【米経済コラム】サブプライム損失予想は誇張されている-J・ベリー

米国で貯蓄貸付組合(S&L)危機が深刻 化した1980年代、アナリストらは連邦政府の負担額見通しを次から次へと引き 上げたものだった。同じことが現在、サブプライム(信用力の低い個人向け) 住宅ローン関連の損失予想で繰り広げられており、3000億-4000億ドル(約 34兆-46兆円)といった額がうわさされている。

しかし、より現実に近い数字は恐らく半分以下の1500億ドル程度ではない か。もちろん取るに足りない額ではないが、米経済を沈没させるほどの損失で はなかろう。

1500億ドルの損失なら、約1兆3000億ドル規模とされるサブプライム住 宅ローンの12%以下にすぎない。サブプライムローン自体、全米の住宅ローン 全体の約8分の1だ。

S&L危機時に、米政府監査院(当時は会計検査院)のチャールズ・バウ シャー院長はS&L救済費用が5000億ドルに達するとして、ほかの誰の予想額 をも上回る見通しを示した。もちろんこれには実際の損失の1600億ドルをカバ ーするため借り入れる資金の金利負担分が含まれている。2007年時点のドルに 換算すれば、約2600億ドルだ。

今回の住宅ローン危機では、経済に主要な脅威をもたらしているのは関連 損失それ自体ではない。ローンを証券化した多くの金融機関の資本不足が問題 になっている。これで、実際の損失が3000億-4000億ドルでもあるかのよう に、市場ではこれらの証券の価値が付けられなくなっている。

実際の損失がそれほど大きくない理由は2つある。まず、住宅ローンには 一戸建て住宅もしくは集合住宅といった担保が付いていることだ。差し押さえ られれば、これらの担保は通常、その価値が保持される。売却されれば、ロー ンの貸し手は差し押さえ費用を除いた後、貸し出し額の5割以上を回収できる。

2つ目の理由

2つ目の理由は、サブプライムローンの借り手の多くはデフォルト(債務 不履行)に陥らないということだ。たとえ4人に1人がそうなったとしても、 貸し手はローンの5割以上を回収できる。サブプライムローン1兆3000億ドル の4分の1は3250億ドル。55%回収できれば、損失は約1450億ドルにとど まる。

損失が3000億ドルに膨らむには、サブプライムローンの約半分が差し押さ えられ、それらの売却でローンの55%回収が必要となる。4000億ドルの損失 なら、差し押さえ率は約6割に達しなければならない。

全米抵当貸付銀行協会(MBA)によれば、サブプライムローンのうち、 今年7-9月期に30日以上の延滞が発生したのは全体の16%超で、すべての 住宅ローンのなかで差し押さえに至ったのは1%に満たなかった。これは経済 にとって、特に個人消費にとって、どんな意味をもたらすのだろうか。

ソシエテ・ジェネラル(香港)のアジア担当チーフエコノミスト、グレン・ マグワイヤ氏が今月12日に上海で指摘したように、大したことはない。同氏に よれば、米国で住宅ローンを抱えている家計は全体の半数以下のため、経済へ の影響は限定される。借家が全体の約3分の1で、ローンを抱えていない持ち 家派は4分の1、そしてローンを抱える大半は支払いを滞りなく行っていると いう。

マグワイヤ氏によれば、サブプライムローン全体の約1割が現在差し押さ えに至ったとしても、全米の家計に占める割合は約0.3%にすぎない。そして、 2006年より前の大幅な住宅価格上昇を考えれば、現在の値下がりが個人消費を 大きく抑える公算は小さいだろうという。

実際に大きな影響はこれまでない。商務省の21日の発表によれば、11月 の個人消費支出(PCE)はインフレ調整した実質ベースで前月比0.5%増と、 今年に入って最高だった。一部のアナリストは、10-12月期について年率

2.5%増を見込んでいる。

現在のサブプライム損失見通しとS&L危機時の損失をそれぞれドルの実 質ベースで比較すると、1980年代に起きた後者の方がはるかに大きかったこと が示唆される。双方で似通っているのは、一部の州に問題が集中していること だ。今回も前回も最も問題を抱えているのは不動産投機で長い歴史を持つカリ フォルニア、フロリダ両州だ。差し押さえが集中する地域では貸し手が回収で きる金額も限られるが、そのほかの多くの地域では、回収額はかなり大きくな るだろう。

サブプライムローンを裏付けとした証券の投げ売りをこれまでのところ、 多くの金融機関は回避している。そのうちに、本当の損失額が明らかになるだ ろう。 (ジョン・ベリー)

(ジョン・ベリー氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。 このコラムの内容は同氏自身の見解です)

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