米経済:スタグフレーション再来も-信用逼迫とインフレ加速で

世界経済は、リセッション(景気後退)と インフレ加速の2つのリスクに直面している。

米JPモルガン・チェースのエコノミストによると、今年10-12月期と来 四半期の世界経済の成長率は4年ぶりの低水準にとどまる見込み。一方でイン フレ率は10年ぶりの高水準になる可能性がある。

グリーンスパン前米連邦準備制度理事会(FRB)議長は、過去16年間で 最悪の住宅不況と、銀行融資の逼迫(ひっぱく)により、米経済の成長ペース は「失速間近」の状態にあるとの認識を示す。半面、中国など新興市場国の高 成長を背景にエネルギーや食品価格は世界中で上昇している。

モルガン・スタンレーの共同主任グローバル・エコノミスト、ヨアヒム・ フェルズ氏は「先進国経済が今後直面するのは、低成長またはゼロ成長の一方 でインフレが加速するスタグフレーションだ」と語った。

ハーバード大学のマーティン・フェルドシュタイン教授は、現在の景気に ついて、原油相場が10倍になり失業率とインフレ率がともに10%を超えた1970 年代から80年代初めの世界的な不況よりも穏やかだと指摘するエコノミストの 1人。それでもFRBなど各国中央銀行は、取り組むべき問題の優先順位を決 めあぐね、苦境に立たされている。

中銀の今後の対応措置は、世界的な景気減速と物価上昇のどちらがより大 きな問題になるのかを見極める上で手掛かりになる。

先週米国で発表された11月の消費者物価指数(CPI)は、過去2年以上 で最も大幅な伸びとなったが、現在のところ先物トレーダーの間では、FRB はインフレ抑制よりも成長持続を引き続き重視していくとの見方が強い。

追加利下げ

連邦公開市場委員会(FOMC)が1月の次回会合で再びフェデラルファ ンド(FF)金利の誘導目標を0.25ポイント引き下げる確率を、投資家は14 日時点では74%とみていた。13日は100%だった。

JPモルガン・チェースのグローバル・エコノミック・コーディネーショ ン担当ディレクター、デービッド・ヘンスリー氏は「インフレ加速の一方で需 要が鈍化しているため、中銀各行には満足できるだけの柔軟性がない」と指摘 した。同氏のチームは10-12月期と08年1-3月期の世界の成長率が2.4%、 インフレ率が3.5%になるとみている。

国際通貨基金(IMF)の集計データによると、1982年の世界成長率はわ ずか0.7%。一方でインフレ率は13.7%に達していた。

フェルドシュタイン教授は14日のインタビューで「現在の数値は当時とは かなり違う」と指摘し、「1970年代遅くから80年代初めにかけての激烈な高イ ンフレ環境には戻ってはいない」と説明する。

17年ぶりの高インフレ

それでも、グリーンスパン前FRB議長は懸念を示す。16日放映のABC 放送の「ジス・ウィーク」で前議長は「スタグフレーションとなっているわけ ではないが、その初期の兆候が見え始めている」と述べ、14日付の米紙ウォー ルストリート・ジャーナル(WSJ)とのインタビューでは、金融政策を取り 巻く環境について「わたしが経験したよりもかなり困難な状況だ」と指摘した。

今年1-11月の米CPIは前年同期比4.2%上昇と、昨年1年間の2.5%上 昇を上回る伸び。12月もこのペースが続けば、今年1年間の実績は17年ぶりの 高インフレとなる。

ニューヨーク連銀の元調査担当ディレクターで、現在はブランダイス大学 で国際経済学の教授を務めるスティーブン・チェケッティ氏は、発表されてい る経済指標の「数字は恐ろしい」と語った。

懸念は米国だけのものではない。欧州のインフレ率も先月には、食品価格 の高騰を受けて2001年5月以来の高水準を記録。 オーストリア中銀のリープ シャー総裁は14日、「原油価格ブームと上昇する食品価格が、今年夏以降の物 価上昇ペースを加速させたのは明白だ」との見方を示した。

フェルドシュタイン教授は、スタグフレーションについて「どのように定 義したいかによる」とした上で、「3.5%のインフレ率とリセッションの組み合 わせをスタグフレーションと言うなら、その可能性はある」と語った。

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE