【07年のIPO】騰落率は02年来で最悪、社数大幅減-地方離れ加速

2007年に新規株式公開(IPO)した企 業数は121社と、相場低迷や上場費増大などを受けて昨年比67社減り、03年 以来の低水準に落ち込んだ。地方銘柄を中心に不振が目立ち、公開価格に対す る初値上昇率の平均も50%と、06年の77%から低下して02年来で最悪だった。 06年から新興市場が低迷という長いトンネルに入り、投機資金はリスク回避色 を強めたまま。相場環境が好転しない限り、08年も厳しい年となりそうだ。

「さなぎ」多し

数の減少は「株式相場の低迷に加え、上場審査の厳格化や内部統制費など 上場費用の増大」(水戸証券投資情報部・岩崎利昭課長)が背景。東証マザー ズ指数は1月の年初来高値から9月に半値になった。IPOはサービスや内需 関連企業が多く、経営環境の悪化で業績が下向きとなって上場を見送ったり、 相場低迷で資金調達額が小さくなることを嫌い、時期を遅らせる企業もあった。

顔ぶれを見ると、マネーパートナーズなど為替証拠金取引(FX)関連企 業が登場。環境ソリューションを提案するタケエイなど相場のテーマに沿った 環境関連企業も現れた。チャイナ・ボーチー・エンバイロメンタル・ソリュー ションズ・テクノロジーなど中国企業の上場も相次いだが、全体で見ると資金 調達額が5億円未満の企業が急増するなど「今年のIPOは『さなぎ』が多か った」(住信アセットマネジメントの中谷方彦チーフファンドマネージャー)。

04-06年の大型上場が一巡した結果、平均資金調達額は53億円と前年の 81億円を下回り、小粒の上場が目立った。ただ、「今後2、3年の事業展開次 第で大化けしそうな銘柄が5-10ほどありそうだ」と、中谷氏は期待感も示す。

公開価格割れ相次ぐ、「さすがに驚いた」

投資リターンはさえなかった。特に夏に起こった米サブプライム(信用力 の低い個人向け)住宅ローン問題によって投資環境が悪化。9月の上場銘柄の 初値が全て公募割れとなるなど、後半に失速した。最も初値上昇率が高かった のは不動産管理のアールエイジ。公開株数が少なく、品薄感に着目した買いが 入り、上場3日目に形成した初値は公開価格の4.1倍に急騰した。それでも、 昨年のトップパフォーマーの8.7倍に遠く及ばない。これにユビキタス、ウェ ブマネーと、11月に開設したジャスダック「NEO(ネオ)」銘柄が続いた。

一方、初値が公開価格を下回ったのは29銘柄と全体の24%に達し、06年 の11%から増えた。水戸証の岩崎氏によると「投資家をひきつける会社が見当 たらなかった。数自体が少なく、そもそももうけるチャンスが少なかったうえ、 厳しい相場展開下では情報量が乏しいIPOに対する関心が低かった」そうだ。

下落率1位は、首都圏で注文住宅を手掛ける桧家住宅。名古屋進出に向け て名証2部を上場先に選んだが、売りが優勢で、上場2日目に公開価格を33% 下回る初値を形成。黒須新治郎社長は、「さすがにこの値段を聞いて驚いた」 と戸惑いの表情を浮かべていた。2位は名証セントレックスの中広。3位は資 金調達額が大きかった東証1部のバンテック・グループ・ホールディングス。 札証アンビシャスは上場した5銘柄中3銘柄が10位以内と、不振が際立つ。

上場後の値動きも悲惨だ。27日午前終了時に初値を上回っているのは24 銘柄のみで、38銘柄が初値の半値以下(株式分割考慮後)。初値上昇率1位の アールエイジも、上場2日目に高値を付けた後は底値圏に沈む。下げがきつい のは不動産株。サブプライム問題による信用不安で不動産関連市場から資金が 流出するとの懸念から、不動産全般が敬遠された流れを受けた。総和地所やウ ィル不動産販売、エルクリエイト、コーセーアールイーの下げは70%を超える。

インベスコ投信投資顧問の得能修シニアファンドマネジャーは新興企業全 体に「利益成長率が低下したうえ、業績予想の下方修正や決算発表の遅れ、相 次ぐ不祥事で不信感が強まった」ことを資金離散の理由に挙げる。

地方不振が鮮明、売買成立は月間で2日も

名証2部とセントレックス、福証Qボード、札証アンビシャスに上場した 10銘柄中9銘柄が公募価格を下回る初値を付け、今年も地方銘柄が振るわなか った。三菱UFJ証券エクイティリサーチ部の船山省治シニアアナリストは 「上場して数カ月後の株式流動性を考えると、いつでも購入、売却できるとい う株式投資の重要な魅力が失われており、これが投資家離れをもたらしてい る」と分析する。今年のIPO第1号として札証アンビシャスに上場した光ハ イツ・ヴェラスの場合、12月に売買が成立したのは2日のみだ(26日現在)。

地方上場銘柄は06年ごろから初値天井の様相を呈し、短期売買目的の資 金も流動性を意識して次第に敬遠するようになった。その結果、今年は初値が 公開価格を割り込むケースがさらに増え、投資家がますます離散して流動性が 低下する悪循環に陥っている。「上場後に素晴らしい業績を挙げている企業が 見当たらない」(船山氏)ことも、投資魅力の低下につながっている。

そもそも「東京の会社がなぜ地方に上場するのか」(モーニングスター調 査分析部・藤井知明シニアアナリスト)との疑念がある。地方性を無視した上 場は、上場基準が比較的厳しいジャスダックやマザーズの上場が難しいからと 勘ぐられている。名証によると、セントレックス企業の6割(19社)が東京都 に本社を置く。不人気を反映してか、セントレックスの売買代金は06年の 2044億円から07年は428億円(1-11月)に急低下。名証営業推進グループ プロモーションチームの大沢誠リーダーは、「ネットトレーディングなどの影 響で、東京への取引集中は避けられない」と諦め顔。地方の不振は続きそうだ。

NEO始動

07年はジャスダックがベンチャー企業向け新市場「NEO」を開設し、11 月13日のユビキタスを皮切りに先端技術力が評価された3社が上場した。3 年以上の事業計画が義務付けられていることから、従来の今期業績予想だけで は判断できなかった成長ポテンシャルが推し量れるようになった。しかし、 「今期の収益計画さえ達成できない企業が少なくない。計画通り収益を上げて いくか、注視したい」(水戸証の岩崎氏)と、市場関係者は慎重さを崩さない。

08年も試練の年か

相場が依然安値を模索しているうえ「08年は大型のIPOがなく、社数は 100程度にとどまりそうだ」(いちよし証券・投資情報部の宇田川克己課長)。 1998年の86社以来の100社割れの可能性もある。

宇田川氏はバイオやIT関連のほか、今年目立った環境関連の登場を予想 する。「世界に先駆けて環境問題に取り組んできた日本には最先端の技術があ る。環境技術は家電、自動車、プラントなど幅広く利用され、海外勢も理解し やすい」(同氏)ことで、注目される。セブン銀行や三井生命保険を予想する 声も聞かれ、3年ほど前から株式公開の意向を示している日興アセットマネジ メントの準備具合も気になるところ。東証は09年までの上場を予定している。

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