武藤日銀副総裁:国内景気の標準シナリオにはリスクある-会見(3)

日本銀行の武藤敏郎副総裁は10日午後、札 幌市で会見し、世界経済について「米国経済、あるいは国際金融市場の不安定 な状態から来る不確実性が下振れリスクを高めている」と指摘。日本経済につ いても「将来、緩やかな拡大を続けるという判断を申し上げたが、それは標準 的な見方、あくまでもメインシナリオという意味で申し上げているわけで、そ れにはリスクがあることは念頭に置いておかなければならない」と語った。

武藤副総裁は一方で、「メインシナリオというものに対して、私は根本的に 変更を加えているものではない。従って、もしそうであるとするならば、われ われの金融政策の基本的考え方というものに対し、今までと基本的に変えると いうことは考えていない」と述べた。

武藤副総裁は午前中の講演で「わが国経済は足元、住宅投資の落ち込みな どから減速しており、先行きは当面減速が続く」と指摘。「現在、生産・所得・ 支出の好循環のメカニズムは一時的に弱まっている」と述べた。みずほ証券の 上野泰也チーフエコノミストは「武藤副総裁は講演で、日銀が景気のダウンサ イドリスクへの警戒を一層強めているというメッセージを発信した」としてい る。

GDPをかなり押し下げる

武藤副総裁は国内の景気について「改正建築基準法の施行以降、住宅着工 が大幅に減少しており、07年度の実質GDP(国内総生産)の伸び率をかなり の程度押し下げるのではないか」と指摘。その上で「生産・所得・支出の好循 環メカニズムは一時的に弱まっている」と述べた。

武藤副総裁は住宅着工の落ち込みについて「行政手続きの問題」と指摘。「そ ういう手続き面での問題が解消していけば、徐々に住宅投資も回復していくと 考えている」としながらも、「首都圏が中心だが、物件価格の上昇などからマン ション販売に弱さがみられており、住宅投資の回復のペースや水準については 不確実な面があると言わざるを得ない」と語った。

武藤副総裁は「生産・所得・支出の好循環のメカニズムが一時的に弱まっ ている」ものの、「このメカニズムが途切れてしまっているのかと言うと、決し てそういうことではなく、基本的にこのメカニズムは維持されていると判断し ている」と述べた。

その理由としては「わが国の輸出、生産は増加を続けているという点で、 好循環メカニズムの起点はしっかりしている」と指摘。「企業部門全体として見 れば、設備、人員、在庫といった面で調整圧力を抱えている状況にはない。設 備投資や個人消費も増加基調を維持している。住宅投資の急減は主として手続 き的な問題なので、次第に回復するだろう。そうだとすれば、生産・所得・支 出の好循環のメカニズムは基本的に維持されていくだろう」と語った。

インフレリスクは差し迫っていない

生鮮食品を除く消費者物価指数(コアCPI)前年比上昇率については「当 面、原油価格が高止まりを続けるとすると、さらに上昇幅を拡大していくとみ ている」と指摘。「CPIの上昇の主な要因は、石油関連製品の物価の上昇によ るところが大きい」と述べた。

武藤副総裁はまた、世界経済の下振れリスクについて「これはまさに、当 面の短期的なリスクだ」と指摘。一方で、国内のインフレリスクについては「低 金利があまりに長く実体経済とかけ離れた水準で続くなら、さまざまなミスア ロケーション(不適切な資源配分)が起こると言っているが、これは今差し迫 って起こっているのではなく、中長期的に見たリスクだ」と語った。

武藤副総裁はそのうえで「中長期的なリスクだから、決して軽視してよい というわけでは決してない」と述べた。

主な一問一答は次の通り。

――住宅投資の先行きについてうかがいたい。

「改正建築基準法の施行以降、住宅着工が大幅に減少しており、07年度の 実質GDPの伸び率をかなりの程度押し下げるのではないか。ただ、これは行 政手続きの問題でもあるわけで、当局において改善策に取り組んでおられると 理解している。そういう手続き面での問題が解消していけば、徐々に住宅投資 も回復していくと考えている」

「ただ、首都圏が中心だが、物件価格の上昇などからマンション販売に弱 さがみられており、住宅投資の回復のペースや水準については、不確実な面が あると言わざるを得ない」

――日銀は持続成長のシナリオを見直す可能性はあるのか。また、徐々に金利を 引き上げる金融政策を白紙に戻し、利下げを含めて検討する可能性はあるのか。

「1つは改正建築基準法の施行に伴って、住宅投資が大幅に減少している こと。あるいは原材料価格の高騰に伴って企業収益に伸び悩みがあるほか、サ ブプライム問題によって企業の業況感は慎重化している。これは12月短観でも 観察された。そういうことで生産・所得・支出の好循環のメカニズムが一時的 に弱まっていると(講演で)申し上げた」

「ただ、このメカニズムが途切れてしまっているのかと言うと、決してそ ういうことではなく、基本的にこのメカニズムは維持されていると判断してい る。今回の景気拡大局面は、第一に世界経済が拡大していること、第二に国内 では企業や金融機関の設備投資、雇用、債務の過剰の調整が進んだことを背景 としている。わが国の輸出、生産は増加を続けているという点で、好循環メカ ニズムの起点はしっかりしているだろうとみている」

「企業の業種や企業規模によって違いがある面はあるが、企業部門全体と して見れば、設備、人員、在庫といった面で調整圧力を抱えている状況にはな い。設備投資や個人消費も増加基調を維持している。住宅投資の急減は主とし て手続き的な問題なので、次第に回復するだろう。そうだとすれば、生産・所 得・支出の好循環のメカニズムは基本的に維持されていくだろう」

「ただ、われわれは基本的に、わが国経済は当面、減速しているが、将来、 緩やかな拡大を続けるという判断を申し上げたが、それは標準的な見方、あく までもメインシナリオという意味で申し上げているわけで、見通しであるので、 それにはリスクがあることは念頭に置いておかなければならない」

「世界経済はいろいろな意味でダウンサイドのリスクがある。米国経済、 あるいは国際金融市場の不安定な状態といったことから来る不確実性が、下振 れリスクを高めていると申し上げた。そういうリスクは申し上げたが、そのメ インシナリオというものに対して、私は根本的に変更を加えているものではな い。したがって、もしそうであるとするならば、われわれの金融政策の基本的 考え方というものに対し、今までと基本的に変えるということは考えていない」

「今後の経済、金融情勢を十分分析して、仮に私どもが見方を申し述べて いる通りの緩やかな拡大を続けていくのであれば、その度合いに応じて、今、 非常に緩和的な状態にある金利水準を徐々に調整していく方向にあると申し上 げている。もちろん、そういう状況の下で具体的にどういうふうに考えていく のか、これから中間評価などで展望リポートの考え方を変えるのか、そういう 具体的なことは1月の決定会合で委員の中で議論して考え方を示していく」

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