【米経済コラム】米金融当局の市場との対話で新戦略失敗-J・ベリー

米連邦準備制度は2カ月半前に、コミュニ ケーション戦略を刷新した。しかし、戦略は最初から失敗した。

バーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長の10日の講演がいつにな く単刀直入で、今月の大幅利下げを約束したも同然だったのはこのためだ。議 長は講演で、金融政策の方向を明確にしようとしたのだった。

バーナンキ議長は最新の経済指標についての米連邦公開市場委員会(FO MC)の判断に基づき、「成長を支え、下振れリスクに対する十分な保険を提 供するため、必要に応じて実効ある追加措置を取る用意がある」と述べた。米 景気見通しは悪化したとして、「成長へのリスクが一段と明確になった」との 認識を示した。

米国のリセッション(景気後退)が取りざたされるなかで、議長のこの発 言は1月末のFOMCでの0.5ポイント利下げを意味している。だからと言っ て、FOMCメンバーがリセッションを予想しているということではない。

2007年10-12月(第4四半期)について、恐らく年1.5-2%のプラス成 長だったと確信できるだけの十分なデータが既に出ている。ドイチェ・バンク・ セキュリティーズを含む数社は08年1-3月(第1四半期)も同等または若干 これを下回るプラス成長となると予想している。

バーナンキ議長が強調したように、既に過去4カ月で1ポイント引き下げ た後の追加利下げは保険だ。

明確な方針

バーナンキ議長がこれほど明確に方針を公言するのは就任以来2年で初め てだ。議長も他のFOMCメンバーも、新たなコミュニケーション戦略の下で このような公約を行う考えはなかった。

この戦略は07年10月30、31日のFOMCで策定され、議長が同年11月 14日の講演で明らかにした。FRB理事と12の地区連銀総裁の向こう3年の景 気予測を、詳細な説明付きで年4回示すという内容だった。FOMCは同月20 日に、10月の議事録とともにこのような予測を初めて発表した。

予測について十分な情報を提供することで、一般市民、なかでも金融市場 に、向こう1年前後の景気の方向に関する当局者の考えを理解させることが新 戦略の目的だった。また、長期の予測からはインフレと成長に関する当局者の 目標をうかがい知ることもできる。

最悪のタイミング

そのような情報を与えれば、市民は金融政策の方向について正確に判断で きるというのが、当局の考えだった。しかし、この戦略を導入したタイミング は最悪だった。

10月のFOMC議事録が公表されようとしていたちょうどその時期に、米 サブプライム(信用力の低い個人向け)住宅ローン問題を発端とした8月の動 揺から回復していた金融市場で、再び状況が悪化した。11月の講演で当局者の 多くは、インフレ高進と成長減速のリスクはほぼ均衡しているとの10月のFO MC声明の認識を繰り返した。10月の0.25ポイント利下げ後、次の利下げを急 ぐ考えはなかったことがうかがわれる。

バーナンキ議長とFRB理事は一部の連銀総裁よりも早く、金融市場の悪 化が重大な意味を持つことに気付いた。コーンFRB副議長は11月28日の講 演で、懸念の再燃を示唆し、バーナンキ議長も翌日の講演で同様の見解を示し た。「金融市場の動揺の再燃」によって、景気が従来予想通りには展開しない 危険性があることを強調した。

新しいコミュニケーション戦略によって、このような直接的なシグナルを 送る必要はなくなったはずだった。しかし、バーナンキ議長の先週の講演も、 同種の直接的なメッセージだった。そして、景気見通しが安定しない限り、議 長とコーン副議長は引き続き、このような形で政策の方向を示唆し続けるだろ う。議長は17日に、下院予算委員会で証言する。

リスク判断

さて、FOMCはコミュニケーションに関してもう1つの問題に取り組む 必要がある。声明にリスクバランスの判断を盛り込み続けるかどうかだ。12月 11日のFOMC声明は金融市場の悪化で「成長とインフレの先行きをめぐる不 透明感が増した」とだけ述べていた。今年1月2日に公表されたFOMC議事 録は、メンバーがインフレよりも成長の方にはるかに大きな懸念を抱いていた ことを示した。

リスク判断の問題の1つは、アナリストやトレーダーがこれを次回FOM Cでの金融政策の方向を約束したにほぼ等しいと受け取る傾向にあることだ。 いずれかのリスクが大きいとしなければ、次回FOMCでの金利変更がしにく くなってしまう。このような解釈はもちろん正しくない。FOMCメンバーの 一部は、リスク判断を公表しない方が良いと主張している。

伝統的に、FOMCメンバーは景気や政策について、FRB議長から指導 や拘束を受けることなく自分自身の見解を示すことができる。11月のようなず れが生じたからといってこれが変わることはないが、ときには先週のように、 議長が先陣を切って見解を示すことも必要だ。 (ジョン・ベリー)

(ジョン・ベリー氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。 このコラムの内容は同氏自身の見解です)

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE