東京外為:円が安値もみ合い、短観悪化で売りも米物価指標を警戒

東京外国為替市場ではドル・円相場が1ド ル=112円台半ばを挟んで、11月9日以来、約1カ月ぶりの円安値圏でもみ合 った。日本銀行が発表した企業短期経済観測調査(短観)が弱めの内容となっ たことから、午前の取引ではドル買い・円売りが進む場面が見られた。しかし、 この日の米国時間に発表される物価関連指標でインフレ懸念が強まれば、利下 げ期待の後退から米株が下落する可能性があり、リスク回避に伴う円の買い戻 しが警戒された。

みずほコーポレート銀行国際為替部の前田隆参事役は、短観の結果を受け て、112円台後半までドル高・円安が進んだものの、同水準では国内輸出企業の ドル売り需要が待ち構えていたことから、ドルの上値が抑えられる格好になっ たと説明。こうしたなか、米消費者物価指数(CPI)の発表を控えて、「強め の内容となった場合は、米金融当局による利下げ継続の可能性に疑問符が付き、 株に売り圧力が出ると、再び円高の芽が生じる可能性がある」とみている。

112円66銭まで円下落

早朝から1ドル=112円台前半でもみ合っていたドル・円相場は、短観発表 直後に円売りが進み、いったん112円46銭(ブルームバーグ・データ参照、以 下同じ)まで円が軟化。その後は売りがやや鈍ったものの、大企業の景況感悪 化にもかかわらず、日本株が反発して取引を開始したことから、投資家のリス ク許容度回復も連想され、午前10時15分すぎには112円66銭まで円が水準を 切り下げた。

しかし、112円台後半からは国内の輸出企業を中心としたドル売り需要が控 えているとの観測もあり、午後の取引では株の伸び悩みも相まって112円台前 半までドルが軟化してもみ合った。

ユーロ・円相場は一時1ユーロ=164円65銭と、前日のニューヨーク時間 午後遅くに付けた164円21銭からユーロ高・円安が進行。その後は164円台後 半から半ばを中心に推移した。

三菱UFJ信託銀行資金為替部の井上英明グループマネージャーは、「サブ プライム(信用力の低い個人向け)住宅ローン問題を背景とした米景気の悪化 懸念については過去数カ月で相当程度織り込まれているため、今後は市場の焦 点が欧州や日本など周辺諸国への影響にシフトしていく可能性がある」として、 短観が弱含みとなれば、円売り圧力につながるとみていた。

企業景況感が悪化、日銀は「当面動けない」

日銀がこの日の午前8時50分に発表した12月調査の短観は、大企業・製 造業の業況判断指数(DI)がプラス19と、前回の9月調査時から4ポイント 悪化。今年3月調査以来、3期ぶりの悪化となったうえ、ブルームバーグ・ニ ュースがまとめた市場予想の21も下回る結果となった。

バンク・オブ・アメリカグローバル為替・金利・商品戦略部の藤井知子日 本チーフエコノミスト兼ストラテジストは、短観の結果を受けて、「日銀は当面 動けないとの見方から、円を買う理由はなく、不安定な投資環境が落ち着けば、 円キャリートレード(低金利の円で調達した資金を高金利通貨などに投資する 取引)の再開が意識されやすくなる」とみている。

また、2007年度の設備投資計画(含む土地投資額)は、大企業・全産業が 前年度比10.5%増と、前回調査時の同8.7%増から上方修正されているが、「今 強く見えているところも、いずれ弱くなる危うさが残り、センチメントが下期 の企業業績に弱気だと、一見強そうな設備投資計画も持たない可能性がある」 (藤井氏)という。

米指標強含みでドル買い戻しもCPI警戒

一方、13日に発表された米経済指標は、11月の小売売上高が市場の予想を 上回り、前月から大きく伸びが加速。また、8日までの1週間の新規失業保険 申請件数は前週から減少し、サブプライム問題を背景とした景気の悲観論がや や緩和する格好となった。

さらに、11月の米生産者物価指数(PPI)は総合指数が34年ぶりの大幅 な伸びとなるなど、物価の強含みも示され、前日の米国債券市場では10年債の 利回りは4.16%に上昇した。市場では、米国の強いデータとインフレ懸念で、 思い切った利下げはできないとの見方が広がり、短期的には金利面でのドル売 り圧力緩和につながっている。

前日のニューヨーク外為市場では、高金利通貨に対して膨らんでいたドル 売り持ち高を解消する動きが進行。ユーロ・ドル相場は一時1ユーロ=1.4577 ドルと、6日以来、約1週間ぶりの水準までドルが値を戻した。この日の東京 市場では1.46ドル台前半から半ば付近で推移した。

ブラウン・ブラザーズ・ハリマン外国為替部の久保信明バイスプレジデン トは、米欧の中央銀行による流動性供給が発表されたことに続き、米指標が強 めに出たことで、米国の小幅利下げが結果的に妥当性を帯びるものとなったと したうえで、「多少なりとも信頼回復につながっていることがドルをサポートす る要因になっている」と説明。米指標を見ると、先々の利下げをどんどん織り 込んでいくという状況ではないと付け加えた。

こうしたなか、この日の米国時間には11月のCPIが発表される。ブルー ムバーグ・ニュースがまとめた市場予想では、総合指数で半年ぶりの高い伸び が見込まれている。

前日の指標強含みでは、米金利の先安観修正がドルの買い戻しにつながっ たが、さらにインフレ懸念が強まって、株の下落に強く反映された場合は、リ スク投資収縮に伴う円の買い戻し圧力につながる可能性がありそうだ。

--共同取材:柿崎元子 Editor:Masaru Aoki, Norihiko Kosaka

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