日銀短観:企業の業況判断DIは軒並み悪化へ、日本経済に内外で逆風

日本銀行が14日発表する企業短期経済観 測調査(短観、12月調査)では、企業の業況判断指数(DI)が軒並み悪化す るとみられている。米サブプライム(信用力の低い個人向け)住宅ローン問題の 影響が拡大しており、米国経済の下振れリスクが高まっている。国内でも中小企 業を中心に、原材料価格の上昇や改正建築基準法の施行による住宅着工の落ち込 みの影響が広がっており、日本経済は内外で強い逆風にさらされている。

ブルームバーグ・ニュースが民間調査機関19社を対象にまとめた予想(中 央値)は、大企業・製造業の業況判断DIがプラス21、大企業・非製造業はプ ラス18と、いずれも前回9月調査の実績から2ポイント悪化が見込まれている。 中小企業・製造業のDIはマイナス2、中小企業・非製造業はマイナス13と、 いずれも前回調査の実績から3ポイント悪化するとみられている。

日銀は19、20日に金融政策決定会合を開くが、政策金利は据え置かれる見 込み。米国経済の先行き不透明感が強まっているうえ、世界的に株価を含め金融 市場の動揺が続いている。為替相場も1ドル=110円前後の円高水準で推移して いる。国内では、住宅着工の急減や原材料価格の高騰により、中小企業の倒産が 増えている。日銀は当分の間、利上げに踏み切るのは困難との見方が強い。

大丈夫という人は1人もいない

みずほ証券の上野泰也チーフエコノミストは、前回9月調査以降のマクロ 経済環境について①サブプライム問題による世界的な信用不安の拡大②米国経済 の一段の悪化懸念③円高の進行④原油高⑤国内の住宅投資の大幅な落ち込み-な ど、「マイナス要因の方が明らかに多い」と指摘。さらに「海外要因だけでなく、 国内の景気悪化要因も複数浮上している」として、業況判断DIは「中小企業の みならず大企業でも、製造業のみならず非製造業でも悪化する」とみる。

福井俊彦総裁は3日午前、名古屋市で会見し、「ダウンサイド(下振れ) リスクは目先、特に海外において多少高まっている」と指摘。下振れリスクが顕 現化するか「なかなか今の段階では読めない。不確定要因としか言いようがな い」と述べた。これに先立ち行われた講演では、そうした懸念について「いずれ も最終的に大丈夫だという答えを持っている人は1人もいない」と語った。

財務省が3日発表した2007年7-9月の法人企業統計季報によると、経常 利益は前年同期比0.7%減と2002年4-6月以来のマイナスとなった。アール ビーエス証券の山崎衛チーフエコノミストは「これまで業況判断DIを支えてき た企業の増益基調に陰りがあり、悪材料が重なる中で、業況判断DIは比較的大 きく低下する可能性が高い」と予想する。

好循環が途切れるリスクも

福井総裁は3日の講演で「賃金など家計部門への波及を考えるうえで、多 くの雇用者を抱える中小企業の業況は重要なポイントの1つ」と指摘。「日本経 済は現在、生産・所得・支出の好循環メカニズムが続いている」としながらも、 「中小企業がコスト転嫁できないというのであれば、所得が圧迫され、所得循環 に少し問題が生じるリスクは認識しておかなければならない」と述べた。

BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは「原油など原材料価 格の高騰によるコストの増大によって、価格支配力の弱い中小企業では企業収益 が圧迫されている」と指摘。さらに「改正建築基準法の施行に伴う混乱によって、 住宅投資や建設投資が著しく滞り、建設・不動産セクターや建材などを生産する 製造業セクターに悪影響をもたらしている」という。

一方、2007年度の設備投資計画については、ブルームバーグ・ニュースの 調査で大企業・全産業が前年比9.0%増と、前回9月調査(同8.7%増)からわ ずかながら上方修正される見込みだ。モルガン・スタンレー証券の佐藤健裕チー フエコノミストは「国内総生産(GDP)ベースの設備投資が減速するなか、設 備投資計画も大幅減額となるかどうか」注目点としたうえで、「一部非製造業で 下方修正が見込まれる以外は、高い伸びを維持するだろう」とみている。

利上げは風前の灯に

第一生命経済研究所の熊野英生主席エコノミストは「追加利上げがどこま で延期されるかを見通すうえで、12月短観は極めて示唆的な情報になる」とみ る。「今回の短観の結果が厳しいものになれば、当面の金融政策は追加利上げに 動けないことになる」と熊野氏。追加利上げは「福井総裁の任期中は相当に困 難」で、「2008年7月まで見送られる」と予想する。

モルガン・スタンレー証券の佐藤氏は「市場環境の急変でも企業マインド は意外と打たれ強いというのがこれまでの経験則」としたうえで、短観の基本的 な姿は「前回9月からさほど変化はない」とみる。しかし、金融政策については 「仮に米国経済が後退局面に入るなかで、一段の株価急落と円の急上昇といった リスクが現実化すれば、金融緩和の検討の必要性さえ生じるだろう」とみる。

BNPパリバ証券の河野氏は「日銀はこれまで、日本経済は緩やかな拡大 局面にあり、それを可能とするメカニズムとして『生産・所得・支出の好循環が 維持される(10月展望リポート)』と述べてきた。しかし、12月短観では、日 本経済が緩やかな減速局面にあり、生産・所得・支出の好循環メカニズムがうま く働いていないことが示されるだろう」と指摘。日銀が展望リポートなどで掲げ ているシナリオは「風前の灯火となりつつある」としている。

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