次期日銀総裁に4条件、日本経済に政策ミス4姉妹-フェルドマン氏(2

「次の日本銀行総裁には経済に精通し、市場 との対話に長けているなど4つの資質が必要だ。2008年は消費者金融・金融商 品取引・建築基準の規制強化という『政策ミス3姉妹』の悪影響に、総選挙をに らんだ「バラマキ」や構造改革の遅れという第4の要因も加わり、成長が大幅に 鈍化。政治的な混乱が収束するまで対日投資は期待できない」――。モルガン・ スタンレー証券のロバート・フェルドマン経済研究主席は、来年の日本経済に悲 観的な見方を示した。

インタビューは10日に行った。フェルドマン氏は、来年3月に任期満了を 迎える福井俊彦総裁の後継者に求められる資質として、①マクロ経済に精通して いる②地方経済を熟知している③市場との対話に長け、他国の総裁と英語で議論 できる④金融市場で働いた経験を持つ――の4点を挙げた。

その上で、次期総裁選びは「かなり難しい議論になる」と予想した。同人事 は衆参両院の同意を必要とするため、政権与党の自民・公明両党と参院第一党で ある民主党の両方が受け入れ可能な適任者を探すことになるが、福井俊彦総裁の 任期満了までに決まらない可能性もあると指摘。その場合、金融政策運営に波乱 は起きないとしても、「一流の中央銀行としては恥ずかしいことだ」と述べた。

政策ミス3姉妹プラス1

モルガン・スタンレー証券は11日、08年の国内実質成長率見通しを1.9% から0.9%へ大幅に下方修正した。世界経済全体では同4.6%から4.3%へ、サ ブプライム(信用力の低い個人向け)住宅ローン問題の影響が懸念される米国で さえ、同1.8%から1.1%への修正にとどまっている。

フェルドマン氏は、日本経済を取り巻く海外要因について、原油高やサブプ ライム問題など「国際的な環境が思った以上に悪化している」と指摘。ただ、国 内の「政策ミス3姉妹」が08年まで経済成長を下押しするとも強調した。消費 者金融に対する規制強化で、零細企業などへの貸し渋りが発生。新たな金融商品 取引法の施行をきっかけに、国内投資家の海外資産購入が減って、円高を誘発。 改正建築基準法による建設投資の減少も長引くという。

さらに、総選挙をにらんで勢いを増す歳出の「バラマキ」志向や構造改革の 遅れという「さらなるミス」が予想されるため、海外勢の対日投資は減り、日本 経済の大幅な減速は避けられないとの見方を示した。

バラマキ大連立

フェルドマン氏は、08年度予算編成や税制改革は「バラマキ」色が強く、 財政規律が失われており、「非常に残念なことだ」と語った。自民党が1兆8000 億円規模の補正予算と1兆円前後の歳出不足にもかかわらず国債を追加発行しな いから大丈夫だというのは「ドラえもん的」(空想世界的)であり、民主党は15 兆円の無駄遣い撲滅を掲げる一方で、ほぼ同額の歳出増を計画していると批判し た。

衆参両院で与野党の勢力が逆転した「ねじれ国会」であるため、自民・民主 とも「自分の支持層にお金をばらまくため、相手の支持層にも少しはばらまかな くてはならない」という大連立状態になっていると指摘。「全く規律がない状 態」に陥っており、健全な予算編成は望み薄との見方を示した。

税制改革に関しても、消費税率の引き上げを歳出削減と切り離して考えるの は「バラマキを継続するような議論で、非常に不健全だ」と批判。高齢化時代に 適した税制とするため、納税者番号制度の導入による遵法性の強化や簡素化・効 率化、労働人口の減少を補う経済効率の重視が不可欠だと強調した。

政界再編は不可避

05年9月以来の総選挙もあり得る来年の政局について、フェルドマン氏は 「100%不透明だ」と述べる半面、今の政党と政策は整合的でないため、政界再 編に「ならざるを得ない」と予想した。

現在の政界では3つの「イデオロギー」が競争していると分析。大きな政府 と消極的な外交を志向する「古い左翼」、大きな政府と積極外交を採る「古い右 翼」、小さい政府と積極外交を掲げる「新しい右翼」の3つを挙げた。こうした イデオロギーを持つ政治家が各政党に分散しているため、自民・民主とも「イデ オロギー的に意味がない、塊」に過ぎないと指摘。政党の勝敗が日本の将来をど う変えるか、有権者に分からないとの問題点を強調した。

フェルドマン氏は、3つのイデオロギーを支持する「国民もだいたい三等分 になっている」ため、政界再編後の合従連衡の結果、どういう政権ができるかは 「全くわからない」と述べた。このような状況下では、政治的な不透明さを嫌う 海外投資家は国内資産の購入を手控えざるを得ないと指摘。日本の金融市場への 影響は「すでに大きい」し、「さらに大きくなっていく」と予想した。

日銀が14日発表する企業短期経済観測調査(短観)のポイントは「企業の 心理」だと、フェルドマン氏は語った。大企業が来年度の設備投資計画にどの程 度前向きか、原油価格の高騰を背景に大企業と中小企業の景況感格差がどこまで 広がっているか、を注目点に挙げた。

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE