後を絶たない「ローグトレーダー」-ソシエテのカービエル氏が仲間入り

姿を消したローグ(ならず者)トレーダー。 対応に追われる銀行。何が起こったのか分からずとまどう株主。

ニック・リーソン氏が14億ドル(約1500億円)の損失を残して消え、世 界中で行方捜索が繰り広げられてから10年余り、トレーダーが上司には理解で きないような複雑な金融商品を操る現代の金融の世界で、こうした展開は珍し くなくなった。

仏銀ソシエテ・ジェネラルに銀行業界で史上最悪となる49億ユーロ(約 7750億円)の損失をもたらしたジェローム・カービエル氏(31)は、未承認の 取引で巨額損失を出したトレーダーとしては、1994年以来で少なくとも7人目 だ。こうしたトレーダーは、ある者は損失を隠し、ある者は捜査を妨害し、そ の多くは服役した。

当時28歳だったリーソン氏が1995年2月に英投資銀ベアリングズのシン ガポール支店から姿を消したときには、たった1人のトレーダーが233年の歴 史を持つ英最古の投資銀行を破たんさせたという事実がセンセーションを巻き 起こした。リーソン氏が服役中の3年半に物した著書「ローグトレーダー(邦 題:私がベアリングズ銀行をつぶした)」は映画にもなった。

以来、住友商事や大和銀行、アライド・アイリッシュ銀行が未承認取引で やけどを負い、数十億ドルを失った。あまりに頻発するので、今はアイルラン ドに住むリーソン氏に、最新の不祥事について分析を求める電話を取捨選択す るためにエージェントを雇っているほどだ。

日常茶飯

AFP通信によると、同氏はソシエテの事件について有料で2件のインタ ビューに答える予定だ。同氏は既にBBC放送のインタビューに応じ、「不正 トレーディングは恐らく金融市場で日常茶飯事だと思う」と語ったという。

ソシエテの発表によると、カービエル氏は欧州の株価指数に連動した先物 で、許可された上限を超えたポジションを密かに組んでいた。

カービエル氏についてまだ、あまり多くは知られていない。リヨンの経営 大学院には2000年の卒業者の中に同氏の名前がある。ソシエテの従業員名簿に 載っている写真は黒っぽい髪でまじめそうな表情だ。ソシエテの外部広報担当 者イブ・メサロビッチ氏は「物静かであまり人付き合いをしなかった」と話す。 トレーダーになるのはカービエル氏の夢だったという。

ノワイエ仏中銀総裁は記者会見で、容疑のトレーダーは逃走したと語った。 カービエル氏の弁護士は、同氏が解雇されたため出勤はしていないが当局の取 り調べには応じると述べた。

ソシエテによると、カービエル氏は2007年初めごろから始めた不正取引で、 個人的に利益を得たわけではない。2000年から勤めるソシエテでの年俸は10 万ユーロ未満だった。

トレーダー気質

ワシントンのブルッキングズ研究所の客員研究員マーティン・マイヤー氏 は、業務の性質から、トレーダーという職業には競争心が強くリスクに積極的 な人間が集まる傾向にあると指摘した。

大和銀行でニューヨークの国債トレーディング責任者として11年間未承認 取引を続け11億ドルの損失を出した井口俊英氏は、服役中の1997年に米誌タ イムとのインタビューで、「銀行から金を盗むつもりはなかった」と語った。 1995年に発覚した大和銀行の事件の翌年、今度は住友商事が主任銅トレーダー の浜中泰男氏の未承認取引による26億ドル損失を公表した。市場で「ミスター 銅」として知られた同氏は禁固8年の判決を受け、1998年から05年まで服役し た。

アライド・アイリッシュ銀行の米在勤トレーダーだったジョン・ラスナッ ク氏は、取引を5年以上隠し続け6億9100万ドルの損失を積み上げた。同行は 2002年にこの損失を発見し、同氏は現在7年半の刑期で服役中だ。

リーソン氏は5年前にアイルランドのギャルウェイに移住し、サッカーク ラブの経営者になった。収入を補うため、夕食会や会議で講演したり、新聞に 論評を書いたりしている。24日付けの論評では、米サブプライム(信用力の低 い個人向け)住宅ローン危機を契機とした金融市場混乱はさらに拡大すると予 想していた。

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