財務省原案:一般会計は2年連続増、健全化足踏み-国債は抑制(3)

政府は20日午前の臨時閣議で、2008年度 一般会計予算の財務省原案を決定した。先進国中、最悪の長期債務残高の削減 に向けた福田新政権の姿勢が問われるなか、新規国債発行を前年度をわずかに 下回る規模に抑えて財政健全化路線を維持する姿勢を示したものの、社会保障 関係費などの歳出圧力が強く、一般会計総額は2年連続で増加、基礎的財政収 支(プライマリーバランス)も5年ぶりに悪化した。

原案によると、一般会計総額は前年度比0.2%増の83兆613億円。このう ち、政策的経費となる一般歳出は少子高齢化に伴う社会保障費の増加により同

0.7%増の47兆2845億円となった。一方で、新規国債発行額は同0.3%減の25 兆3480億円と4年連続で減少したが、歳入全体に占める公債依存度は前年度の

30.3%(補正後)に比べ30.5%と、5年ぶりに増加した。

新規国債発行を除く歳入面では、税収が1兆円近く減額補正された前年度 予算額52兆5510億円に比べ1.9%増の53兆5540億円。一方で、税外収入は外 国為替資金特別会計の剰余金1.8兆円など特別会計から約2兆円を繰り入れる などして同3.7%増の4兆1593億円となった。

国債発行残高は、財政融資資金特別会計の積立金20兆円のうち9.8兆円を 取り崩し、国債返済に充てることによって前年度比(補正後)6兆円増にとど めたが、553兆円(08年度末)と過去最高を更新。国・地方合わせた長期債務 残高は776兆円(同)で、対GDP(国民総生産)比で同2.4ポイント低下し たものの147.2%の高水準が続き、財政再建への道のりは険しい。

今年度補正と来年度予算で両にらみ

額賀福志郎財務相は同日午前の臨時閣議後会見で、来年度の予算案につい て「成長と改革の予算」と表現。7月の参院選での与党大敗を受け、歳出増加 の要求が高まったことは事実と認めた上で、「財政を預かるものとしては、ばら まきは避けなければならない」と強調。また「成長を同時に加速させるととも に、財政再建の旗を降ろしてはいけない」と述べ、「債務残高の圧縮と新規国債 の抑制に最大限の努力をした」と語った。

一方で、同日閣議決定された07年度補正予算案は、参院選での敗因となっ た地域活性化や高齢化対策の充実に向けて9000億円弱の小規模ながら次期総選 挙を見越した対策が目立った。「ばらまき」と「財政再建」を軸に今年度補正と 来年度予算で両にらみとなった内容に、財務相は「よいバランス、枝ぶりにな りつつある」との解釈を披露した。

スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)ソブリン格付け部門ディレク ターの小川隆平氏は、「表面上は大幅な歳出増にもならず、債務に頼らない予算 編成がなされたが、その後にある大きな流れを見てみると必ずしも安心できな い」と指摘。参院選での与党大敗の余波を受け、「政治の基盤が結果的に弱くな ったため、財政再建がスローになる」とみる。

また、国債の元利払いに充てる国債費は前年度比4.0%減の20兆1632億円。 利払い費を計算する長期金利の想定利回りを前年度の2.3%から2.0%に引き下 げたことが主な要因だが、一般会計歳出に占める国債費の割合は24.3%と高く、 他の歳出を抑制する財政硬直化の状態が続いている。

遠のいたプライマリーバランス黒字化

国債発行などの借金を除く歳入から、過去に発行した国債の元利払いを差 し引いた基礎的財政収支(プライマリーバランス)の赤字は前年度から7516億 円赤字幅が拡大し、5兆1848億円の赤字となった。同収支の悪化は5年ぶりで、 政府が目指す11年度の黒字化の見通しが遠のいた。

政府は11年度の黒字化に必要な財源16兆5000億円を歳出・歳入一体改革 で実現する目標を掲げた。来年度与党税制改正大綱では、消費税率を含む歳入 の抜本改革を先送り。最大14兆3000億円を目指す歳出削減は毎年1兆円近く 増加する社会保障制度の見直しが課題となっている。

一般歳出では公共事業関係費を前年度比3.1%減の2121億円、政府開発援 助(ODA)を同4%減の291億円それぞれ削減。社会保障関係費は7500億円 の自然増を2200億円抑制したが、ほぼ半分を占める1000億円は政府管掌健康 保険の国庫負担削減で、健康保険組合連合会と共済組合が肩代わりしたにすぎ ない。財務省は09年度以降も継続を求めている。

一方で、一般会計からの支出額が前年度比4.6%増の15兆6136億円となっ た地方交付税は、国税収入の悪化に伴う交付税財源の確保のため、07年度と08 年度に予定していた交付税特別会計への借入金計1.2兆円の返済繰り延べとい う新規国債発行抑制のための苦肉の策もとられた。

みずほ証券チーフマーケットエコノミストの上野泰也氏はリポートで「海 外格付け会社が日本国債の格付けを引き上げる動きが出ている手前、財政構造 改革路線をきちんと走っているという『形』をつくっておく必要に迫られ、い くつかの予算編成上のテクニックが駆使された」としたうえで、「財政再建に向 けた動きは実質的には一歩後退した」と指摘している。

一般歳出の主要項目は以下の通り
          07年度   08年度  前年度比増減
社会保障関係    211,409   217,771   3.0%
文教及び科学振興   52,856       53,040      0.3%
(うち科学技術振興) 13,477       13,561      0.6%
恩給関係        9,235        8,522     -7.7%
防衛関係        48,013       47,793     -0.5%
公共事業関係     69,473       67,352     -3.1%
経済協力        6,913        6,660     -3.7%
ODA         7,293        7,002     -4.0%
中小企業対策     1,640        1,731      5.5%
エネルギー対策    8,643        8,640     -0.0%
食料安定供給関係   8,555        8,506     -0.6%
予備費        3,500        3,500      0.0%
調整財源        - -       500    - -
 (億円単位)

--共同取材 伊藤辰雄、乙馬 真由美、Editor: Hitoshi Ozawa、Norihiko Kosaka

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