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飛行船による都心上空クルーズが意外な人気-団塊世代などが熱い視線

大型飛行船による東京都心上空の遊覧飛行 が人気を集めている。1時間半で10万円以上と高額だが、団塊の世代などが 関心を示しているようで、期間限定ツアーは短期完売。2008年春に関西周遊の 第2弾企画もあり、コースによってはすでに売り切れ、増便が計画されている。 旅行会社は新たなツアー企画にも着手。大口出資者の日本郵船が途中で脱落す るハプニングもあったが、事業者は反応の良さに意気軒昂(いきけんこう)だ。

飛行船ツアーはJTBグループの近畿地区法人、JTB西日本(本社・大 阪市)が、飛行船を所有・運航する日本飛行船(本社・埼玉県桶川市)ととも に企画。07年11月23日から08年1月5日までのうち27日間の期間限定で、 週末を中心に昼夜計109便の遊覧飛行として募集を始めた。飛行船係留地の桶 川をスタート、池袋、浅草、汐留、六本木、渋谷、新宿を周遊して桶川に戻る。 所要1時間半の値段は、曜日や時間帯で多少異なるが、12万6000円から16万 8000円とかなり高額だ。

6割が60歳以上の年配客

それにもかかわらず、販売開始の10月25日からJTBに申し込みの電話 が相次いだ。1便当たり座席数は8席と少ないが、目標座席数800の8割を3 日間で販売。残り2割は天候不良時の振り替え用として確保しておくため、3 日間で事実上の完売だったという。飛行船の周遊ツアーはJTBにとっても初 の企画。JTBでは「企画段階では、募集開始からツアー開始までの1カ月間 かけて、ようやく完売できる程度だと考えていた」(高崎邦子JTB西日本広 報室長)が、意外な反響に驚いている。

JTBによると、東京クルーズでは約6割が60歳以上の年配客。金婚式 の記念や、子供が両親にプレゼントするケースなどがあるという。JTBでは 当初、イルミネーションを眺められる夜間の飛行に人気が集中すると予想して いた。しかし飛行機よりも低空で飛行し、地上が肉眼ではっきり分かるため、 昼間の飛行に人気が集まった。「自宅を上空から確認したい」という旅客もい るという。

日本飛行船のウェブページによると、使用する飛行船は世界最大の「ツェ ッペリンNT(ニューテクノロジー)」で、世界に3台しかない。全長75メ ートルでジャンボジェットよりも若干長いという巨大さ。不燃性ヘリウムガス で浮き、胴体横のプロペラで飛ぶ。乗客が乗るゴンドラは小さく、1回の飛行 の搭乗座席数は、わずか8席。時速60-70キロメートルの低速で、高度規制 の下限である上空300メートルの超低空で静かに周遊することも可能だ。

ドイツでも大人気

残り2台のツェッペリンNTのうち1台は産業用途だが、もう1台はドイ ツ、オーストリア、スイス国境地帯の観光地、ボーデン湖上空の周遊観光に利 用されている。そこでは日本以上の人気で、JTBによると、企業の報奨制度 などにも利用され、予約は1年半待ちの状態。高崎室長は「その状況をみて、 日本でも始めようと思った」という。

JTBでは飛行船クルーズの人気について、団塊世代の大量退職が影響し ていると分析している。ただ、「この世代は旅行業界の成長を支えてきた世代 でもあり、旅への目利きが厳しく、ただ高いだけのツアーには手を出さない」 (高崎室長)という。身近な町の上空をゆっくりと遊覧することが可能で、飛 行機やヘリコプターと一味違い、飛行船ならではの空の新しい楽しみ方が加わ って今回のような反響を呼んだ、とJTBではみている。

日本郵船は途中で見切り

日本飛行船は02年、愛・地球博(愛知万博)のため愛知県の地元企業な どが設立した会社。その後、船に代わる輸送手段を模索する日本郵船が目をつ けて買収。飛行船を使った広告ビジネスから始め、旅客や貨物輸送に発展させ る計画を進めてきた。JTBも広告事業のころから事業に参加してきたが、広 告ビジネスは赤字続き。日本郵船は今年4月に撤退を決断。日本飛行船の所有 株58.8%を現在の親会社である内航海運会社の杤木(とちき)汽船(本社・東 京)に売却してしまった。

しかし、JTBと日本飛行船には事業継続の強い意志があり、日本飛行船 は6月に旅客を乗せて航空運送事業ができる許可を国から取得。晴れて「飛行 船遊覧クルーズ」が可能になった。とはいえ、どの程度の反響があるのかは未 知数だった。日本郵船が見切りをつけた事業に予想以上の反響があり、残った 2社は溜飲を下げた格好だ。

関西では増便の手当ても

JTBと日本飛行船は、東京と別に関西でもクルーズを企画。08年3月 20日から5月7日の19日間、奈良・吉野の千本桜や飛鳥を回るコース(2時 間15分で18万円)や、神戸、大阪ベイエリア(1時間半で13万5000円か ら)を周遊するコースなど複数のコース49便を用意して12月12日から募集 を始めたが、こちらも売れ行きは絶好調。

東京での反響を受けて目標販売座席数を当初の200席から400席に倍増さ せて売り出したが、初日に目標408席の半分を販売。吉野とベイエリアのコー スは即日完売となってしまったため、急きょ各6便を追加し、全体で14便の 増便を決めたほどだ。

JTBは今回の企画で周遊クルーズの潜在的なニーズに確信を持ったよう で、新たに別の飛行船周遊ツアーを企画する準備に入った。問題は係留地や高 いツアーの価格だ。飛行船は巨大で、「縦横200メートル以上のスペースがあ る係留地が必要」(高崎室長)。仮に北海道のラベンダー畑を見下ろすツアー を企画したとしても、ツアー参加者が集合し易い場所に係留地を探さなければ ならない。

また、搭乗人数が少ないため、旅客のコスト負担も大きく、ツアー価格の 引き下げもなかなか進まない見通しだ。「価格は今の水準がギリギリ。今後は 船体に広告を掲載しながら行うツアーも考えているので、そうなれば価格引き 下げの助けになるかもしれない」(高崎室長)というのがJTBの弁だ。

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