【経済コラム】さあ学ぼう、控えめなボーナスの賢い使い方-M・リン

英国でこの時期に新聞をにぎわす話題とい えば、クリスマスプレゼントや込み合う観光地などが定番だが、ここ数年見受 けられたロンドンの金融街、シティーで感涙にむせぶほどのボーナスが支払わ れるという報道は今年、ほとんどない。

最近の基準からすれば、今年のボーナスはたいそう控えめなものになりそ うだ。巨額ボーナスの時代は過ぎ去り、しばらくやってこないのかもしれない。 信用収縮は世界経済にとっての災難というより、金融市場で働くエグゼクティ ブやトップトレーダーらにとっての惨事だ。来年の見通しもぱっとしないもの だと結論付けることは難しいことではない。

とはいえ、2007年は一部の金融機関にとっては引き続き良好なボーナスシ ーズンとなりそうだ。米リーマン・ブラザーズ・ホールディングスは、社員へ のボーナス資金を今年10%増やしたことを明らかにしている。同社は今年、総 額およそ57億ドル(約6460億円)のボーナスを支払う。06年の52億ドルを 上回る規模だ。

米ゴールドマン・サックス・グループの社員にとっても、また良い年とな るだろう。同社の決算報告によれば、07年1-9月期に給与や手当、ボーナス 向けに積み立てた資金は169億ドルと、06年の年間記録をすでに突破している。

英民間シンクタンク、経済ビジネスリサーチセンター(CEBR)は、シ ティーのボーナスが来年、16%減少すると見込む。英人材派遣会社アームスト ロング・インターナショナルは、07年にロンドンで支払われるボーナスが06 年に比べ最大20%落ち込むと予想する。

UBS

スイスのUBSはつい先日、米サブプライムローン(信用力の低い個人向 け住宅融資)関連投資で100億ドルの評価損を発表したばかりだが、こうした 金融界の動揺を考慮し、ボーナスの受け取りにためらいを感じる者もいる。U BSのマルセル・オスペル会長が今月、07年分のボーナスは「期待していない し、欲しいとは思わない」と述べたのも分かる気がする。

年ごとにボーナスが変動するというのはそれほど大きな問題ではない。金 融業が安定したビジネスだと考えている者はいないはずだ。問題は次に何が起 こるかだ。単なる一時的な落ち込みなのか、それともターニングポイントなの かということだ。

ターニングポイント

高級品市場の動向は、すでにターニングポイントに達したことを示唆して いる。英不動産仲介フランク・ナイトによれば、ロンドンでは高級住宅価格の 上昇が一服し、ボーナス減少に伴い、今後は大きな値上がりが見込めないとし ている。大幅に値上がりしていた最高級ワインも、値下がりに転じたとのデー タもある。こうした事実が発するメッセージはつまり、高額ボーナスの復活は すぐにはないということだ。その理由は3つある。

金融業界のイノベーション、つまり技術革新が枯渇しつつあるということ だ。新たな技術を駆使した巨額の資金調達や、さまざまな種類の債券を細分化 し、それを今度は新しいやり方で組成することで、銀行業界はここ数年、多額 の利益を得てきた。だが、そうした市場は、信用収縮が完全に殺してしまった。

M&A(企業の合併・買収)の大幅減少は信用収縮の2次的影響で、それ が2番目の理由となる。銀行が受け取る手数料が下がり、大規模なM&Aに伴 う債務組成に関連する収益も減少する。株式市場での投資収益が低下し、ファ ンドマネジャーが生み出す利益も小さくなる。すべてがボーナス減少につなが る。

3番目の理由は、人材獲得競争の緩和だ。ヘッジファンドやプライベート エクイティ(PE、未公開株)投資会社の爆発的な成長は、限られた優秀な人 材に対する大きな需要を意味する。企業買収ファンドは今や立ち往生しつつあ り、ヘッジファンドも同じ道をたどりそうだ。ヘッジファンドやPE投資会社 の成長が止まれば、人材需要も低迷する。その結果は報酬の伸び悩みだ。

ほぼ20年間にわたり、金融は世界で最も熱い成長産業だったが、信用収縮 がその終わりを暗示している。大半の人々や世界経済にとって、それは大した ことではない。だが金融市場で働く者にとっては大きな問題だ。今年のボーナ スを楽しむべきだ。ただ、その一部は銀行預金に回しておいた方がいい。次に 高額ボーナスを受け取るまでは、間がありそうだ。 (マシュー・リン)

(マシュー・リン氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。 このコラムの内容は同氏自身の見解です)

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