武藤日銀副総裁:下振れリスクは十分認識、事態は複雑で困難-会見

日本銀行の武藤敏郎副総裁はブルームバ ーグ・ニュースの単独インタビューで、「日本経済は引き続き緩やかに拡大して いくというのが最も蓋然(がいぜん)性の高い見通しであり、金融政策にもし何 らかの変更があるとすれば、方向としては利上げ」としながらも、米国経済や国 際金融市場の影響など「下振れリスクがあることは十分認識している」と指摘。 「事態は非常に複雑で、なかなか困難な状況にある」と述べた。

武藤副総裁は来年3月に任期が終了する福井俊彦総裁の最有力後継候補。 ブルームバーグ・ニュースがエコノミストを対象に行った直近の調査でも、16 人中15人が次期総裁として武藤副総裁を予想した。武藤副総裁はこれまでの4 年半を振り返り、「与えられたポストを天職と考え、そのポストで職責を全うす るため、全力投球を行うという気持ちでずっとやってきた」と語った。

日銀は2月に政策金利を0.5%に引き上げて以来、今月13日の金融政策決 定会合まで金利を据え置いている。米サブプライム(信用力の低い個人向け)住 宅ローン問題に端を発した国際金融市場の混乱が長引いているのに加え、米国経 済の先行き不透明感も強まっており、利上げは当面困難との見方が強い。

コアCPIは年末から年初にプラスに

武藤副総裁は15日に行ったインタビューで、まず日本経済の現状について 「一口で言えば、引き続き緩やかに拡大しているというのがわれわれの判断だ。 7-9月実質国内総生産(GDP)成長率は前期比年率2.6%となり、われわれ のそうした見方を裏付けた」と指摘。先行きについても「生産、所得、支出の好 循環のメカニズムが維持されるなかで、物価安定の下での息の長い成長を続ける 蓋然性が高いと判断している」と述べた。

消費者物価指数(生鮮食品を除く、コアCPI)の前年比上昇率は9月ま で8カ月連続でマイナスが続いているが、同月の国内企業物価指数は同2.4%上 昇した。武藤副総裁は「コアCPIは年末から来年初めにかけて、わずかかもし れないがプラスの領域に入ってくる可能性が高い」との見方を示した。

一方、原材料価格高騰などを受けて中小企業の景況感が悪化しており、10 月の企業倒産件数(東京商工リサーチ調べ)は同8.0%増加した。武藤副総裁は 「原材料価格上昇を製品価格に転嫁しにくい状況があるので、中小企業の景況感 が大企業と比べてやや弱いのは確かだが、現時点では中小企業の利益水準は十分 高いという面もある」と述べた。

米国経済が一段と下振れるリスクも

改正建築基準法の施行により住宅着工も落ち込んでいる。武藤副総裁は 「住宅投資の減少は非常に急激だが、原因ははっきりしている。あくまで手続き の問題であり、その手続きも改善すると聞いている。一定期間が経てば、いった ん下がったものはその後、上乗せされる筋合いのものだ」と指摘。「この問題が 全体を見えにくくしているのは事実だが、2007年度、08年度をならしてみれば、 日本経済全体で2%成長が可能」との見方を示した。

一番の心配は米国経済と金融市場の動向だ。武藤副総裁は米国経済につい て「住宅投資が減少を続けており、住宅販売の減少、住宅の在庫が積み上がる傾 向が鮮明になっている。米連邦準備制度理事会(FRB)が最近まとめた銀行貸 出調査を見ると、貸出基準がタイト化している。住宅向けだけでなく、商業用不 動産や一般企業、消費者向け貸出基準のタイト化が観察される」と指摘した。

武藤副総裁はそのうえで「住宅市場の調整が一段と厳しいものになった場 合や、国際金融資本市場の変動の影響が予想以上に広範囲にわたる場合、マイナ スの資産効果や信用収縮、マインド悪化を通じ、個人消費や設備投資が下振れる 可能性も考えられる」と指摘。「米国を含めた海外経済や国際金融市場の動き等 も頭に入れ、適切な金融政策運営を行っていかなければならない」と語った。

上下のリスクを丹念に点検

日銀は下振れリスクを指摘しながら、引き続き利上げの必要性を訴えてお り、このまま利上げできなければ「狼少年」になり信認を失うとの声もある。武 藤副総裁は「日本経済は引き続き緩やかに拡大していくというのが最も蓋然性の 高い見通しであり、金融政策にもし何らかの変更があるとすれば、方向としては 利上げということはだいたいご理解いただいているのではないか」と述べた。

そのうえで「米国の住宅市場の調整が一段と厳しいものになった場合、あ るいは金融市場の変動の影響が予想以上のものとなった場合、下振れのリスクが あることは十分認識している」と言明。一方で「低金利が経済・物価情勢と離れ て継続するという期待が定着すると、経済・物価の振幅が大きくなったり、非効 率な資源配分が生じたりするリスクがある」と語った。

武藤副総裁はさらに、「いろいろなリスクがあるので、そういう上下両方 のリスクを丹念に点検しながら、金融政策を運営する必要があると申し上げてい る。ただ、グローバルなメカニズムのなかでのリスクなので、事態は非常に複雑 で、そう単純ではない。なかなか困難な状況にある」と指摘。金融政策をめぐる 判断が非常に難しい局面に入っているとの認識を示した。

「中央銀行マンになりきっていた」

武藤副総裁は日銀が現在1.2兆円ペースで行っている中長期国債の買い入 れについては「円滑な資金供給という金融市場調節上の必要性に基づいて実施し ている」と指摘。先行きについても「結論的には当面変えることはない。金融市 場調節を円滑に遂行していくという観点に立って、もし何らか変更をするときは、 市場の予測可能性にも配慮する必要がある」と語った。

武藤副総裁は就任当時、財務省出身のため政府寄りのバイアスがあるので はないか、という見方が市場に根強くあった。武藤副総裁は「前にこういうポス トにいたから、今のポストでの判断が変わるなどということは、考えたこともな いし、現実にもあり得ない」と言明。「与えられたポストを天職と考え、そのポ ストで職責を全うするため、全力投球を行うという気持ちでずっとやってきた。 残された任期はわずかだが、同じような気持ちでやっていきたい」と述べた。

民主党の小沢一郎代表は13日の会見で、国会同意人事について「原則とし て天下りはよろしくない」と述べた。武藤副総裁はそれについても「私は元官僚 だったので、私がコメントするのは適当ではないと思う。ただ、少なくとも、私 はこの4年半、中央銀行マンになりきっていたので、官僚だったということを金 融政策の判断の基準にしたことは一度もない」と語った。

主な一問一答は次の通り。

――景気、物価情勢の現状と先行きについて、13日公表された7-9月実質国 内総生産(GDP)の評価を含めてご見解をお聞かせください。

「今まで出ているさまざまな経済データを基に一口で言えば、日本経済は 引き続き緩やかに拡大しているというのがわれわれの判断だ。7-9月実質国内 総生産(GDP)成長率は前期比年率2.6%となり、われわれのそうした見方を 裏付けている」

「世界経済は地域的な広がりを持ちながら拡大を続けている。米国経済は 住宅市場の調整が続いており、引き続き注視していく必要があるが、BRICs などその他の地域の高成長に支えられ、世界経済全体としては拡大を続けている。 その下で日本の輸出は増加を続けている」

「国内民間需要も基本的に増加している。企業収益も高水準で、設備投資 も増加している。1人当たり賃金がやや弱いというデータが出ており、原材料高 やグローバル化を背景に、特に中小企業の人件費抑制姿勢が根強いということは ある。ただ、労働需給はタイト化の方向にあるので、雇用者数は増加しており、 雇用者所得全体でみれば緩やかに増加している。こうしたことを背景に、個人消 費も底堅く推移している」

「内外需が堅調なので、生産も増加基調を続けている。ひところ在庫の増 加が心配されたが、現時点ではおおむね出荷とバランスのとれた水準にあるので はないか。特に電子部品・デバイスの在庫が一時期注目を浴びたが、最終製品メ ーカーが活発な新製品投入を続けているため、出荷が増加に転じており、在庫は おおむねバランスの取れた状態になっている」

「国内企業物価は国際商品市況高などを背景に3カ月前比で上昇しており、 恐らく先行きも国際商品市況高が続くと思われるので、上昇を続ける可能性が高 い。コアCPIは足元ゼロ%近傍で推移する可能性が高いが、長い目でみると、 いわゆるマクロの需給ギャップが需要超過方向で推移しているので、プラス基調 を続けると予想している。コアCPIは年末から来年初めにかけて、わずかかも しれないが、多少プラスの領域に入ってくる可能性が高いのではないか」

「以上のように、日本経済は引き続き緩やかに拡大を続けており、先行き についても、生産、所得、支出の好循環のメカニズムが維持されるなかで、物価 安定の下での息の長い成長を続ける蓋然性が高いと判断している」

――リスク要因として、米国経済の先行きについてご見解をお聞かせください。

「米国経済については、緩やかな調整局面が続いている。住宅投資が減少 を続けており、住宅販売の減少、住宅在庫が積み上がる傾向が鮮明になっている。 FRBが最近まとめた銀行貸出調査を見ると、貸出基準がタイト化している。住 宅向けだけでなく、商業用不動産や一般企業、消費者向け貸出基準のタイト化が 観察される。ただ、少なくとも現時点では、住宅部門の調整や貸出基準のタイト 化がその他の部門に波及しているという事実は観察されていない」

「米国の個人消費と設備投資は減速しているが、緩やかな増加基調を続け ている。米国の潜在成長率は以前と比べて多少下がっているという見方もあるが、 先行きはその潜在成長率近傍の成長パスに戻っていくとみている」

「ただ、米国の住宅市場の調整が一段と厳しいものになった場合、あるい は国際金融資本市場の変動の影響が予想以上に広範囲にわたるような場合、マイ ナスの資産効果や信用収縮、マインド悪化を通じて、個人消費や設備投資が下振 れる可能性も考えられる。その場合、米国経済は一段と減速する可能性がある」

「さらに、米国経済の減速の程度によっては、他の地域に悪影響を及ぼし、 世界経済が下振れるリスクも全くないわけではない。こういう米国を含めた海外 経済の状況、あるいは国際金融市場の動きなども頭に入れて、適切な金融政策の 運営を行っていかなければならないと思っている」

――米国経済に不安があるだけに、国内の弱い面も気になるところです。

「原材料価格の上昇を製品価格に転嫁しにくい状況があるので、中小企業 の景況感が大企業と比べてやや弱いのは確かだが、現時点では中小企業の利益水 準は十分高いという面もある」

「住宅投資の減少は非常に急激だが、建築基準法改正による手続き的な問 題が影響しており、原因は比較的はっきりしている。その手続きも改善すると聞 いているし、あくまで手続きの問題なので、一定の期間が経てば、いったん下が ったものはその後、上乗せされる筋合いのものだ。住宅投資の問題が全体を見え にくくしているのは事実だが、07年度、08年度をならしてみれば、日本経済全 体では2%成長が可能というのがわれわれの判断だ」

――国内要因が日本経済の足を引っ張る決定的な要因にならないとすれば、米国 経済と金融市場の動向を見極めたうえで、適切なタイミングで金利を引き上げて いくという方針に変わりはないということですか。

「われわれは、まず経済・物価情勢の蓋然性の高い見通しを前提に、どの 程度のリスクがあるかをよく点検して、そのうえで経済・物価全体の改善の度合 いに応じて徐々に金利を引き上げていく。したがって、そのタイミングに予断は 全く持っていないということだ」

――サブプライム問題が尾を引く中、日銀の利上げ観測が遠のいています。日銀 は景気の下振れリスクを指摘しながらも、引き続き利上げの必要性を訴えており、 このまま利上げできなければ「狼少年」になり信認を失うのではないか、との声 もあります。武藤副総裁ご自身、どのようなスタンスで次の利上げに臨みたいと お考えですか。

「日本経済は引き続き緩やかに拡大していくというのが最も蓋然性の高い 見通しなので、金融政策にもし何らかの変更があるとすれば、方向としては利上 げということは、だいたいご理解いただいているのではないか。ただ、日銀がと にかく利上げしたくて仕方がないのではないか、ということをおっしゃる人もい るが、虚心坦懐(たんかい)にお聞きいただければ、そういうことは一度も言っ ていない」

「われわれは予断を持ったり、スケジュールを決めたりせず、経済・物価 情勢の改善の度合い応じたペースで金融政策の運営を行うと繰り返し言っており、 この点にそれほど誤解はないのではないか。ただ、事態はなかなか複雑なものが あるのはご指摘の通りだ」

「1つは、米国の住宅市場の調整が一段と厳しいものになった場合、ある いは金融市場の変動の影響が予想以上のものとなった場合、下振れのリスクがあ ることは十分認識している。一方で、10月の経済・物価情勢の展望(展望リポ ート)でも指摘しているが、低金利が経済・物価情勢と離れて継続するという期 待が定着すると、経済・物価の振幅が大きくなったり、非効率な資源配分が生じ たりするリスクがあることも、われわれは繰り返し申し上げている」

「したがって、蓋然性の高い見通しは先ほど申し上げた通りだが、いろい ろなリスクもあるので、そういう上下両方のリスクを丹念に点検しながら、金融 政策を運営する必要があると申し上げている。グローバルなメカニズムのなかで のリスクなので、事態は非常に複雑で、そう単純ではない。なかなか困難な状況 にある」

――現在1.2兆円の長期国債の買い入れについては、将来的にどのように扱う べきか、ご見解をお聞かせください。

「長期国債の買い入れは円滑な資金供給という、金融市場調節上の必要性 に基づいて実施している。ただ、その買い入れに際し、先行きの日銀の資産、負 債のバランスシートの状況を踏まえて、日銀券の発行残高を上限として実施する ことになっている。今年2月に政策金利を0.5%に引き上げたとき、この長期国 債買い入れの額は当面変えないと公表した。この考え方は少なくとも現時点にお いても変わってない」

「今後どうするかについては、結論的には当面変えることはない。金融市 場調節を円滑に遂行していくという観点に立って、もし何らか変更をするときは、 市場の予測可能性にも配慮する必要がある」

――武藤副総裁には就任当初、財務省出身なので政府寄りのバイアスがあるので はないか、という見方が根強くありました。副総裁就任にあたり、金融政策運営 についてどのような姿勢で臨まれましたか。また、これまでの4年半を振り返り、 どのように評価されますか。

「2003年3月に就任したその日に米国によるイラク攻撃が始まった。非常 に緊迫した状況で、市場への資金供給を行って市場に混乱が起きないよう神経を 使った。日本経済も設備、雇用、債務の3つの過剰に苦しんでいた。株価も大き く下げていた。その後、3つの過剰の解消が進み、民需主導の回復を遂げるに至 った。その間、日銀としては非伝統的な金融政策を駆使して、日本経済の回復を サポートした」

「金融政策の透明性の向上も大きな課題だった。この問題にはなかなか簡 単な答えはないが、日銀は国民の理解と市場との対話の重要性を認識し、積極的 に取り組んできた。2006年3月には新しい金融政策運営の枠組みを導入した。 わが国の実情に合わせて工夫しており、画期的な内容だと思っている。日銀の金 融政策運営の有効性を向上させ、同時に独立性を確保しながら、物価安定の下で の持続的成長に貢献することを最大の眼目にしてやってきたつもりだ」

「私が財務省出身であるがゆえに生じるさまざまな憶測については、私自 身はそういう考え方は全く持っていない。今まで随分いろいろなポストについて、 いろいろな仕事をさせていただいた。しかし、前にこういうポストにいたから、 今のポストでの判断が変わるなどということは、考えたこともないし、現実にも あり得ない」

「ポストは任命権者に与えられるわけで、自分で決めるものでは決してな い。与えられたポストを天職と考え、そのポストで職責を全うするため、全力投 球を行うという気持ちでずっとやってきた。残された任期はわずかだが、同じよ うな気持ちでやっていきたい」

――日銀が今後、目指すべきものは何だとお考えですか。

「中央銀行としての役割は、物価安定の下での持続的な成長だ。それがわ れわれに与えられた使命だ。したがって、その使命を達成するために全力を尽く す。その際には、経済情勢をしっかり認識して、それを分析して、先行きを予測 して、そのうえでベストと思われる判断をしていくことに尽きる」

「ただ、忘れてはいけないのは、そういうわれわれの考え方について、国 民の理解を得る努力をすることが非常に大事だ。堅い言葉で言うと、説明責任と いうことになるが、その説明責任を果たしていくことが金融政策の有効性を確保 していくためにも重要だ。そういう努力を続ける必要がある」

――バーナンキ米FRB議長は14日、経済成長率や物価上昇率の見通し公表を 従来の年2回から4回に増やすほか、予測の対象期間を2年間から3年間に拡大 するなど、金融政策の透明性を高めるための追加措置を発表しました。これらの 措置をどうご覧になりますか。

「なかなか慎重に考えて結論を出されたのではないかと思う。有効に機能 することを期待したい。いくつか論点はあるかもしれないが、私が見た感じでは、 ポイントはやはり期間を3年に伸ばしたことだ。これは非常に重要な意味を持つ ように思う。見通しの公表の回数については、日銀の展望リポートは年2回だが、 中間評価も加えれば年4回になる。そういう意味では、日本では既にある程度や っていることもある」

「これもなるほど思ったのは、今回の措置はインフレターゲットという位 置付けはされていないということだ。恐らく、雇用と物価の安定という2つの使 命を念頭に置いてのことだと思うが、むしろインフレターゲットの持っているあ る部分は、米国では適切ではないかもしれないと言っている。結局、米国の置か れた環境や法律上の位置付けも含めて、FRBなりに工夫されたのだと思う」

「われわれは日本の経済、および日銀の置かれた環境のなかで、新しい金 融政策への枠組みを工夫した。外国に学ぶ姿勢は大事だと思うが、何でもかんで も導入するのは適切ではないし、むしろ問題が多い。その国、その中央銀行の置 かれた環境で、何がベストか考えていくべきだと思う。新しい金融政策の枠組み はまだ2年しか経っていないが、徐々に理解され、定着しつつあるとみている」

「ただ、常に改善の余地があるかどうか見直していくべきであり、一度つ くったらそれで変えないという性格のものでは全くない。少なくとも年一回、物 価安定の理解も見直す。状況に応じてさらなる工夫はできないか、検討は続けて いくべきだ。そして、より良い枠組みにしていく努力が必要だ。将来どうするか は申し上げることはできないが、考え方としてはそういうことだと思う」

――日銀はCPI前年比上昇率でみて「0-2%」、中心値「1%」という数字 を物価安定の理解として示しています。日銀は1%を目指して金融政策を運営し ているとの見方もありますが、そういう理解でよろしいですか。

「物価安定の理解というのは、9人の政策委員が物価の安定について意見 を表明し、0%から2%であれば皆が物価安定の理解だという数字が入り、1% あたりに意見が集まっているということを言っている。したがって、1%で皆が 合意しているということではない。その点を今後どうするかはもちろんあるかも しれないが、今の物価安定の理解というのはそういうものであり、あまり1%に 規範性を持たせるのは、われわれの考え方と違うと思う」

――政治の混乱で来年3月に新しい日銀総裁が決まらない可能性も出てきました。 こうした事態をどうご覧になりますか。

「日銀は受け身の立場であり、私どもはとやかく言う立場にはない」

――民主党の小沢一郎代表は13日の会見で、国会同意人事について「原則とし て天下りはよろしくない」と述べていますが、これについてどうお感じですか。

「私は元官僚だったので、私からコメントするのは適当ではないと思う。 ただ、少なくとも、私はこの4年半、中央銀行マンになりきっていたので、官僚 だったということを金融政策の判断の基準にしたことは一度もない」

――武藤副総裁の趣味は絵画で、日本橋三越で絵画展を開いたこともあります。 最近は筆が進んでいますか。

「海外出張などで、なかなか時間的なゆとりがなく、思ったように絵を描 く時間がとれないというのが実情だ。もちろん、やりたいという気持ちはあるの だが、なかなかできないというのが現実だ」

――武藤副総裁にとって、絵を描くことにはどのような意味があるのですか。

「絵を描くことはやはり、他の芸術的なことは皆そうかもしれないが、小 宇宙を創造することだ。極端に言えば、この世に全くないものを見せるというこ とであり、それが1つの楽しみだ。ただ、小宇宙をつくると言っても、全くの絵 空事になると説得力がなくなる。だから、そこには何がしかの説得性、他の人が みて、何かを感じる部分がなければならない。そういう微妙なところをやろうと しているが、現実問題は大変で、うまくいかないことが多い」

――趣味の絵画は仕事にも役立っていますか。

「少なくともリラックスできる。仕事の疲れを癒やすという効果はある。 絵を描くことと仕事をすることは、頭の使う部分が全く違う。右脳と左脳の違い があるので、むしろ気晴らしになる。仕事に直結する話はないが、リフレッシュ するという意味では、仕事と無縁ではないかもしれない」

――奥様の絵を描かれることもあるのですか。

「何かを記念して絵を描くときはたまにある。区切りだと思うときに、その 気持ちを形にしてみる努力は時々している。そんなときは、気持ちを込めて贈っ たと理解してもらえる。お金では買えないというところに意味があるのではない かと僕は思っている。ただ、描いているときは引きこもり状態になり、話しかけ られるとうるさいと思うこともあるので、そう単純な話でもないが」

--共同取材:乙馬真由美、藤岡徹、市倉晴美 Editor:Ozawa(Okb)

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