【08年の日本株テーマ】気になるは温暖化と腹回り、生活密着色強まる

2007年の日本株相場では、M&A(企業 の合併・買収)期待が浮上した電力株に始まり、市況高を好感した不動産株、 環境意識の高まりから原子力関連株がにぎわうなど、さまざまな投資テーマが 持ち上がった。08年のテーマ候補を市場関係者に聞くと、「環境」「健康」と いった生活に密着したものを挙げる向きが多く、「三角合併」や「資産インフ レ」など金融市場、マネーの流れを意識した07年とはやや様相が異なるようだ。

中でも北京オリンピックや洞爺湖サミット、米大統領選挙といった相次ぐ 国際的なイベントを控え、1年を通して話題となりそうなのが「環境」だ。A IG投信投資顧問の元木宏常務執行役員は、「息の長いテーマとなりそうだ。 中国政府が環境対策に取り組む5カ年計画を打ち出している上、米大統領選で 温暖化対策に積極的な民主党が勝利すれば、一層の追い風になる」と見ている。

ノーベル平和賞、米中姿勢に変化も

「世界が正常な状態から逸脱しつつある兆候を、見過ごすことはできなく なった」――。07年のノーベル平和賞授賞式で、京都議定書の推進に努めてき た民主党のアル・ゴア元副大統領は地球温暖化の深刻さを訴えた。対応が十分 ではない中国と米国については、温暖化防止は「両国の今後の動向に大きく左 右される」(ゴア氏)と苦言を呈した。

問題解決に腰の引けていた米中両国も、オリンピックと選挙を前にして意 識は変化しつつあるようだ。中国政府は昨年3月、第11次5カ年計画を採択、 エネルギー消費量を10年までに05年比で20%削減することを目標とした。今 年10月の共産党大会では、環境問題に取り組む姿勢があらためて示された。

米国も12月にインドネシア・バリ島で開催された「国連気候変動枠組条約 締約国会議」で、2013年以降の温暖化防止の枠組みづくりに向けた作業工程を 盛り込んだ「バリ・ロードマップ」に協力する姿勢を示唆。また、来秋の米大 統領選挙では、ゴア氏に代表されるように民主党は環境対策に積極的であり、 選挙戦の動向次第で米政府の動きに一段と変化が出てくる可能性がある。

三菱UFJ投信株式運用部の高田穣ファンドマネージャーは、「環境問題 は地球規模で切実な問題だ。相場のテーマとしてはきちんと根拠があり、環境 技術を持っている企業には大きなビジネスチャンスになるだろう」とみる。

大和証券発行の「ダイワ投資情報」(12月3日号)では、地球温暖化の関 連銘柄として、太陽光発電を手掛けるシャープや京セラ、原子力発電関連で東 芝や三菱重工業、排出権取引を行う大手商社などを挙げている。一方、AIG 投信では11月末時点の純資産総額が175億円の日本株ファンド「ビューティフ ル・ジャパン」を運用中。直近の月次レポートを見ると、組み入れ上位はトヨ タ自動車、三菱商事、三井物産、三菱電機、東洋炭素などで、トヨタはハイブ リッドカーに代表される低燃費技術を武器に世界シェアを拡大していると解説。 三菱電は発電やエアコン事業で利益成長が著しいとし、東洋炭素は半導体や太 陽電池、原子力発電向けに成長が見込まれる等方性黒鉛最大手と評した。

メタボ封じで市場拡大

地球規模の問題から視線を落とすと、「健康」に新材料がある。厚生労働 省は来年4月から、メタボリック(内臓脂肪)症候群の人を対象に新しい「特 定健診」「特定保険指導」を開始する。健康保険組合や国民健康保険を運営す る企業や市町村などの医療保険者は、40-74歳のすべての被保険者と被扶養者 に対し、内蔵脂肪型肥満に着目した健診や保健指導の実施が義務付けられる。

旭化成は今年6月、特定保険指導を請け負う事業に進出すると発表。同社 のライフサポートビジネス事業推進部健康グループの古本雅紀責任者は、「2010 年度に10億円の売上高、利用客は3万人を想定している」と意気込む。厚労省 によると、40-74歳男性の2人に1人、女性の5人に1人がメタボリック症候 群を強く疑われるか、予備軍に該当する。有病者・予備軍を合わせれば、その 数は約1900万人。症候群か、予備軍と判定されれば、医師や保険師、管理栄養 師から食事や運動の指導(特定保険指導)を受けることになる。

ちばぎんアセットマネジメントの安藤富士男専務は、「高齢化社会を背景 に医療費が増え続ける中、生活習慣病を予防することで将来の医療費を抑制す ることが政府の狙い」と解説する。厚労省では、健診や指導の実施を通じて2015 年までに有病者と予備軍を08年度比で25%減少させる計画で、みずほインベス ターズ証券の試算では新健診に絡む健康市場は数千億円規模という。同証では 主な関連銘柄として、「特定保険指導」の支援事業に参入する旭化成やデサン トのほか、セントラルスポーツなどのフィットネスクラブ運営会社、小林製薬 などの薬品会社、テルモなどの健康機器メーカーなどを挙げる。

副都心線開通で生まれる流れ

このほか、08年6月に開業する地下鉄「東京メトロ副都心線」も話題の1 つ。渋谷-池袋を結び、池袋から西方向は東武東上線などと相互乗り入れを実 施し、12年からは渋谷経由で東急東横線と直通運転も開始され、埼玉県内から 横浜まで直通で行くことが可能だ。新路線で新たな人の流れが期待でき、百貨 店や駅前再開発計画などを期待する声がある。中央証券では、新線開業に先駆 けて今年4月に新宿店をリニューアルした高島屋、新駅から徒歩1分の日本テ レビゴルフガーデン跡地を落札した三菱地所、渋谷周辺で再開発案件を抱える 東京急行電鉄などを注目銘柄として取り上げている。

ASEANとのEPA発効

投資テーマとして、新興国の人気も依然高い。08年に話題を集める可能性 があるのは、4月に発効見通しの日本とASEAN(東南アジア諸国連合)と のEPA(経済連携協定)だ。EPA発効で関税が原則的に撤廃されるほか、 企業進出の自由化、ヒトやモノの往来の活発化などが促進される。ASEAN の06年の経済成長率(名目)は8.5%と、日本の1.4%を大きく上回る。日本 にとって、ASEANは米国、中国に次ぐ3番目の貿易相手だ。

これまで日本はシンガポール、メキシコ、マレーシア、チリ、タイとEP Aを結んできたが、地域連合とは初めて。ASEANを1つの市場として捉え ることが可能になり、域内で国境をまたいで製品を出荷する際の関税がなくな る。「例えば、日本企業がタイで生産してインドネシアなどへ輸出する場合、 これまで賦課されていた関税が撤廃されることになり、生産拠点を持つ日本企 業に恩恵をもたらす」(みずほ証券の北岡智哉ストラテジスト)。

経済産業省の試算では、EPA発効で日本のGDP(国内総生産)は約1 兆円以上増加する見込み。みずほ証の北岡氏が、アジア向け売上高比率が15% 以上、今来期業績が増収増益予想、来期PER17倍以下の「高成長・割安株」 を探したところ、NTNやSUMCOなどが該当した。非製造業では郵船航空 サービスなどの物流関係、資生堂やマンダムなど家庭用品も注目できるという。

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