【米経済コラム】サブプライムで大もうけしたあなたへ助言-M・ルイス

数カ月前に旧友と食事をしたとき、驚くべ き話を聞いた。

2年前に、不動産業界で何の経験もない感じの良い男がやってきて、米住 宅市場低迷に賭けて大もうけする方法があると持ち掛けたというのだ。この男 はただ米サブプライム(信用力の低い個人向け)住宅ローン関連証券の価格下 落に賭けるだけのヘッジファンドを設立しようとして、資金を集めていた。旧 友も出資を求められたが断った。今では損をした気分だとこの友人は言う。

「微に入り細をうがつまで、すべてあの男の言った通りになった」という。 そのヘッジファンド設立者の名前はジョン・ポールソンだった。ブルームバー グ・ニュースやウォールストリート・ジャーナル(WSJ)が最近伝えたとこ ろによると、同氏は2007年に30億-40億ドル(約3190億-4250億円)を手 にし、その高収入でウォール街の歴史を塗り替えた。

金もうけの長い歴史のなかでも、これほど短期にこれほど巨額の富を得た 者はいない。WSJ紙の記事はまた、ポールソン氏の鋭い直感が今、頭を低く して自分に注意を引きつけないようにと同氏に告げていることを示している。

住宅問題は人々に痛みを与えているので、ポールソン氏はお祝いをする気 になれないのだとWSJ紙は伝え、これに対し同氏は「多くの住宅保有者が犠 牲になったのだから」と付け加えた。思いやりの心を示すため、同氏は1500万 ドルを「センター・フォー・レスポンシブル・レンディング(責任ある貸し付 け)」という差し押さえに直面している住宅保有者を助ける団体に寄付した。

ポールソン氏の行動を額面通りに受け取ることは可能だ。同氏は2年前に 米国の住宅市場と住宅保有者に何が起こりつつあるかに気付き、それを主とし て空売りのチャンスととらえた。その時ですら、普通の人を代表して金融機関 に戦争を仕掛けようとしていたのかもしれない。

鋭い直感

ポールソン氏は今、起き出して電子メールに返答したりわずか数百万ドル を稼ぐために会社に行く気にもならず、米国の住宅保有者の苦境について心配 することしかできなくなっているかもしれない。一方で、同氏は米住宅市場崩 壊を予測したのと同じくらい正確に、同問題に関する将来の政策や世論を読み 取り、その予測に基づいた適切なポジションを取っているのかもしれない。な にしろ、ジャンク債の帝王と呼ばれたマイケル・ミルケン氏の時代以来、これ ほどウォール街が庶民の敵と見なされたことはないからだ。

そして、今やサブプライム危機で欠けているのは、皆が認める完璧な悪役 だけだ。大勢の人が訴えられているが、彼らもカネを失っており被害者だ。し かし金融の世界で悪役となるには、たっぷりもうけているという第一条件を満 たさなければならない。

通常ならば、ウォール街の大手金融機関のどれかに、この悪の黒幕の役を 演じさせることができる。しかし、ゴールドマン・サックス・グループを除く と、ウォール街の人間にも黒幕になれるほどの頭があったようには見えない。 そこに、ポールソン氏が登場する。同氏以外の抜け目のない投資家の名前もこ れから出てくることは疑いない。

矛先はあなたに

ポールソン氏と同類たちは本物の社会的リスクに直面する可能性がある。 巨万の富を得た者は一般大衆に観察されることから逃れられない。記事は書か れるだろうし公聴会は開かれ、訴訟が起こるだろう。これらの矛先は不可避的 に、人の不幸からカネをもうけた人間に向かう。彼らの生活はややこしくなろ うとしているわけだ。しかし下に示す幾つかの単純なルールを守るだけで、居 心地の悪さを最小限に抑えることができる。

ルール1:メディアから隠れるな。

他の金持ちはきっと、メディアを避けるようにアドバイスするだろう。し かし、彼らの言うことを聞いてはいけない。報道関係者は無視すればいい。ト レーディングは今や観戦用スポーツだ。誰もがメディアにしゃべりたがる。あ なたのトレーディングについて第三者から聞いたそれらしい話を掲載したがる メディアには事欠かない。小粒なヘッジファンドのトレーダーですら近ごろで は、朝起きると自分の昨日の活動がどこかに載っているのに気付くことがある。 まして、アメリカン・ドリームをつぶす賭けで米国一の金持ちになった人間に はプライバシーなどない。この金持ちが何をやったのか、どんなふうにやった のかを完全に理解するまで、世間は納得しない。

普通の人を装え

ルール2:「自分自身であれ」という忠告には耳を貸すな。

あなたはアメリカン・ドリームをつぶすことに賭けて富を築いたのだ。同 じ人間なのに、人の愚かさが人より早く見えてしまった。暗くて複雑で、陰の ある人間だ。金融スキャンダルでは影のある人間に良いことは何もない。ほか の誰もと同じような、明るく率直な普通の人を装うことに全力を尽くしなさい。 そうした人たちはお金をなくしているという点で、同じではあり得ないが。

近代の歴史で、死ぬほど大成功した投資家なのに愛されているのはウォー レン・バフェット氏だけだ。それには、普通ではないのに普通の人のように見 えることが役立っている。ネブラスカ州オマハに住んでいることも有利だ。普 通の人のように見えるし、ちょっと哀れにすら思ってもらえる。あなたは恐ら く、オマハではなく大都会かその郊外に住んでいるだろう。だからその分、普 通の人に見えるようバフェット氏よりも一生賢明努力する必要がある。誰にで も、普通に見えるような習慣や癖が何かしらあるものだ。自分を磨きなさい。

ポールソン氏はこれをよく理解しているようだ。WSJ紙の記事では、同 氏が今も「毎日バスで通勤する」ことが紹介されていた。いいぞ、その調子だ。

期待は低く

ルール3:社交生活への期待を低くしろ。

大金を手に入れた人間は多くの場合、すぐに幸せになることを期待する。 幸せに感じられないと、お金で幸せを買おうとする。豪華なパーティーを開い たり、これ見よがしにカネを分け与えたり、目に見えない壁をお金の力で乗り 越えようとしたりする。

しかし、新たに金持ちになった人、特にアメリカン・ドリームを売り叩い て金持ちになった人が取るべき最良の道は、今までよりも貧しいふりをするこ とだ。正装は脱いでリモコンを手に、ケーブルテレビを見て夜をすごそう。あ なたのお金を欲しがる人たち全員に、気前良くする意思があることを伝えよう。 しかし、実際にお金をあげるのは待とう。待っている間は皆、あなたについて 報道関係者や捜査当局に何を言うかに注意するものだ。

奇妙なことだが、米国の住宅保有者の運命を正しく予想したことの喜びを 最大限に味わうためには、彼らの1人であるかのように振る舞う必要がある。

完璧なイメージ作りはやぶへび

ルール4:イメージクリエーターは雇うな。

何をしても良いが、自分についてのプラスのイメージを作り出そうとして はいけない。あなたに必要なのは自分たちのサービスだと思い込ませようとす るコンサルタントやイメージクリエーターといった業界があるが、彼らのこと は無視しよう。お金で買ったイメージは、仲間に入れなかったジャーナリスト の疑いと興味をかき立てるだけだ。

必要なのは、完全には信頼できないが、あなたのトレーディングや魂を深 く掘り下げるエネルギーのないジャーナリストだ。WSJ紙やニューヨーク・ タイムズ紙、ブルームバーグ・ニュースの記者は避けよう。完璧な人物像とは、 ところどころにあなたが顔をしかめるような記述があり、あなたに深刻かつ長 期的なダメージを与えることなくあなたの敵を少し満足させるようなものだ。 運がよければ、あなたについての最後の評決は下されないままに終わるだろう。 (マイケル・ルイス)

(ルイス氏はブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。このコラムの内 容は同氏自身の見解です)

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