【米経済コラム】嫌な「R」の文字が目や耳に入ってきた-C・ボーム

あちこちで「R」の文字が見聞されつつ ある。米国のリセッション(景気後退)のことだ。米紙ニューヨーク・タイム ズ日曜版は、リセッションについての見通し記事を大きく報じた。その翌日に は米紙ウォールストリート・ジャーナルがリセッションに関する記事を1面に 載せた。

サマーズ元米財務長官は26日付の英紙フィナンシャル・タイムズのコラム で、「今や米経済のリセッションの可能性が高い」と指摘し、物議をかもした。 欧州やアジアの新聞各紙も、米リセッションに関するコメントを取り上げてい る。

エコノミストらは、米金融当局者の発言にもかかわらず、12月11日の連 邦公開市場委員会(FOMC)で翌日物の政策金利であるフェデラルファンド (FF)金利の誘導目標が引き下げられることと、来年のもう一段の利下げを 性急に織り込んでいる。

クロズナー連邦準備制度理事会(FRB)理事は最近、民間の会議に出席 し、「現行の金融政策のスタンスは、今後1年間の難しい時期を経済が乗り切る 支えとなるはずだ」と言明。同理事が見込んでいる低成長を示す統計は、金融 政策が「不適切」であることを示唆することはないとも述べた。

金融当局者からのメッセージははっきりしている。来月の利下げはないと いうことだ。残念ながら、米金融当局の見解は市場とは異なる。FF金利先物 の動きは、次回FOMCで0.25ポイントの利下げがある確率を98%織り込ん でいることを示している。エコノミストらは当初、当局者の言葉を信頼してい たが、今はその視線を市場に向けている。

長短金利

こうしたリセッション懸念はすべて誇張されたもので、世界的な株安を説 明するのに都合の良いストーリーにすぎないのだろうか?米経済の動向を表す 確たる証拠は何なのか?

FF金利と10年物の米国債利回りは月平均ベースで2006年6月から逆転 している。長期金利が低水準にとどまっている背景として、中国人民銀行によ るドル関連の資産買い入れや世界的な貯蓄過剰、現在のパニック的な「質への 逃避」などが挙げられているが、どれも的外れだ。利回り曲線が発しているメ ッセージは、FRBが翌日物のFF金利を市場で決まる長期金利と比較して高 過ぎる水準に維持しているということだ。

市場からの別の厄介なシグナルもある。高利回り債と米国債の利回り格差 (スプレッド)が今年6月以降、倍以上の約500ベーシスポイント(bp、1 bp=0.01%)となっていることだ。

ノーザン・トラストの経済調査ディレクター(シカゴ在勤)、ポール・カス リエル氏は、「信用スプレッドは一般的に遅行指数に準じる」と説明した上で、 スプレッドが拡大したという事実が既に米経済がリッセッション入りしている ことを示唆しているのかもしれないと話す。

ほかに懸念すべき兆候は、米民間調査機関コンファレンス・ボードがまと める米景気先行指標総合指数(LEI)だ。LEIは、2年間という前例のな い長期にわたり横ばい基調となっている。コンファレンス・ボードのエコノミ スト、アタマン・オズィルディリム氏は、「米経済が今後、大きく上向く勢い」 を持っていないことをLEIの動向が示しているのだと指摘する。同氏の見方 では、これはリセッションのシグナルではないものの、米経済のリスクを鮮明 にしている。

LEI

LEIの6カ月間の変化率(年率換算)は、1年半にわたりゼロ付近だ。 オズィルディリム氏がリセッションを示すシグナルの分岐点と見なしているマ イナス4-4.5%からは程遠いが、LEIの最近の傾向は勇気付けられるもので はない。LEIは8月と10月に急落。住宅価格下落やデフォルト(債務不履 行)率の上昇、消費者信頼感指数の低下、貸し出し基準の厳格化は、景気の腰 折れを証明するものなのかもしれない。

カスリエル氏は、「銀行は既存の融資を回収し、新規融資を行っていない。 銀行は誰も欲しがらない資産を買い入れている」と述べている。こうした状況 は、健全な経済が進む過程であるとはとても言えない。 (キャロリン・ボーム)

(キャロリン・ボーム氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストで す。このコラムの内容は同氏自身の見解です)

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