東ソー:アジア最大規模の生産拠点へ1000億円投資-MDI増産で攻勢

山口県南陽市に基礎化学原料の生産拠点構築 を進めている総合化学メーカーの東ソーグループは、ポリウレタンの主原料であ るイソシアネート(MDI)やカ性ソーダの各事業でアジア市場に攻勢をかける。 総工費1000億円を投じた同生産拠点の2期工事が来年9月に完成する予定。同グ ループは両事業ともアジア最大級の生産能力を持つことになり、市場シェアの拡 大を目指す。

両事業のうち、MDIの生産設備が11月に完工。田代圓会長兼最高経営責任 者(CEO)は11日29日の完工式で、「1000億円投資によりアジア市場で本格 的に戦う土壌が整いつつある」と語り、今後はこの能力増強をテコに国際競争を 勝ち抜くとの決意をあらためて強調した。

「チェーン」構想強化で国際競争勝ち抜き

南陽事業所で生産しているのは、カ性ソーダ、MDIのほか、塩ビモノマー、 MDIの原料となるアニリンなど。塩ビモノマーはすでにアジア最大級の生産能 力を持つ。カ性ソーダなどの基礎原料事業は同社の全売上高の25%程度を占め、 機能商品、石油化学事業と並ぶ柱の1つ。東ソーは、工場で精製されるさまざま な化学物質を無駄なく他製品の製造工程に流れるように循環させる「ビニル・イ ソシアネート・チェーン」構想を推進。同事業所で稼働している循環システムを 一層強化してコスト低減に努め、競争力を高める考え。

地理的にも南陽事業所は、半径1000キロメートル圏内に東京、中国の上海、 韓国のソウルが入り、中国の北京、広州などおう盛な需要の地域も2000キロ以内 と比較的近いことが強みだ。同事業所の生産管理グループリーダー岩本紀明氏は 「アジアの拠点にふさわしい場所にあり、地の利を生かしたい」と述べた。

岡三証券の吉田正夫アナリストは、同社の大型投資について「成長が期待で きるアジア市場に存在感を示すためには必要」との見方を示した。明和証券の矢 部靖夫顧問も「プラントを集約しているため化学物質の運搬を含めあらゆる点で 効率的」と循環システム構築を評価。さらに「スケールメリットがあり人件費の 安いアジア諸国との価格競争においても負けない水準を維持できる」と指摘した。

MDI生産能力でアジア最強に

MDIから作られるポリウレタンは自動車シートやクッション、建材、家電 の断熱材など用途が広く、ほぼあらゆる業種で使用されている。東ソーの推定に よると、全世界の市場規模は350万トン超。アジア市場はその3分の1で、年 10%以上の伸びを予想している。

MDI設備の完成によって、子会社、日本ポリウレタン工業の生産能力がそ れまでの年20万トンから40万トンへと倍増した。MDIに関連した投資額合計 は540億円と総投資額の過半を占めている。11月時点で、これまでアジアで生産 能力が最大だったのは中国の煙台万華ポリウレタン社の34万トン、2位は中国S LICの24万トン。日本ポリウレタンは3位だったが、2社を抜きトップに立っ た。フル稼働した場合、アジアでの全生産の約3割、世界でも約10%を占めるこ とになる。

座しては「シェアとられるだけ」との声

大和総研の竹内忍アナリストは、東ソーグループのMDI生産について市況 の変動を受ける点が懸念材料としてはあるものの「他社に先駆け増産したことで 早いタイミングで顧客を獲得することが可能となった」と述べた。

中国、韓国勢も能力増強を進めているもようで、韓国の錦湖三井も09年に年 7万トンから13万トンへ、煙台万華は生産能力を年34万トンから2010年に80 万トンへとそれぞれ拡大させる見通し。煙台万華が再びトップシェアを取り戻す 計画を示しており、抜きつ抜かれつのシェア競争が続きそうだ。

野村証券金融経済研究所の西村修一アナリストは、アジアでの需要は依然強 く「東ソーが増産しなければ中国などの海外企業にシェアをとられるだけ」と指 摘。東ソーの南陽事業所の寺尾学副所長は、アジアでMDIが年率10%以上の伸 びが見込まれる状況の下で「アジア最強となる製造能力を確保する意味は大き い」と強調した。

一方、カ性ソーダの生産設備は08年9月をめどに完成する計画。65億円を 投じて年間生産能力を現在より16%増の111万トンに増強する。中国や台湾、韓 国などのアジア主要国の生産能力は、東ソーの推定で2000万トン程度という。台 湾石化(FPC)が年150万トンの生産能力を保有し、アジアで最大。東ソーグ ループの規模は、設備増強によって台湾石化に迫り、カ性ソーダでも売り上げを 伸ばす方針だ。

業績好調で収益過去最高だが

同社の9月中間期連結決算は純利益が前年同期比30%増の149億円、売上高 が同6.8%増の4000億円だった。原油価格が高騰したが、製品価格への転嫁が比 較的スムーズだったことが寄与。さらに円安による為替差益も利益を押し上げ、 1935年の創業以来中間期として収益は過去最高を更新した。

東ソーは中間業績発表時に、2008年3月期連結利益予想を引き上げた。営業 利益は同4.5%増の630億円、純利益も同1.8%増の290億円とそれぞれ過去最高 を予想している。

足元の業績は好調だが、東ソーの株価は10月18日に825円の高値を付けた あとは下落基調をたどり、11月22日には507円と年初来安値を更新した。ブル ームバーグ・プロフェッショナルによると、東ソーの株価収益率(PER)は7 日現在9.88倍と基礎化学セクター20社のPER16.05倍と比べて割安な水準。

原油高騰とサブプライム

原燃料価格の高騰とサブプライム(信用力の低い個人向け)住宅ローン問題 の影響で住宅着工に陰りが見えてきた点が、懸念材料として浮上してきた。同社 の石川克美取締役は中間決算発表の席上で「サブプライム住宅ローン問題の影響 などによる米国経済動向が業績に与える要因は下期も未知数」と述べた。

加えて、アジア市場に向けた積極策による負担増を心配する向きもある。投 資顧問のマーケット・アンド・テクノロジーズの内山俊隆氏は、積極的な設備投 資の半面、償却負担が来期にかけて増すことに懸念を示している。それが株価に 影響している可能性もある。能力増強戦略による減価償却という減益要因が想定 されるため、東ソーの収益は「2009年3月期に踊り場を迎える」(リーマン・ブ ラザーズ証券山田幹也アナリストの最新リポート)ことも予想される。

東ソーの株価は前日比18円(3.4%)高の545円(午後1時13分現在)。

--共同取材:松井玲 Editor:Tetsuki Murotani Yoshito Okubo

参考画面: 記事に関する記者への問い合わせ先: 東京 松田 潔社 Kiyotaka Matsuda +81-3-3201-8694 kmatsuda@bloomberg.net

Akira Matsui Masao Yoshida Kiyotaka Masuda Mikiya Yamada Noriaki Iwamoto MADOKA TASHIRO

東ソー 4042 JP <Equity>

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE