【米経済コラム】ドルに取って代わる通貨はどこにある-J・ベリー

米ドルは依然として世界の金融システムの 中心にあり、その重要性は色あせていないにもかかわらず、逆の見方がむやみ に強調されている。ドルの現実が見失われているのは、ドルの価値の下落、特 にユーロに対する下落に多方面から不満の声があるためだ。

それでもドルは外国為替市場を引き続き支配しているし、米金融市場は世界 で最も規模が大きく流動性がある市場であり、米国債は世界一リスクが低い投 資対象だ。もちろん米市場は、外国企業が昨年2兆2000億ドル(約241兆円) を超える財・サービスを供給した世界最大の市場だ。

こうした現実を無視するベネズエラのチャベス大統領は、サウジアラビア で開かれた11月18日の石油輸出国機構(OPEC)首脳会議の終了後、「ドル 安はドルの下落ではなく、米帝国の没落だ」と冷笑した。

これよりも真剣ではあるが、的外れな発言はトリシェ欧州中央銀行(EC B)総裁が今月、ドルの対ユーロでの下落は「荒々しい」と述べ、こうした動 きは「決して歓迎できない」と述べたことだ。サルコジ仏大統領も11月7日、 米議会に対して米国がドルを支えなければ、貿易戦争が始まりかねないと警告 した。

米国の多額の経常赤字など、世界経済の「不均衡」を是正する必要性を再 三にわたって指摘してきたトリシェ総裁はどうやら、ユーロ圏諸国の今年1- 9月期の対米貿易黒字が昨年から減少した事実を見落としたようだ。これは疑 いなくドルの下落が要因だ。

サルコジ大統領の回答

サルコジ仏大統領も、米国の対仏貿易赤字が10億ドル増加して102億ド ルに達したことを見落としている。確かに貿易戦争だ。サルコジ大統領は米国 にドルの下支えで何をさせたいというのか?米金融当局は現行4.5%の政策金 利をドル相場てこ入れのために引き上げる考えはない。ユーロが高くなり過ぎ たという理由から、サルコジ大統領がECBによる利上げに反対してもうまく いかなかったのは当然だろう。

ジョークと言えば、アトランタ・ジャーナル・コンスティチューション紙 のマイク・ラコビック氏の風刺画が18日付のニューヨーク・タイムズ紙に転載 されたが、あまり笑えない冗談だった。ポールソン米財務長官がブッシュ米大 統領の執務室を訪れて「給料をユーロ建てでもらえますか」と聞く場面が描か れている。

ユーロ建ての支払い

実際、航空機用シートの製造で欧州最大手のゾディアックはユーロ建てで 代金を受け取りたい考えだ。同社は米ボーイングと欧州エアバスという世界の 2大航空機メーカーに製品を販売している。ボーイングがドル建てでの支払い にこだわるのは全く驚きではないが、エアバスもドル建てを望んでいる。エア バスの売り上げの非常に多くの部分がドル建てとなっているためだ。

米市場は重要性が高いため、多くの対米輸出企業は通常、製品価格をドル 建てとしており、どんな為替リスクがあろうと受け入れている。現状では、輸 出企業の多くが市場シェアを維持するために利益率の悪化に甘んじている。ド ルはやはり世界の金融取引の中心にあるのだ。

例えば、ドルは今年4月の外為市場一日平均売買高(3兆1000億ドル)の

86.3%に関与した(国際決済銀行調査)。一方、高く評価されているユーロは、 全取引のわずか37%にかかわったにすぎない。重要性が低下しつつある円は

16.5%、英ポンドは15%だ。各取引には2つの通貨が必要となるため、各通貨 の割合の合計は100%ではなく、200%になる。

誇張されたドル安感覚

ドルとユーロのクロスレートに注目し過ぎると、ドルの価値が下落したと いう感覚が誇張されてしまう。米連邦準備制度が算出している貿易加重平均の ドル指数は今月の平均が86.83で、2006年11月から8.4%の下落にとどまる。 これに対し、ドルの対ユーロ相場は過去1年間で14%値下がりした。

ドル指数の最近の下落は、前例がないものではない。1973年3月を100 とする同指数は、1990年以降では95年7月に84.23まで低下したが、02年2 月には112.84まで上昇した。

OPEC首脳会議でチャベス大統領とイランのアハマディネジャド大統領 は、米ドル以外の通貨で原油価格を設定することを検討すべきだと主張したが、 議論は進展しなかった。たとえOPECが転換したとしても、どんな影響が出 るかは不明だ。

OPECがユーロ建ての支払いを要求した場合、買い手はドルをユーロに 交換して代金を支払うだろう。仮に外貨準備が積み上がっている石油輸出国が ユーロ建てでの運用拡大を決断するなら、ユーロ建てで原油価格を設定しなく ても簡単にそれを実行することができるだろう。 (ジョン・ベリー)

(ジョン・ベリー氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。 このコラムの内容は同氏自身の見解です)

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