福田首相きょう訪中、ガス田開発が焦点-「環境基金」創設提案へ(3)

福田康夫首相は27日、9月の就任後初め て中国を訪問する。胡錦濤国家主席、温家宝首相ら要人と相次いで会談し、「親 中派」ぶりを内外にアピールする。懸案である東シナ海のガス田共同開発問題で 進展が見られるかが焦点になる。北朝鮮や地球温暖化対策などの問題についても 協議する。

福田首相は胡主席との初会談で、中国の環境保全策として「日中環境基金」 の創設を提案する方針。両国が目指す「戦略的互恵関係」の具体化に弾みをつけ る狙いがあるとみられる。首相は27日午後、官邸で記者団に、「環境をいかに して改善するかというために、日中環境基金というものが役に立つかどうかだ」 と語った。

日本の首相による中国訪問は2006年10月の安倍晋三氏以来、1年2カ月ぶ り。福田首相の父・赳夫元首相は首相在任中の1978年に日中平和友好条約を締 結。首相自身も、小泉純一郎内閣の官房長官だった2003年8月にも訪中するな ど政治家として中国とは良好な関係を築いてきた。

政治評論家の浅川博忠氏は今回の首相訪中の狙いについて「福田首相は日本 の政界で親中派の旗頭として存在感があった人だ。年内に訪中して対中国、日本 国内に向けても親中派として自分の存在を内外にアピールしたいのではないか」 と分析。中国近現代史が専門の姫田光義・中央大学教授は「小泉元首相や安倍前 首相とは違う考えを持っている人だと思う」と首相の外交姿勢に期待感を示す。

福田首相は28日に北京で温首相、胡主席と会談するほか、北京大学で日中 関係について講演。翌29日は天津に移動し、トヨタ自動車の工場などを視察。 30日には、孔子の故郷とされる曲阜を訪れた後、同日中に帰国する。中国側は 28日に国家元首である胡主席が夕食会を主催し、福田首相を最大限歓待する。 安倍首相訪中時の夕食会主催者は温首相だった。

町村信孝官房長官は27日午前の記者会見で、「福田首相はまず個人的な信 頼関係を築くことが大切だ。その上で日中間の戦略的互恵関係の中身を充実した ものにしていこうことを確認しながら、将来に向けて日中関係がよりよい発展を 遂げるような基盤づくりになればいい」と述べ、「訪中の成功を期待している」 と語った。07年秋までに解決しなかった東シナ海のガス田の日中共同開発に関 しては、「ぎりぎりまでいろいろなレベルでの努力が行われるのが通例だ。どう いう方向になるかは、まだ私には分からない」と述べるにとどめた。

首相は21日夜、今回の訪中の意義について「中国は隣国で経済的にもいろ んな意味でも、ますます大きな立場になってくる。こういう国とよく意見を調整 してお互いに協力できるような関係をつくっていくことが必要だ。そのために首 脳会談をするが、首脳同士、率直に意見交換をしたい」と述べ、関係のさらなる 改善に意欲を示した。首相官邸で記者団に語った。

首脳外交

01年4月から06年9月まで約5年半におよんだ小泉政権では、小泉氏が第 二次世界大戦のA級戦犯を合祀している靖国神社への参拝を続けたこともあり、 日中関係は冷却化。続く安倍前首相は靖国参拝するかどうかを明確にしなかった が、就任直後の06年10月に中国を訪問して関係改善に動いた。

福田首相は、安倍氏の突然の辞任で行われた9月の自民党総裁選への出馬会 見で、日本の首相による靖国参拝について「相手が嫌がることを敢えてする必要 はない。お互いが腹を割って話し合えることができる関係をつくらないといけな い」と否定的な見解を早々と表明。日本政府高官によると、首相は訪中に先立っ て25日に行った新華社など中国メディアとのインタビューでは、日中の協力関 係を「新たな段階」に引き上げたい考えを示した。

しかし、福田内閣は年金記録漏れ問題やC型肝炎の被害者救済をめぐる対応 で批判を受けている。20日付の朝日新聞電子版によると、同紙が19、20日に行 った世論調査で内閣支持率は31%まで下落。政権発足時の9月に記録した53% から大きく落ち込んだ。

その後、首相はC型肝炎の被害者を議員立法によって一律で全員救済するよ う与党に指示するなど人気回復に躍起となっており、今回の訪中も「首相は外交 で頑張っているところを見せて、支持率を上げるための一助にしたいのだろう」 (浅川氏)と政権浮揚につなげたいところだ。

中央大学の姫田教授は「歴代総理の中でも首相には期待している」と福田首 相を支持する学者の1人だが、「今の国内の政治状況を見ると何を言っても空手 形になってしまうのではないかと心配している。正直言えば、選挙の洗礼を受け て勝ってもらって確信をもって行ってもらいたいところだ」と述べ、日中関係の さらなる発展に向け、首相が実際にどこまで指導力を発揮できるか懸念も持って いる。

東シナ海

日中両政府は東シナ海で日中双方が自国の排他的経済水域と主張する海域に 点在する白樺(中国名は春暁)などのガス田共同開発について協議を続けている。

4月に温首相が来日した際、当時の安倍首相と行った会談で両首相は、①東 シナ海を平和・協力・友好の海とすることを堅持②最終的な境界画定までの暫定 的な枠組みとして共同開発を行う③必要に応じハイレベル協議を行う④双方が受 け入れ可能な比較的広い海域で共同開発を行う⑤協議を加速させて07年秋に共 同開発の具体策を首脳に報告-の5点で合意していた。

しかし、町村信孝官房長官は21日の記者会見で、「もともと今年の秋まで にと合意していたので、その合意が達成されなかったという意味では大変残念な 状態にある」と事務レベルの調整が難航していることを認めた。その上で、「引 き続き全力で交渉を行って、できるだけ早く答えを出すべき問題であることは間 違いない」と日中間で一致点を見いだすよう努力していることを強調した。

これに関連し、政治評論家の浅川氏は「今回の訪中をきっかけにして胡錦濤 国家主席の来年4月の訪日を確認し、それを確実なものにすると同時に、ガス田 問題も4月には前進できるような下地をつくれるかどうかだ」と述べ、ガス田共 同開発問題でどのような方向性を打ち出せるかは首相訪中の成果を判断する重要 な要素となるとの見方を示した。

27日付の朝日新聞朝刊は、日中両政府関係者からの情報として、中国側が これまで共同開発の対象と認めてこなかった日中中間線にまたがる地域での新た な複数のガス田の共同開発を日本側に打診した、と報じた。両政府が福田首相訪 中時の胡主席、温首相らとの会談で基本合意を目指して最終的な調整を続けてい るという。

--共同取材:山村敬一,Taku Kato Editor:Tetsuzo Ushiroyama,Hitoshi Sugimoto

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