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仏ソシエテ巨額損失:花形トレーダーになりたかったケルビエル容疑者

フランスの大手銀行ソシエテ・ジェネラル に不正トレーディングで49億ユーロ(約7700億円)の損失を負わせたとして 仏当局の本格捜査を受けているジェローム・ケルビエル容疑者(31)は、同行 での存在感を示すのに苦労していた。

鉄工員と美容師の両親の息子として生まれたケルビエル容疑者はリヨン第 2大学で最高学位を受けたものの、ソシエテ・ジェネラルの多くの幹部やファ ンドマネジャーが学んだエリート養成の高等教育機関グランゼコールの出身 ではなかった。

パリのジャンクロード・マラン検察官は28日、ケルビエル容疑者について、 「他の同僚と同じくらい価値ある人物だということを示したかった」と指摘、 「自分が成功し、金融の天才だと誰もが認めるようになると本当に信じていた」 と述べた。

同容疑者は警察の事情聴取に対し、後方支援業務、いわゆるバックオフィ ス部門から約2年前に昇進する形で異動なった後、徐々に含み益を増やし昨年 末までに30万ユーロのボーナスを得ることを目指していたと語った。不正取引 発覚は、世界の金融市場が混乱し、ソシエテ・ジェネラルがリスク管理を強化 したことがきっかけだった。

ルノー・バンルアンベック判事とフランソワーズ・デセ判事は28日、ケル ビエル容疑者を背任、コンピューターシステムへの侵入、文書偽造で正式調査 の対象とした。同容疑者は、身柄は釈放されたものの、パスポートを取り上げ られ、国外に出ることとソシエテ・ジェネラルとの接触やトレーディングへの 関与を禁じられた。

ケルビエル容疑者の代理人、クリスティアン・シャリエールブルナゼル弁 護士は、同容疑者について「窃盗犯ではない。善良な人物だ」と述べた。

「目立つこと」

マラン検察官によれば、同容疑者は警察に対し、認められた範囲を超えて ポジションを積み上げるのはトレーダーにとって珍しいことではないと述べ た。自らがソシエテ・ジェネラルの時価総額を上回る総額500億ユーロのポジ ションを積み上げる取引に関与したことを認めたという。

同検察官は、ケルビエル容疑者の目的は自身の金もうけのためではなく、 銀行のために利益を上げ、経営陣に存在感を示すことだと説明。同容疑者は 2000年からほぼ6年間在籍したバックオフィス部門で得た知識を悪用、同僚の パスワードを使うこともあり、偽造文書で裏付けられた架空取引で実際の取引 を隠していたという。マラン検察官は「トレーダーとして目立つこと」が同容 疑者の目的だったとしている。

ソシエテ・ジェネラル法人・投資銀行部門のジャンピエール・ムスティエ 最高経営責任者(CEO)は27日の記者団との電話会議で、ケルビエル容疑者 が「トレーダーになるための普通の過程」を踏まなかったことに言及した。同 行は通常、大学で数学や金融の学位を取得した人物を最初からトレーダーとし て採用する。

同CEOによれば、ケルビエル容疑者はバックオフィスでの「素晴らしい」 働きが認められトレーダーに昇進。同行のダニエル・ブトン会長は、同行が150 年間続けている昇進を促す方針に沿ってトレーダーになったとしている。

ムスティエCEOは、ケルビエル容疑者が欧州の株価指数先物を専門に扱 うトレーディング部門「デルタワン」で働いていたことを明らかにした。相場 の方向に賭けるのではなく、わずかな価格差で利益を稼ぐ裁定取引を担当して いた。

ソシエテ・ジェネラルが不正取引を突き止めた今月18日時点では、ドイツ のDAX指数とダウ・ユーロ50種株価指数を中心とする同容疑者のポジション は14億ユーロの損失だった。同行は、欧州株が下落する中でのポジション解消 を余儀なくされたため、35億ユーロの追加損失を被った。

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