【米経済コラム】FOMCの経済予測拡充は混乱の源?-J・ベリー

米金融当局者らは米連邦公開市場委員会 (FOMC)でまとめる経済見通しの拡充を決め、従来のように必要最小限なデ ータのみを公表するのではなく、より詳しい内容も示すことにした。また公表の 回数も現行の年2回から、4回に増やす。

FOMCは14日、声明で今回の措置を発表し、バーナンキ米連邦準備制度 理事会(FRB)議長はワシントンでの講演でその詳細を説明した。

今回の方針転換にはインフレ目標が盛り込まれなかった。また、新たに公表 されることになった情報も、当局者らが次回のFOMCでフェデラルファンド (FF)金利の誘導目標をどうする考えなのかを判断する助けには必ずしもなら ないようだ。これまでもFOMC議事録で、経済成長とインフレのリスクや短期 的な経済見通しに関する当局者の見解について、重要な情報が得られていたから だ。

しかし詳細なデータもさることながら、新たな経済見通しの目玉は、「メン バーが最も可能性が高いとした見通しの結果のみでなく、その見通しに関するリ スクやメンバー間の意見の相違など、見通しをめぐる論議をより詳しく提供す る」説明部分になるだろう。

バーナンキ議長は講演で、「今回の変更で、FOMCの見通しについてより 時宜を得た見解を提供できるようになり、政策決定がその後に出てくる情報にど のように対応するかという点で家庭や企業が理解を深め、予想する上で役に立つ ばかりでなく、われわれの政策決定についても説明責任が強化されることにな る」と語った。

情報の洪水

その通りになるかもしれないが、ひょっとしたら家庭や企業、投資家、金融 アナリスト、FRBウォッチャーが皆、新たな情報の洪水に溺れてしまう恐れも ある。

新たに発表されるデータも、19人のFOMCメンバーの個々の一連の見通 しを集めたという点では変わりはない。この点で、イングランド銀行の金融政策 委員会(MPC)が四半期ごとにまとめるインフレ報告書のように、全員で1つ の予想にまとめ上げたものとは異なる。欧州中央銀行(ECB)は1本にまとめ た予想値を発表する。

拡充された見通しの第一弾は20日、10月30、31日に開かれた前回のFO MCの議事録の一部として発表される。公表されるのは、実質経済成長率、コア 個人消費支出(PCE)物価指数、食品とエネルギーを含む全体のPCE物価指 数の各見通しなど。10-12月(第4四半期)の失業率も公表される。全体のP CE物価指数はこれまで公表されていなかった。

FOMCでの見通しをめぐる討議がより詳しく示されるようになると、見通 しの食い違いが非常に小さい場合、一般消費者にとって混乱のもとになりかねな い。7月に発表された07年と08年の見通しの場合がそうだった。

すべての予想は、「適切な金融政策」に基づくとされているが、具体的にど のような政策なのかの説明がない。つまり、2人の当局者の成長率とインフレの 見通しが全く同じでも、想定している金利が違っているケースもあり得る。

バーナンキ議長は講演で、このように見通しを列挙することについて、「見 通しや、FOMCの目標に対するリスク、適切な政策対応に関しておおまかなコ ンセンサスを形成できる」ことから、FOMCにとっての強みとなると指摘。 「見解の多様性はFOMCが幅広いアプローチを取ることを促し、1つの見解や 分析のための枠組みに過度にとらわれてしまうリスクを抑えることができる」と 説明した。

見解の相違が明らかに

バーナンキ議長は今回の措置により、「見通しのデータに伴う説明で、FO MCメンバー間のコンセンサスおよび判断の相違点が明らかになるだろう」と語 った。

しかしながら、このように見通しを重視することは必ずしも正しいとは限ら ない。FOMCのメンバーにはエコノミストもいるものの、ほとんどが経済予測 の専門家ではないからだ。元経済学教授のセントルイス連銀のプール総裁も、 「私は予測家ではない。予測を利用する側の人間だ」と語ったことがある。

とはいえ、今回の措置はFRBの透明性を高めようとしているという点では 評価できる。

インフレ目標の断念

バーナンキ議長はインフレ目標の導入の断念について演説で、「インフレ目 標のささいな難点の1つは、まるで他の目標を排除してインフレだけに専念する かのように受け取られる点だ」と述べ、もう1つの重要目標である最大限の雇用 維持をおろそかにする印象を与えかねないとの懸念を示唆した。

失業問題を無視し、インフレのみに目標を設定すれば、民主党議員からの批 判が巻き起こることは避けられない。

ただ、経済見通しの対象期間を現行の2年先から3年先までに延長すること で、当局者らは物価安定性を維持するためのインフレ水準について強いシグナル を発することができるだろう。 (ジョン・ベリー)

(ジョン・ベリー氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。 このコラムの内容は同氏自身の見解です)

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