ る「汚い爆弾」によるテロなどの大災厄に備える必要があるというわけだ。金 持ちは、災厄が起こっても「自分の身とお金を脱出させる時間がある」と考え て安心しているが、それが間違いだということはナチスによるユダヤ人大虐殺 が証明したとビッグス氏は指摘。「事態は誰が考えるよりもはるかに急激に展 開」し、「逃げる間もないうちに、あなたは犠牲者になっている」と警告してい る。 (ジェームズ・プレスリー)

(プレスリー氏はブルームバーグ・ニュースの書評家です。この書評の内 容は同氏自身の見解です)

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