ウォール街のリスク管理モデルの神話崩れる-「監視」の必要性再認識

ウォール街を大胆にし、遠慮なく巨額取引 ができるようにしてきたリスク管理モデルの神話は崩れた。メリルリンチのジ ョン・セイン最高経営責任者(CEO)からモルガン・スタンレーのコルム・ ケラハー最高財務責任者(CFO)までが、どんなに先進的なアルゴリズムも トリプルAの格付けも、適切な監視という昔ながらの方法の代わりにはならな いことに気付かされた。

バリュー・アット・リスク(VAR、最大損失可能額)は、トレーディン グによって1日に発生し得る損失の最大額の目安だが、米国のサブプライム(信 用力の低い個人向け)住宅ローン問題による損失の規模を予想する役には立た なかった。米シティグループやメリルリンチ、モルガン・スタンレー、スイス のUBSなど世界の大手金融機関は2007年6月以来、サブプライム問題に絡み 1300億ドル(約13兆9000億円)超の損失を出している。

ここ半年の出来事は、金融機関が使用する過去の価格に基づいた手法の欠 点を浮き彫りにした。このような手法は、例えばサブプライム関連証券の格付 けの誤りのような重大な問題を、すべて予測できるわけではない。

ロンドン・ビジネス・スクールのナシム・タレブ教授は「金融というのは 滅多にないような出来事が支配する世界だ」として、「クオンツ金融でわれわ れが使っているツールは『ブラック・スワン』的な世界では役に立たない」と 話した。同氏が昨年出版した著書「ザ・ブラック・スワン」は、頻繁には起こ らない出来事の影響を人が過小評価しがちであることを、オーストラリアで17 世紀に黒鳥が発見されるまではすべての白鳥は白いと考えられていたことを例 に説明し、過去の分析はリスク判断の道具として十分ではないと指摘している。

VARが最も高いゴールドマン・サックス・グループは、2007年9-11月 (第4四半期)利益が過去最高だった。一方、米5大証券会社のなかでVAR が2番目に低いメリルは同年10-12月(第4四半期)が98億ドルの赤字だっ た。

セインCEOは17日、利益を帳消しにしてしまうような取引はやめるべき だとの考えを示した。同CEOはメリルのトレーディングのポジションを監督 する部門を再編し、元ゴールドマン幹部を共同リスク責任者に迎えた。UBS のマルセル・ローナーCEOもリスクを減らす考えを従業員に伝えた。その一 環として、米国で債券トレーディング部門を閉鎖した。モルガン・スタンレー はリスク管理部門をCFOの直属とした。

管理強化は仏銀ソシエテ・ジェネラルが被ったような「ローグ(ならず者)」 従業員による被害を防ぐのに役立つかもしれない。ソシエテは先週、未承認取 引によって72億ドル(約7690億円)相当の損失を被ったことを明らかにした。

ただ、タレブ教授によれば、リスク管理者を雇い権限を高めても、ウォー ル街が統計に頼ってリスクを測ろうとしている限り、昨年のような事態を防ぐ ことはできない。同氏は「クオンツのモデルによってリスクを測ることに完全 に失敗したにもかかわらず、人々はクオンツ分析の専門家やリスク管理者を雇 う。結局、リスクを取りたいという願望があるからだ」と指摘する。「計算で きない可能性というものがあるのに」と同氏は付け加えた。

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