08年度国債市中発行額は105.1兆円、3年連続減-6年ぶり低水準(3)

機関投資家などへの入札方式で08年度内 に販売する国債の市中発行額は、前年度当初計画比で4兆5000億円減額の105 兆1000億円となる。3年連続の減額で、02年度当初予算以来6年ぶりの低水準 となった。日本銀行による追加利上げ観測が後退している中、国債需給は良好な 状況が続きそうだ。

額賀福志郎財務相が20日午前の臨時閣議に提出した同年度国債発行計画に よると、国債の発行総額は08年度当初予算で前年度比17兆5480億円少ない 126兆2900億円と3年連続減額となる。発行総額が130兆円を下回るのは2000 年度以来8年ぶり。01年度の財投債発行の開始以来では初めてという。減額規 模は07年度に次いで過去2番目。

新規財源債は前年度当初予算比840億円減の25兆3480億円。福田康夫首相 の指示に沿って新規発行を抑制し、財政健全化路線の堅持を示した格好。額賀財 務相は会見で、「財政健全化に向けた強い姿勢を内外に示すことができた。日本 の国家の意志として、財政再建、財政規律を貫いていくことが市場へ大きなメッ セージとなる」と語った。

損保ジャパン・債券運用第一グループの砺波政明グループリーダーは「予想 通りの結果だ。基本的には需給環境にプラスの材料にはなると思う」と述べた。 ただ、「ここ1週間ほど減額するというのがマーケットのコンセンス(共通認 識)になっていたので、織り込まれていた状況がある。それによって市場が大き く反応することはないだろう」とも指摘した。

過去に発行した国債の償還財源とする借換債は、前年度比7兆2640億円少 ない92兆5420億円で2年連続の減額。財投債は同10兆2000億円減って8兆 4000億円となる。

国債の消化方式には、市中発行、個人向け販売、公的部門の引き受けの3つ がある。来年度の発行総額の内訳をみると、市中発行分が前年度比9兆7643億 円減の108兆6677億円、個人向け販売分は1500億円減額の8兆円となっている。 公的部門引き受けは、前年度に7兆6000億円を計上した財投債経過措置分がな くなるため、日銀乗り換えによる9兆6223億円(前年度比337億円減)だけと なる。

5年債・15年変国・TBを減額

カレンダーベース(08年4月1日から09年3月31日)の市中発行額を種 類別にみると、5年利付国債は07年度当初計画比1兆2000億円減の22兆8000 億円、15年変動利付国債は同1兆6000億円減の2兆4000億円、TB(割引短 期国債)6カ月物は同2兆7000億円減額の3兆3000億円とする。

5年利付国債は1回当たり発行額を1000億円減の1兆9000億円とし、年 12回発行する。半期に2回ずつ発行する15年変動利付国債は、1回当たり1000 億円減らし6000億円を年4回発行。15年変動利付国債は07年度上期まで1回 1兆円発行していたが、需給改善のため同下期は同7000億円に減額していた。 国債市場特別参加者会合や国債投資家懇談会でも、15年物変動利付国債や5年 利付国債は発行額を減らすべきだとの意見が出ていた。

財務省は08年度中の遅い時期に、割引短期国債と政府短期証券の統合発行 を行う予定で、割引短期国債を政府短期証券に振り替えるという。

40年債は定期発行、年4000億円に増額

一方、11月に初めて1000億円発行した40年利付国債に関しては、カレン ダーベースの市中発行額枠内に入れて定期発行とし、1回2000億円で年2回発 行し、年4000億円に増額する。財務省幹部は、国債保有者層の多様化を目指 し、年金基金や生命保険など機関投資家の長期運用ニーズの増大を踏まえ、超長 期債市場の育成方針を示した。

40年債の定期発行と5年債減額効果で、カレンダーベース市中発行の平均 償還年限は7年4カ月と、07年度の7年から4カ月長期化する見込み。1年物 割引短期国債、2年債、10年債、20年債、30年債、10年物価連動債の市中発行 額はいずれも07年度と同額に据え置く。

買い入れ消却総額を約3兆円に拡大、15年変国に重点

財務省幹部は、国債市場での流動性向上策として、買い入れ消却と流動性供 給入札を「車の両輪」に例えた。買入消却は、財政融資資金特別会計(財融特 会)の積立金から繰り入れる9兆8000円を充て、既発国債の残高を圧縮する。

買い入れの内訳は、市中から約3兆円、財政融資資金から約3兆4000億 円、日銀から約3兆4000億円とする。国債残高を圧縮、利払い費を抑制すると ともに、今後の借換債発行額も圧縮・平準化する。財務省幹部によると、平年度 ベースで10年度以降に年間3000億円程度の利払い費圧縮が見込めるという。

厳しい財政事情のなか、特別会計の過剰な積立金は、霞が関の「埋蔵金」と 呼ばれている。財融特会は、国債(財投債)発行で集めた資金を政府系金融機関 や自治体に低利で貸し付けるのが主な目的。運用規模の縮小に伴い、金利変動リ スクに備えた積立金の法定準備率を総資産の10%から5%に引き下げ、08年度 末時点で準備率を超える余剰分を国債返済に充てる。

市中からの買い入れ消却は総額を1兆8000億円から拡大。流動性が低下 し、理論価格から割安となっている15年変動利付国債に重点を置いて買い入れ 消却を実施し、年間4800億円を約1兆2000億円に増額する。またストリップス 債の利札(分離利息振替国債)の買い入れ消却も約400億円実施する。

一方、流動性供給入札については、08年度も継続。月1回入札で発行額は 現行と同額の1000億円を継続し、年1兆2000億円とする。

中長期的な調達コストを抑制する観点から実施する金利スワップ取引につい ては08年度も継続し、想定元本ベース上限を07年度と同額の1兆8000億円と して実施する。

市場は織り込み済みとの声-相場への影響は限定的

来年度国債発行計画に関して、市場参加者の間では、債券相場を支える要因 ではあるものの、これまでの報道で減額は織り込まれており、影響は限定的との 見方が多い。

岡三証券の坂東明継シニアストラテジストは「予想通りの結果ということで、 中立と考えてよいと思う。それを材料に買い進まれる可能性は小さい。全体の発 行量が削減されることについて、マーケットは好感するだろう。ただ、これまで 何度も報道されていることなので、国債発行計画が出たからといってムードが変 わることはない」と話した。

一方で、5年債発行減額などを背景に、「短期的には、歳出拡大圧力が拡大 する中で、中期セクターの買いのサポート要因となる」(モルガン・スタンレー 証券ストラテジストの伊藤篤氏)といった声もあった。ただ同氏は、長期的に は、①財投改革・特別会計改革からの成果による発行額・発行残高の減額がいつ までも継続できるわけではない②来年春以降の選挙でも歳出拡大方向は継続する 見通し-ことなどから需給的には注意が必要としている。

【当初計画の国債発行額比較】(単位:億円)
                     2007年度   2007年度補正   2008年度
===========================================================
国債総発行額        1,438,380    1,436,105    1,262,900
  新規財源債          254,320      254,320      253,480
  借換債              998,060      995,785      925,420
  財投債              186,000      186,000       84,000
    市中消化分        110,000      110,000       84,000
    経過措置分         76,000       76,000          ---

市中発行分          1,184,320    1,182,045    1,086,677
  カレンダーベース  1,096,000    1,096,000    1,051,000
  第Ⅱ非価格競争入札   25,860       38,763       25,140
  前倒し債発行減額     62,460       47,281       10,537
  による調整分
個人向け販売(窓販も) 81,500      81,500        80,000
公的部門引受          172,560     172,560        96,223
  日銀乗り換え         96,560      96,560        96,223
  財投債経過措置分     76,000      76,000           ---
-----------------------------------------------------------
カレンダーベース種類別発行予定額
  40年債                 ---           ---       0.4兆円
  30年債             2.4兆円       2.4兆円      2.4兆円
  20年債             9.6兆円       9.6兆円      9.6兆円
  10年債            22.8兆円      22.8兆円     22.8兆円
  5年債             24.0兆円      24.0兆円     22.8兆円
  2年債             20.4兆円      20.4兆円     20.4兆円
  TB1年          16.8兆円      16.8兆円     16.8兆円
  TB6カ月         6.0兆円       6.0兆円      3.3兆円
  15年変動利付債     4.0兆円       3.4兆円      2.4兆円
  10年物価連動債     3.0兆円       3.0兆円      3.0兆円
===========================================================

*T 年限別国債(市中消化)発行額・回数は次の通り

40年債 0.4兆円 0.2兆円×年2回

30年債 2.4兆円 0.6兆円×年4回

20年債 9.6兆円 0.8兆円×年12回

10年債 22.8兆円 1.9兆円×年12回

5年債 22.8兆円 1.9兆円×年12回

2年債 20.4兆円 1.7兆円×年12回

TB1年 16.8兆円 1.4兆円×年12回

TB6カ月 3.3兆円

15年変動利付債 2.4兆円 0.6兆円×年4回

10年物価連動債 3.0兆円 0.5兆円×年6回

流動性供給 1.2兆円 0.1兆円×年12回

----------------------------------―――――――――

計 105.1兆円 *T

--共同取材:氏兼敬子、下土井京子、宋泰允  Editor:Hidenori Yamanaka, Kenzo Taniai

参考画面: 記事に関する記者への問い合わせ先: 東京 池田祐美 Yumi Ikeda +81-3-3201-2490 yikeda4@bloomberg.net

野澤茂樹 Shigeki Nozawa

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