【米経済コラム】「グリーンスパン・プット」よ、永遠に-C・ボーム

米連邦公開市場委員会(FOMC)は22日 朝、2日間にわたるアジアと欧州株の大幅な下落の後、政策金利を0.75ポイン ト引き下げ3.5%とすると発表した。奇襲効果を持った大胆な措置だった。

21日の米金融・資本市場は祝日のため休場だったが、電子取引でダウ工業 株平均先物が500ポイント以上下落したため、金融当局は休場明けの展開を予 期することができていた。

わたしはもちろん、世界的な株価下落とFOMCの積極的な措置の関係を 示唆するつもりは毛頭ない。だが、FOMCが定例会合の1週間前に緊急利下 げを行った理由が株式相場の下落でないとすれば、ほかにどんな理由があった というのだろう。

22日の利下げ幅は、FOMCが1980年代にフェデラルファンド(FF)金 利を誘導目標に採用して以降最大。定例会合までの日数も最短だった(ISI グループのトム・ギャラガー、アンディ・ラペリエール両氏による)。

FOMCは声明で、利下げ理由を「景気見通しの悪化と成長下振れリスク の拡大」と説明した(解釈すれば「われわれは見通しを修正した。景気下降の 可能性が高まっている」ということだろう)。連邦準備制度理事会(FRB)の エコノミストは、景気低迷に陥る可能性が高まったことに気付いたのかもしれ ない。金融市場や現在の出来事が賭けの対象のオンラインサイト「Intrade.com」 で取引されている銘柄「U.S. Recession '08」(米国が今年リセッション入りす ると10ドルが支払われる)の価格も、22日には7.75ドルと、過去最高値を付 けた。

新たな悪材料なし

FOMCは声明でまた「短期金融市場で見られた圧迫は幾分か和らいだ」 とした上で「より広範囲の金融市場では、状況の悪化が続いた」と指摘した。 世界の株式市場は、間違いなく「広範囲」な市場の一部と言えるだろう。

声明はさらに「住宅市場収縮の深刻化と労働市場の軟化」にも言及した。

なぜ今まで待ったのだろう。0.3ポイント上昇し5%となった昨年12月の 失業率が発表されたのは今月4日。一方で週間失業保険新規申請件数は過去3 週間で35万7000件から30万1000件へと大幅に減少した。緊急利下げにつな がるような雇用面での新たな悪材料は出ていなかったのだ。

住宅セクターはどうだろう。過去2年間続いている住宅投資の減少に歯止 めがかかるめどは付いていない。先週発表された12月の住宅着工件数が前月比

14.2%減少し、17年ぶりの低水準になったことも、表面上はゾッとさせられる が、過剰在庫の圧縮に向けた適切な一歩と受け止めることもできる。

不作為の罪

FOMCは最後に「目に見える下振れリスクが残っている」と指摘した上 で、「こうしたリスクに対処するために必要とあれば時宜を得た行動をとる意向 だ」と、声明を結んだ。

当局は大きく後手に回ってしまった。今回は、利下げのタイミングが遅れ た失点をその幅で補おうとしたのだ。エコノミストやトレーダーの予想が反映 されるFF金利先物を基にすると、FOMCは今月29、30日に開催する次回の 定例会合で0.5ポイントの利下げを実施する可能性が高い。

ISIのエコノミストは顧客向けリポートで、FOMCが声明で「下落す る金融市場」に言及しなかったのは、明らかに「不誠実」だったと指摘した。

当局は恐らく、消費者運動グループの批判を浴びたくなかったのだろう。 米国では、住宅を所有する家計(全体の68.2%、昨年7-9月期実績)の方が、 株式を所有する家計(同50%、ICI集計)より多い。

住宅所有者の救済

しかし昨年の時点で当局は、住宅市場の救済が急務だとは感じていなかっ た。利下げが実施されていれば、CDO(債務担保証券)市場に波及したサブ プライムローン(信用力の低い個人向けの住宅融資)のデフォルト(債務不履 行)懸念の緩和につながっていたかもしれない。金融機関の融資焦げ付きと資 産評価損は計1330億ドル(約14兆1800億円)に上っている。

アジア株の2日間にわたる大幅な下落を受け、モラルハザード(倫理の欠 如)の拡散や、不用意なリスク許容度の高まりを批判する声は消えてしまった ようだ。週明け21、22日の2日間で、香港ハンセン指数は13.7%安。日経平均 株価は9.3%安と、2日間としては17年ぶりの大幅安。インドのセンセックス 指数は12%安。中国CSI300指数も12.2%安と、2日間としては過去最大の 下げを記録した。

米国では、米S&P500種株価指数が過去最悪の年明けを迎えている。米国 外の株式相場が今週大幅に下落したことで、「デカップリング(分離)」(米国以 外の国の経済動向は米国と一線を画すという考え方)は、「コンテインメント(封 じ込め)」(サブプライム問題は局地的なものだという考え方)と同じ運命をた どることになったのかもしれない。

前FRB議長の置き土産

金融当局を監視する立場にある連邦議会は、バーナンキFRB議長が何を したかということよりも、いつしたかということに質問を浴びせることになり そうだ。

JPモルガン・チェースの米国担当シニアエコノミスト、ジム・グラスマン 氏は「短期金利が長期金利を上回っている状態を、緩和的な状態とは呼べない」 と指摘。「市場が無理を強いられるまで当局が行動しなかったのは不幸なこと だ」と語った。

いずれにしろ、グリーンスパンFRB議長の退任後も、相場下落時にはF RB議長が必ず助けてくれるという「グリーンスパン・プット」は残った。結 局、最も長く残る置き土産になるのかもしれない。 (キャロリン・ボーム)

(キャロリン・ボーム氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストで す。このコラムの内容は、同氏自身の見解です)

-- Editor: William Ahearn, James Greiff

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