【米経済コラム】今必要なのはリスキーな刺激策ではない-J・ベリー

最近にわかに、減税や政府支出拡大といった 景気刺激策が取りざたされている。だが、こうした刺激策は「お蔵入り」させる べきだろう。

米労働省が4日発表した12月の雇用統計は、非農業部門が1万8000人増に 急減速した。失業率も5.0%と、前月の4.7%から上昇。これが景気刺激策論に 火を付けることとなった。

刺激策の中身については意見が分かれているにもかかわらず、大統領選挙の 年ということで、共和党や民主党の大統領候補や議員の多くは刺激策の支持に回 っている。

こうした政治家らの理論的根拠となり得るのは、ハーバード大教授のサマー ズ元財務長官ら少数の高名なエコノミストの主張だ。

サマーズ氏は今月初め、英紙フィナンシャル・タイムズに寄稿し、大統領と 議会が一連の財政刺激策を策定することが必要不可欠な状況になっているとした 上で、「深刻なリセッション(景気後退)が米国民を直撃し、金融市場を悪化さ せ、保護主義の台頭を招き、世界経済に悪影響を及ぼすようなときには、短期的 な経済成長を促すのに最も速く、かつ確実な手段である財政刺激策が保険として 適当だ」と説明。減税策導入を主張した。

リセッション入りはない

現実的に見て、サマーズ氏が主張する500億-750億ドルの経済政策には説 得力が欠けている。

サマーズ氏が予想しているような負のスパイラル入りを見込んでいる人はほ とんどいない。モルガン・スタンレーのエコノミスト、リチャード・バーナー氏 などはリセッションを予想しているものの、景気後退は緩やかで1-6月(上 期)のみの短期的なものにとどまるとみている。

さらに、米金融当局やブッシュ政権などのエコノミストらは、成長の鈍化は あるもののリセッション入りはないと予想している。また現在4.25%の米フェ デラルファンド(FF)金利の誘導目標には追加引き下げの余地が十分ある。

現在の景気減速の主因は住宅市場の冷え込みであり、住宅市場が自然に回復 するのを待つしか手はない。財政刺激策を導入しても、住宅市場の好転が早まる わけではない。

タイミングの問題

サマーズ氏は、提唱する刺激策にいくつかの難しい条件を付けた。「タイム リー」で「対象を絞り」、「一時的なもの」にするべきだというのだ。同氏は、 「意味ある対策にするためには、年央までに法制化し、直ちに実施可能な税や給 付金の改定に基づくものでなければならない」と述べた。

サマーズ氏の説く導入のタイミングは、米経済が上期の低迷から回復に向か うと多くのエコノミストらがみている時期であり、これまでの大半の財政刺激策 と同様に、後手に回って意味がないものになる恐れがある。

真のリスク

だが真のリスクは、今回の財政刺激策が一時的なものにとどまらない可能性 があることだ。ブッシュ大統領は7日、同政権下で実現した減税の恒久化を議会 に求めた。これを受け共和党議員らが、こうした恒久化の条項を財政刺激策の法 案に加える公算が大きいし、新たな減税法案が成立する可能性もある。

サマーズ氏も認めているように、長期化している財政赤字への影響も問題だ。 ベビーブーマー世代が定年を迎えている今、財政赤字こそ大統領候補が取り上げ るべき問題だ。

山積する問題

多額の予算を要する別の問題も山積している。保険未加入者の救済問題、地 球温暖化、石油の安定供給、国防費とテロの脅威、社会保障とメディケア(高齢 者向け医療保険制度)の問題などだ。

税制改革は他の予算の必要性との関係で決まるものだが、いざ予算削減とな ると共和・民主両党とも簡単には首を縦に振らないものだ。

サマーズ氏が心配するように、米経済が負のスパイラルに入った場合は財政 刺激策の実施が正しいのかもしれない。だがそうならない限り、予算の規律に注 力し、来るべき予算と税の論議に向けた準備を開始した方が良さそうだ。一連の 大型減税は10年と11年に失効するのだから。 (ジョン・ベリー)

(ジョン・ベリー氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。 このコラムの内容は同氏自身の見解です)

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE