JT:加ト吉を買収へ、TOBで-日清食と冷凍食品事業を統合(6)

たばこ販売世界3位で食品など事業の多角 化を進めているJTは22日、即席めん国内最大手の日清食品と共同で冷凍食品 国内最大手の加ト吉を買収し、3社の冷凍食品事業を統合すると発表した。JT、 日清食は買収で冷凍食品事業を強化し、JTグループの冷凍食品事業は国内最大 級になる。加ト吉は不正会計で落ち込んだ事業の立て直しを図る。

まずJTが加ト吉をTOB(株式公開買い付け)によって全株を取得した後、 日清食に加ト吉株式49%を譲渡する予定。JTの最終的な出資比率は51%とな る。TOBは1株710円で実施し、買付総額は1092億円。TOBの期間は11月 28日から12月26日まで。

3社は同日午前、都内で会見を開いた。JTの木村宏社長は「各社の強みを 生かし、製造から販売まで理想的なバリューチェーンの構築が可能となる」と述 べ、「格段に強い企業体が作れる」と3社による事業統合の意義を強調した。事 業統合によるシナジー(相乗効果)や新生加ト吉の業績目標などはTOB成立後、 経営統合委員会を発足させ、今後詰めていく。

「食品事業再編のコアに」

JTの木村社長はまた、3社の事業統合を「日本での食品事業再編のコアに したい」とし、3社以外の企業の参加についても「きちっとシナジー(相乗効 果)を生み出す組み合わせなら、積極的に検討したい。国内・海外含めてアライ アンス、資本・業務提携といろいろな形を模索していきたい」との考えを示した。 日清食の安藤宏基社長も「この統合が固定的な3社に終わるものならば、話を前 に進めるつもりはなかった。食品メーカーのコアになっていくのだという強い意 志を両社から感じたので統合を決断した」と語った。

JTは2000年に加ト吉に5%出資し、冷凍食品分野で業務提携した。不正 会計で加ト吉の業績が大きく落ち込むなか、社長もJTから送り込むなどして関 係を深めていた。国内たばこ市場が縮小するなか、JTは加ト吉の買収によって 食品事業を収益の柱の1つに育てる考え。また、日清食品は即席めん製造で国内 シェア5割を超える最大手だが、加ト吉の冷凍・冷蔵めんの製造ノウハウなどを 吸収し、事業規模の拡大を狙う。3社合計での冷凍食品事業の売上高は約2600 億円となる。

加ト吉は今春、1000億円規模の「循環取引」と呼ばれる取引先との不適切 な取引に関与したことにより、前期(2007年3月期)決算で約172億円の損失 を計上。創業者兄弟で当時会長兼社長だった加藤義和氏と副社長の加藤義清氏が 引責辞任し、JT出身の金森哲治副社長が社長に昇格した。今期(08年3月 期)の連結売上高は前期比38%減の2154億円、営業利益は47%減の54億円と 業績の悪化が予想されている。

出資は今後の検討課題に

JTの木村社長はまた、日清食への出資の可能性について「今は冷凍食品事 業の統合に専念するのが大事」としながらも、「冷凍食品事業以外でも、可能性 があればお互いに議論、検討していく余地はある」と話した。

会見に同席した日清食の安藤社長は「株保有の話はしているが、業務を進め ていくなかで今すぐ保有することはインサイダー的な問題もあるとの見方もあり、 即座にはない」とした上で、「将来ともども考えていくのが良いと思う。個人的 には信頼関係があるため、そのなかで築いていけばいい」との考えを示した。一 方、日清食の筆頭株主は米系投資ファンドのスティール・パートナーズ(約 18%を保有)だが、「今回の案件でスティールの指示はない」と述べた。

JT食品事業強化

新生証券の宮川淳子シニアアナリストは「たばこ以上に利益の出るビジネス は難しく、JTの多角化戦略はあまり成功していない。その意味で冷凍食品も事 業としてプラスの評価をしにくいが、たばこに依存しすぎないというリスク分散 の意味では消極的選択として妥当」と述べた。また買収の規模については「不祥 事はあったが加ト吉の冷凍食品事業は悪くはないので、1000億円程度の投資と しては悪くない買い物。回収期間も比較的短くて済みそうだ」との見方を示して いた。

JTは中期計画で海外たばこ・食品事業を中心にM&A(企業の合併・買 収)を実施する方針を打ち出している。今春には2兆円超を投じて英ギャラハー を買収するなど海外たばこ事業の強化は進めていたが、食品分野では出遅れてい た。少子高齢化で国内食品市場が縮小するなか、冷凍食品は数少ない成長市場と の期待が大きく、加ト吉の取り込みは食品事業の成長への一歩につながる。

JTの2007年3月期(前期)の全売上高のうち、食品事業はわずか6%の 2865億円。JTの食品事業と日清食の冷凍食品事業、加ト吉の前期売上高実績 を単純合算すると約6500億円となり、今期(08年3月期)予想をベースにした 売り上げ構成比は10%に上昇する。

新生加ト吉、冷凍食品に集中

新生加ト吉では、自社の原料調達力、製造・販売基盤などに、JTの研究開 発力や日清食品の商品開発力、安全・安心体制やブランド力などを生かしながら 相互に補完し合う。社長は現加ト吉社長である金森氏が続投する。金森社長は、 4月の社長就任以来、冷凍食品メーカーとして原点回帰する経営方針を強調して きた。

加ト吉は、居酒屋「村さ来」などの外食チェーン事業については今後、良い 相手が見つかりしだい、売却していく方針。またグループ企業が運営するレジャ ー施設やホテル事業については、地域貢献の面なども考慮に入れる考えを示した。

株価終値は、JTが前日比7000円(1.1%)安の63万3000円、日清食が同 100円(2.5%)高の4100円。加ト吉は同100円(17%)高の694円とストップ 高(値幅制限いっぱいの上昇)比例配分で終了した。

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