亀崎日銀委員:実体経済への影響に不確実性-好循環幾分弱まる(3)

日本銀行の亀崎英敏審議委員は26日午後、 横浜市内で会見し、「実勢より低過ぎる金利は将来に危険性をはらんでいるわけ であり、これはタイムリーに金利を上げていかなければならない」と言明。一方 で、米国景気の減速、米欧金融市場の混乱、原油価格高騰、国内の住宅投資の動 向が実体経済に与える影響には「不確実性が出てきている」とした上で、金融政 策については予断を持たずに「総合的な観点から判断していきたい」と述べた。

亀崎委員は「足元の指標をみると、景気にはやや減速感が出ている。もと もと中小企業を中心に、企業から家計への所得の波及が緩やかにとどまっていた。 住宅投資の大幅な落ち込み、原材料高、円安の修正等、マイナスの要素が出てお り、生産・所得・支出の好循環メカニズムはこのところ、いく分弱まっているよ うにうかがわれる」と述べた。

亀崎委員は一方で「海外景気は全体として拡大を続けている。輸出やこれ に関連した設備投資は堅調」で、個人消費も「今のところは底堅い」と指摘。住 宅投資の落ち込みについても「手続きが非常に複雑になったこと、費用も時間も かさむことから起きている現象で、いずれも反動増も予想される」と語った。

利上げを急ぐ空気は全くない

その上で「こうしたことから生産・所得・支出のメカニズムは維持されて いると認識しているが、今後の景気動向は予断なく注視していきたい」と述べた。 福井俊彦総裁は20日の会見で「夏場以降、多少乱気流気味の操縦過程に入っ た」としながらも、「結果として好循環のメカニズムは基本的に崩れないで維持 されてきている点は来年につながる心強い点だ」と述べていた。

亀崎委員は会見に先立ち行った講演で、「米国を中心に海外景気の先行き に不確実性が高まっている」と指摘。国内景気も「原油を含む原材料高、円安修 正、株安などの影響も踏まえつつ、丁寧にみていく必要がある」としたうえで、 「市場との対話も十分図りつつ、総合的な観点から、適切に政策判断を行ってい きたい」と述べた。

みずほ証券の上野泰也チーフエコノミストは「亀崎委員は内外経済につい て独自の見解を披露しつつ、先行き不確実性の強まりを念頭に、『情勢をつぶさ に捉えつつ丁寧に対応していくことが必要』だと強調した。利上げを急ぐような 空気はそこに全くない。むしろ、金融政策が様子見に徹する期間が長くなりやす いことが示唆されたように思われる」と指摘している。

経済は生き物

亀崎委員は会見で、先行きの金融政策運営については「基本的な考え方は これまでと変わりはない」と言明。金融政策の効果が波及するには「時間を要す る」とした上で、「十分長い先行きの経済・物価の動向を予想しながら、日本経 済が物価安定のもとでの息の長い成長軌道をたどる蓋然(がいぜん)性が高いこ とを確認し、リスク要因を点検しながら、経済・物価情勢の改善の度合いに応じ たペースで徐々に金利水準の調整を行う」と語った。

亀崎委員はさらに「もともと、実勢より低過ぎる金利は将来に危険性をは らんでいるわけであり、これはタイムリーに金利を上げていかなければならない と考えている」と言明。「ただし、米国景気の減速、あるいは米欧金融市場の混 乱、原油価格の高騰、さらには国内の住宅投資の動向などが実体経済に与える影 響には不確実性が出てきている。こうした下で、足元の景気も基調としては緩や かな拡大を続けているが、やや減速感もみられている」と述べた。

亀崎委員はその上で「経済は生き物だ。絶えず変化して、絶えず動いてい るので、今後の金融政策運営は、先行きの景気、物価、市場の動向を予断を持つ ことなく、つぶさにみながら、総合的な観点から判断していきたい」と語った。

現状は利下げ必要ない

日銀が景気判断を下方修正したことで、日銀が将来利下げに追い込まれる のではないかとの見方が一部で出ていることについては「足元で住宅投資の減少 や企業の先行き業況判断に慎重さはみられるが、12月の金融政策決定会合での 総合判断の通り、全体としては緩やかながらも拡大基調にある。現状は金利を引 き下げる必要はないと考えている」と述べた。

亀崎委員はその上で「最も大事なことは、スケジュール観のようなものを 持たず、絶えず景気や物価の動向を丁寧にみていく、その注意を怠らないこと だ」と指摘。「それは金利の調整にしても、引き下げにしても同じことであり、 常に実態を見ながら、先行きを見て、日本経済の中長期的な成長の維持が確認さ れるというときに、調整をしていく。また逆もあるということだ」と語った。

この発言について、中長期的な成長の維持が確認されなければ利下げもあ り得るということか、という問いに対しては、「それは一般論としてはあり得る と思う」としながらも、「しかし、今はそういう状況ではない」と述べた。

来年1月の欧米金融機関の決算に注目

米サブプライム(信用力が低い個人向け)住宅ローン問題については「こ のところかなり大きな額で各金融機関の資本増強が行われている。こういう形で 各金融機関が自ら抱えている証券化証券のロスをバランスシートでちゃんと吸収 できていくということになれば、この問題は解決する」と語った。

亀崎委員はそのうえで、サブプライム問題による損失について「大きな金 融機関だけでなく、薄く広く、欧州にもわたっているので、そこのところがまだ よく見えていない」と指摘。「私としてはまず、来年1月に発表される欧米の金 融機関の決算をみてみたい。各金融機関がどんな形にせよ、こういった資本増強 にしろ、これを吸収していけば、この問題は乗り越えられる」と述べた。

主な一問一答は次の通り。

――生産・所得・支出の好循環のメカニズムは維持されているのか。

「足元の指標をみると、景気にはやや減速感が出ている。もともと中小企 業を中心に、企業から家計への所得の波及が緩やかにとどまっていた。住宅投資 の大幅な落ち込み、原材料高、円安の修正等、マイナスの要素が出ており、生 産・所得・支出の好循環メカニズムはこのところ、いく分弱まっているようにう かがわれる」

「ただし、海外景気は全体として拡大を続けている。これを受けて、わが 国の輸出やこれに関連した設備投資は堅調だ。名目賃金の動きが弱いなかにあっ ても、雇用者数の増加を受けて、所得の総和は緩やかながらも増勢を続けている ことから、個人消費も今のところは底堅い動きを示している。住宅投資の大幅な 落ち込みは、手続きが非常に複雑になったこと、費用も時間もかさむことから起 きている現象で、いずれも反動増も予想される」

「こうしたことから、生産・所得・支出のメカニズムは維持されていると 認識しているが、今後の景気動向は予断なく注視していきたいと考えている」

――福井総裁は先行きの金融政策について「方向としては利上げ」としているが、 亀崎委員はどうみているのか。

「先行きの金融政策運営についての基本的な考え方はこれまでと変わりは ない。すなわち、金融政策の効果が波及するには時間を要する。このことから、 十分長い先行きの経済・物価の動向を予想しながら、日本経済が物価安定のもと での息の長い成長軌道をたどる蓋然性が高いことを確認し、リスク要因を点検し ながら、経済・物価情勢の改善の度合いに応じたペースで徐々に金利水準の調整 を行うことになると考えている」

「もともと、実勢より低過ぎる金利は将来に危険性をはらんでいるわけで あり、これはタイムリーに金利を上げていかなければならないと考えている。た だし、米国景気の減速、あるいは米欧金融市場の混乱、原油価格の高騰、さらに は国内の住宅投資の動向などが実体経済に与える影響には不確実性が出てきてい る。こうしたもとで、足元の景気も基調としては緩やかな拡大を続けているが、 やや減速感もみられている」

「経済は生き物だ。絶えず変化して、絶えず動いているので、今後の金融 政策運営については、先行きの景気、物価、市場の動向を予断を持つことなく、 つぶさにみながら、総合的な観点から判断していきたいと考えている」

――日銀が景気判断を下方修正したことで、いずれ利下げに追い込まれるのでは ないかとの観測も出ているが、亀崎委員は利下げについてどのように考えるか。

「現状、米国発のサブプライム問題の影響が日本の金融機関に深く影を落 としたり、短期金融市場での年末越えの資金調達で、日銀が特段の対応をしなけ ればならない状況ではない。さらに、日本の景気判断としては、足元で住宅投資 の減少や企業の先行き業況判断に慎重さはみられるが12月の金融政策決定会合 での総合判断の通り、全体としては緩やかながらも拡大基調にある。現状は金利 を引き下げる必要はないと考えている」

「最も大事なことは、スケジュール観のようなものを持たず、絶えず景気 や物価の動向を丁寧にみていく、その注意を怠らないことだ。それは金利の調整 にしても、引き下げにしても同じことであり、常に実態を見ながら、そして先行 きを見て、日本経済の中長期的な成長の維持が確認されるというときに、調整を していく。また逆もあるということだ」

――米サブプライム問題の見極めはどうやるのか。

「UBSが115億ドル、シティグループは75億ドル、モルガン・スタンレ ーは50億ドル、メリルリンチは62億ドルと、このところかなり大きな額で各 金融機関の資本増強が行われている。こういう形で各金融機関が自ら抱えている 証券化証券のロスをバランスシートでちゃんと吸収できていくということになれ ば、この問題は解決する」

「ただし、今申し上げたような大きな金融機関だけでなく、このほかにも 薄く広く、欧州にもわたっているので、そこのところがまだよく見えていない。 私としてはまず、来年1月に発表される欧米の金融機関の決算をみてみたい。各 金融機関がどんな形にせよ、こういった資本増強にしろ、これを吸収していけば、 この問題は乗り越えられる。経済そのものが痛んでいるというわけではないので、 このところが解決すれば、経済は順調に戻っていくと考えている」

「今のところはまだ全貌をつかむには至っていないが、こういう形で順調 にこの問題の処理が進んでいると思う。全貌をみるには、来年1月の欧米の金融 機関の決算発表をまずは見てみたい」

――講演で、確率は高くなくとも発生した場合に生じるコストが大きなリスクを 点検する「金融政策の第2の柱」に関連し、「海外経済や、グローバルな金融市 場の動向などの不確実性があり、その動向いかんでは、日本経済にもマイナスの 影響が及ぶことが想定される」とする一方で、「経済・物価情勢と離れて低金利 水準を維持することにより、先行きの経済・市場の振幅が大きくなってしまうリ スクも想定しておく必要がある」と指摘している。この上下両方のリスクのうち、 現時点ではどちらにより重きを置いているのか。

「両方同じように点検する」

――先ほどのやり取りで、利下げの可能性について「現状は金利を引き下げる必 要はない」と述べる一方で、「先行きを見て、日本経済の中長期的な成長の維持 が確認されるというときに、調整をしていく。また逆もある」と述べられた。こ れは、日本経済の中長期的な成長の維持が確認されなければ利下げもあり得ると いうことか。

「そういう場合にはそういうことだ。今はそういうものはないと申し上げ ている。そういう状況に遭遇してみなければなかなか説明はできないが、それは 一般論としてはあり得ると思う。しかし、今はそういう状況ではない」

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