北朝鮮の経済再建、豊富な鉱物資源の活用が鍵-潜在価値274兆円

北朝鮮国歌は鉱物資源の豊かさをたたえるこ んな歌詞で始まる。「朝は輝けこの山河、金銀の恵みにあふれる麗しい国」。正 確を期するならば、金銀だけではなく、マグネサイトや亜鉛、あるいは鉄鉱石や その他の鉱物名を加えるべきかもしれない。

北朝鮮は多量の地下資源を抱えているといわれる。例えば大韓商工会議所が 11月発表した報告書によれば、北朝鮮の鉱物資源の潜在価値は2287兆ウォン(約 274兆円)で韓国の24倍に達する。ちなみに韓国の経済力は、北朝鮮の35倍に当 たる。

加えて最近の鉱物資源を取り巻く環境は、北朝鮮に有利に働いている。液晶 パネルや自動車や航空機、あるいは携帯電話などに使用される鉱物資源の需要が 高まり、その価格が高騰し続けているからだ。この状況は、北朝鮮が自国にある 鉱物という宝の山を活用して外貨を稼ぎ、必要品を購入し、孤立状態を抜け出し て経済の発展につなげる追い風にもなりつつある。

「北朝鮮の軍事工業化」の共著者で北朝鮮の鉱業の歴史に詳しい安部桂司氏 は、「北朝鮮が生き延びて経済の再生を達成できるか否かは、北の政権が鉱物資 源をどれだけ有効に活用できるかにかかっている」と指摘する。

金正日(キム・ジョンイル)総書記自身も、鉱物資源の重要性は分かってい るようだ。朝鮮中央通信によれば、この8月、現地指導の一環として端川鉱山機 械工場を訪ねた総書記は、工場労働者に「全面的な技術改善事業を大規模かつ電 撃的に進めなければならない」と指示したという。

日本が鉱山開発

北朝鮮の鉱物資源に関しては、1910年から45年にかけて朝鮮半島を統治して いた日本が詳しい。三菱、三井、住友をはじめとしてその他多くの会社が、数百 ともいわれる鉱山を開発、採掘していた。地質調査報告書によれば、鉱物によっ ては、世界最大級の埋蔵量を誇る鉱山もある。

朝鮮総連系の朝鮮新報11月30日版には、国家資源開発指導局キム・チョル ス副局長とのインタビューの内容が掲載されている。キム副局長は「わが国には 各種地下資源が均等に埋蔵されている。とくに鉛、亜鉛、銅、モリブデン、稀有 な希土類のような最先端工業で要求される資源がほとんどすべてある」と述べて いる。

重要な鉱物資源であるタングステンも多い。65年ほど前、現在東京在住の野 崎正安氏(89)は、「百年鉱山」という名称のタングステン鉱山で働いていた。 その後、北朝鮮では「万年鉱山」と呼ばれている。「谷間に鉱山町があり、住宅 や郵便局はもちろん、病院や購買部もあった。日本人も朝鮮人も3交代で働き、 電力も水も交通や搬送手段も食料もちゃんとあった」と振り返る。

深刻なインフラ不備

しかし数十年にわたる経済政策の失敗で、その状況は大幅に変わってしまっ ている。マグネサイトで有名な端川の鉱山や、亜鉛が豊富な剣徳鉱山でも「イン フラの不備が深刻で、電力不足や運搬手段が問題だ」と南北交流協力支援協会の チェ・ギョンス資源開発室長はソウルでのインタビューで語った。

この夏と秋に北朝鮮の鉱山に調査団を率いて現地をつぶさに見てきた同室長 は、「状況を改善するには、相当大きな投資が必要だ」と指摘する。マグネサイ ト鉱石からとれるマグネシウムは、自動車や航空機などの部品の軽量化に極めて 重要である。

北朝鮮は投資を呼び込むために近年、中国や韓国との合弁の立ち上げを推進 している。キム国家資源開発指導局副局長は「現在、北南朝鮮の間で軽工業およ び地下資源協力事業が行われている。中国をはじめ諸外国も朝鮮の地下資源に関 心を示している」と語っている。

韓国は、いつの日か分断国家が統一を迎える日のために、少しでも経済的な ギャップを埋めようとしている。10月に平壌で行われた南北首脳会談で、韓国の 盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領は、北朝鮮との経済協力に合意し、その金額は現 代経済研究所によれば、112億ドルに相当するという。

韓国・中国が関心

11月末には北朝鮮と韓国との合弁で作られた200トンの黒鉛が北朝鮮から仁 川港に荷揚げされ、その数週間後には、韓国からの経済支援の見返りとして500 トンの亜鉛が同港に着いた。12月には、相互乗り入れの貨物列車の運行が開始さ れた。また、最近盧大統領はビジネスマンを前に演説し、「北朝鮮は、新しいビ ジネスチャンスの国である」と語り、投資を呼び掛けた。

アジアで4番目の経済大国となった韓国は、対北朝鮮ビジネスで、何とか中 国を追い越そうと必死である。前述の大韓商工会議所の報告書でも、中国は2006 年に2億7453万ドルの鉱物を輸入しているが、韓国は5973万ドルだった。

また、11月には中国の鉱業企業が北朝鮮の恵山銅山の開発を表明し、同月、 金日成総合大学で演説した中国の劉暁明・駐北朝鮮大使は「今年の1月から8月 の間、中国が承認した対中投資は77件あり、総額3億8000万ドルに上ると語っ た。また、シンガポールの投資会社会長で元駐韓大使を務めたリー・キョンチョ イ氏は代表団を率いて訪朝し、金英逸(キム・ヨン・イル)首相と会談した。電 話でのインタビューに答えて、「ビジネスチャンスを探るための訪朝で、金や鉄 鉱石の鉱山の開発も話し合った」と語った。

日本のアジア経済研究所の中川雅彦研究員によれば、「鉱物資源を活用し経 済発展に結び付けるには、北朝鮮自らが国際的な信用度を高め、ビジネスのパー トナーとしての信頼を得る努力をしなければならない」と語る。また、中川研究 員は、1948年の建国以来、金日成、金正日の親子2代の独裁体制下にあった北朝 鮮は、鉱物資源の豊富さやその品質を外の世界に知らしめると同時に「政治的リ スクがない」ということをアピールする必要があると指摘している。

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