福田首相:消費者行政一元化で新組織、6月末までに-施政方針(4)

福田康夫首相は18日午後、衆院両院の本会 議で施政方針演説を行い、これまで複数の省庁が対応してきた消費者行政を統一 的に所管する「強い権限を持つ新組織」を創設し、新たに「消費者行政担当相」 のポストを設ける方針を表明した。相次ぐ食品表示偽装問題などを踏まえ省庁別 の縦割り対応を一元化するのが狙い。

首相は同日夜、官邸で記者団に、新組織の創設時期について「この上半期ぐ らいかかるのではないか」と述べ、6月末までの創設を目指す考えを示した。組 織形態は内閣府の外局の委員会と庁のどちらを念頭に置いているのか、との質問 に「問題があればしっかりと関係官庁に言えるような立場でなければならない」 と述べるにとどめた。

首相は衆参両院本会議での演説で、地方活性化対策として、新たに「観光 庁」を設置し、海外からの観光客を呼び込んでいくための取り組みを強化してい く方針も打ち出した。参院選で野党が過半数を占める「ねじれ国会」の状況下、 国内報道機関の世論調査で内閣支持率が40%前後と振るわない中で、福田政権は、 次期衆院選の勝利に向けて有権者の支持を拡大する必要がある。

慶応大学大学院の曽根泰教政策・メディア研究科教授(政治学)は「福田首 相も民主党も国民生活が第一、生活者優先と共通している」と指摘。その上で 「ただ生活第一ということで、グローバルな問題や経済問題など日本が直面する 問題を避けることに使われる懸念がある」と分析した。

第169通常国会は18日召集された。会期は6月15日までの150日間。首相 は施政方針演説の序盤で、自らの政権の使命は「国民の活力を引き出し、活力あ る国民が活躍する舞台を用意することだ」と強調。「行政は常に国民の立場に立 って、国民が何を求めているのかということを、念頭に置かねばならない」と訴 えた。

その上で、「5つの基本方針」を提唱し、その第1に生活者・消費者が主役 となる「国民本位の行財政への転換」を打ち出した。そして「社会保障制度の確 立」、「活力ある経済社会の構築」、「平和協力国家の実現」、「地球温暖化対 策と経済成長を同時に実現する低炭素社会」との順で推進するテーマを掲げた。

サブプライム・原油高など目配り必要

首相は景気の現状について「ガソリンや生活用品などの物価上昇、米国のサ ブプライム(信用力の低い個人向け住宅)ローン問題の影響を受けた経済への対 応など、足元にも目配りの必要な課題がある」と言及。原油高や株価の低迷に対 しては、「景気への影響を注意深く見守りながら、適切に対応する」との考えを 重ねて示した。

財政運営では、11年度に国・地方の基礎的財政収支(プライマリーバラン ス)を黒字化するとの政府の財政健全化目標を確実に達成する決意も強調したが、 デフレ脱却や3月19日に任期切れとなる日本銀行の正副総裁人事、金融政策につ いては言及しなかった。

持続的な経済成長が不可欠

首相はその上で、経済政策の方向性について、「高齢化が本格化する中にあ って、経済活力を維持するとともに、社会保障制度や少子化対策を充実するため には、持続的な経済成長が不可欠」だと指摘。高度な技術力を維持していくため の研究拠点を整備するなど「革新的技術創造戦略」を展開していくことや、日本 の金融・資本市場の国際競争力を高め、「世界の中で中核的な金融センターとな ることを目指す」と言明した。

また労働分配率を向上させるため、正規・非正規雇用の格差是正、労働者 派遣制度の見直しに取り組む考えを示した。

道路財源の暫定税率維持必要

首相は、通常国会で審議される国民生活に直結する08年度予算案や他の重要 法案の取り扱いに関しては「与野党が信頼関係の上に立ってよく話し合い、結論 を出し、国政を動かしていくことこそ、国民に対する政治の責任である」と述べ、 野党と積極的に協議していく意向をあらためて強調。その上で、「野党のご意見 も積極的に取り入れながら、責任ある政治を遂行することに、引き続き全力を尽 くす」と述べ、野党側に協力を求めた。

民主党が廃止を主張していることから、通常国会前半の最大の焦点となって いる揮発油税など道路特定財源の暫定税率については「道路の維持・補修や、都 市部の渋滞対策など国民生活に欠かすことのできない対策は実施しなければなら ない」と主張。さらに、「地球温暖化問題への対応を行うためにも、現行の税率 を維持する必要がある」と訴えた。

「あらためて深くおわび」-年金記録漏れ

年金記録漏れ問題への対応については、「国民の皆さまにご迷惑をおかけし ていることを、あらためて深くおわび申し上げる。わたしの内閣で解決するよう、 全力を尽くす」と述べた。

首相は消費者行政のための新組織の内容に関して、「国民の意見や苦情の窓 口となり、政策に直結させ、消費者を主役とする政府の舵取り役になるものだ。 すでに検討を開始しており、なるべく早期に具体像を固める」と語った。

社会保障や少子化対策の財源に関しては、「あらゆる世代が広く公平に分か ち合う観点から、消費税を含む税体系の抜本的改革について早期に実現を図る必 要がある」と言明。将来のあるべき姿や政府の役割、負担の仕方などについて1 月中に設置する「社会保障国民会議」で議論していく考えを示した。

洞爺湖サミット主導-「ポスト京都」

日本が議長国を務める7月の主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)に関 しては、「わが国の環境問題への取り組みを世界に発信する大きなチャンス」と 指摘。安倍晋三前首相が提唱した50年までに世界の温室効果ガスの排出量を半減 させる長期目標を実現するため、「すべての主要排出国が参加する実効性のある 新たな枠組み作りを主導」すると力説した。

環境問題に熱心な途上国への支援や気候変動を原因とする環境被害への対策 を実施するための「資金メカニズム」の構築もあらためて訴えたが、資金援助 の具体的な規模には触れなかった。

「低炭素社会」への転換を

地球環境問題では、世界の先例となる「低炭素社会」への転換を進めていく 意向を強調。地球温暖化防止のための京都議定書で日本に課せられた温室効果ガ スの削減目標(1990年比で6%削減)を確実に達成していく必要性も訴えた。

さらに、中長期的な目標として「温室効果ガスの排出を究極的にゼロとする ような革新的な技術開発を行わなければならない」として、「環境エネルギー技 術革新計画」を策定する考えも示した。

外交政策に関しては、日米同盟と国際協調を基本に、世界の平和と発展に貢 献する「平和協力国家日本」としての国際的な役割を果たすため、自衛隊を随時 海外に派遣するための「一般法」(恒久法)の検討を進めていく方針を重ねて強 調した。

中国に対しては、「省エネ・環境協力などを通じ、戦略的互恵関係を深め、 アジアと世界の安定と発展に貢献する関係を築く」と指摘。北朝鮮政策について は、6カ国協議などの場を通じて核の放棄を求めていくとともに、すべての拉致 被害者の一刻も早い帰国を実現し、不幸な過去の清算と国交正常化を図るため、 最大限努力していくとした。

--共同取材:坂巻幸子 Editor: Keiichi Yamamura, Kazu Hirano

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