世界遺産も「ドル離れ」、タージ・マハル入場料がルピーに-揺らぐ威光

インドの有名観光スポットで世界遺産にも 登録されたタージ・マハルが、毎年約250万人もの観光客から受け取る入場料 を米ドルからインド・ルピー建てに変更するとの11月の発表は、かつて輝いて いた米ドルの威光に傷をつけるものだった。

ドルはクウェートや韓国といった政府からスーパーモデルのジゼル・ブン チェンさんに至る誰もから敬遠され、輝きを取り戻せないかもしれない。過去 6年のうち5年にわたって対ユーロで下落したドルは、投資資金がアジアに流 入して経済大国としての米国の力が変化するなか、下落局面に陥っているとエ コノミストらは指摘する。

ジョンズ・ホプキンズ大学のリオルダン・ロエット教授(政治学)は、「ド ルの形勢を変えられるだろうか。恐らく完全には無理だろう」と語る。「アジア の世紀がやってきたため、それに対する調整が欧米で必要になるだろう」と説 明する。

アジア通貨は同地域への投資ブームを背景に上昇してきた。中国は過去4 年に平均10.4%の経済成長を達成し、人民元は2005年7月のドルに対するペ ッグ(連動)制廃止以来、今年12月19日現在で12%上昇。同様に経済成長著 しいインドでも、インド・ルピーは年初から同日までに12%上昇した。

ドル強気派は、17日に対ユーロで7週間ぶり高値を付けたドルが来年もさ らに上昇すると見込む。理由に挙げるのは米財政赤字や経常赤字の縮小だ。ド イツ銀行は08年のドルが対ユーロで約2%値上がりすると予想する。

ただ長期的には、信用収縮に影響を受けて減速する米景気がドルに重くの しかかる。米金融当局はフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を9月か ら3回引き下げて今月に4.25%としたが、金利先物市場では同政策金利が来年 5月までに3.75%まで引き下げられる可能性も見込まれている。これに対し、 欧州中央銀行(ECB)は利上げを辞さない構えを示している。

揺れる信認

ドルに対する信認は揺らぎ、クウェートは5月に購買力の低下を理由にド ル・ペッグ制を廃止したほか、韓国の中央銀行は11月に造船各社に対しウォン 決済を促す一方で、ドル安に備えたヘッジを強めるよう勧めた。

プリンストン大学のピーター・ケネン教授(国際金融学)はドルの基軸通 貨としての役割が終わる可能性を指摘する。国際通貨基金(IMF)によれば、 各国中央銀行が保有する通貨に占めるドルの割合は今年4-6月期に64.8% と、ユーロが発足した1999年の71%から低下している。メリルリンチによれ ば、アジアや中東を中心に、各国政府が向こう5年で最大1兆2000億ドルを他 通貨にシフトさせる可能性がある。ケネン教授は「遠い先の将来の話と思って いたことが今、現実に起きるかもしれない」と話す。

一方、マサチューセッツ工科大学(MIT)のレスター・サロー教授はド ルが力を失ったとの見方に反論する。途上国の歴史的な傾向を見ると、中国の 国内総生産(GDP)や1人当たり国民所得はあと約1世紀は米国に追いつか ないという。サロー教授は「基軸通貨は世界の大国の通貨である必要がある。 中国はいずれ米国を追い抜く可能性はあるが、2100年まではない」と語る。

エコノミストからは、ブッシュ政権がそもそも強いドルを本当に望んでい るのかという議論が持ち上がっている。ドル安で輸出が拡大し、米景気の数少 ない明るい側面になっているからだ。1970年にノーベル経済学賞を受賞したポ ール・サミュエルソンMIT名誉教授は「ブッシュ政権の強いドルを望むとの 言明は本心ではない。ドルの長期トレンドは下向きの公算が非常に大きい」と 語る。

サミュエルソン教授の見方が正しければ、タージ・マハル以外にも多くの 場所でドル使用は禁止されることだろう。

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