【米経済コラム】消費の急減もリセッションもない-J・ベリー(3)

エコノミストの中には米国の消費者が出費 を切り詰め、米経済がリセッション(景気後退)入りするとみる向きもある。 だが、その可能性は非常に低い。

住宅市場ではローンの焦げ付きに伴う差し押さえ件数が増加し、金融市場 も動揺し、ガソリンも再び値上がりしているのは確かだ。こうしたことすべて を考慮すれば、消費者信頼感指数が低下しているのも不思議ではない。

これらの要因は間違いなく家計支出を圧迫する。7-9月期の個人消費支 出はインフレ調整後で年率3%増となったが、10-12月期の伸び率が低下する と見込むのも無理もない。一方で、急落というのもほとんどあり得ないシナリ オに思える。個人消費は国内総生産(GDP)の約70%を占めており、一般世 帯が支出を増やし続ければGDPもまた伸びを見せ、景気拡大は続く。

バーナンキ連邦準備制度理事会(FRB)議長は8日の議会証言で、政策 金利を決める連邦公開市場委員会(FOMC)が「経済活動の拡大が第4四半 期(10-12月)に顕著に減速すると予想していた」と語り、個人消費の伸び率 低下が景気減速の一因となることを示唆した。

だがバーナンキ議長はリセッション入りする可能性については触れず、議 長らFOMCのメンバーが来年初めに再び成長が加速すると見込んでいること を強調した。

調査会社マクロエコノミック・アドバイザーズは9日、最近の経済指標に ついて、7-9月期のGDP伸び率が年率5.4%に「大きく上方修正される可能 性を示唆している」と指摘。米輸出の大幅な伸びと企業在庫の積み増しがその 要因だという。10-12月期はこうした要因がなければ、GDP伸び率が1.1% に低下するという。だがこれは、リセッションではない。

所得

最後に個人消費が四半期ベースで減少したのは64四半期前、つまり16年 前だ。1990-91年のリセッション後、景気回復期の踊り場の時期に見られたも のだ。企業による設備投資の落ち込みが引き起こした2001年のリセッション時 には、個人消費が減少することはなかった。

現在は失業率が4.7%と引き続き低水準で、雇用者数も伸び続けている。雇 用と給与の増加に伴い、所得も増加基調にある。9月までの1年間、可処分所 得はインフレ調整後で3.9%増と堅調な伸びを示した。7-9月期だけを見ると、 伸び率は4.4%に達している。

一部のアナリストは、住宅の値下がりが住宅の純資産価値を担保とするホ ームエクイティローンの利用者の借り入れ余力を制限し、住宅所有者の消費意 欲をそいでいると主張する。その影響がどの程度のものか明確ではないが、こ うした見方にもある程度の真実が含まれてはいるだろう。だが数年前と比べる と、住宅保有者が依然として巨額の含み益の恩恵を受けているのも確かだ。

含み益

例えば連邦準備制度が公表した最新の資金フロー報告書によれば、4-6 月期末時点での住宅所有者の「エクイティ」部分は10兆8500億ドル(約1208 兆円)と、昨年末に比べほぼ400億ドル、04年末と比べると1兆5600億ドル増 えている。住宅の純資産価値は6月末時点で過去最高の57兆8600億ドルと、 わずか2年半前と比べてもほぼ10兆ドル膨らんでおり、住宅所有者はホームエ クイティローンを利用し続けている。

歴史を振り返れば、所得が健全に伸び続けていれば、家計支出も同じよう な動向を示す。一般的には特別に大きな出来事がなければ、個人消費が大きく マイナスに振れることはない。

1980年4-6月期の個人消費は年率8.6%減と、前例のない落ち込みを示 した。当時のカーター大統領の要請で、連邦準備制度が緩やかな融資規制を実 施したことがその原因だった。多くの消費者がこの規制によりクレジットカー ド利用が違法になったと誤解していたことが世論調査から判明している。

その10年後、イラクのクウェート侵攻に伴い原油相場が急上昇したことか ら、消費者は突然支出を抑えた。石油の大幅な値上がりで、消費者は1970年代 後半のオイルショックのような厳しい時代を連想したようだ。それに比べれば 今のガソリン価格は1ガロン(約3.79リットル)当たり3ドルにすぎず、個人 消費が減少するほどの大変な状況とは言えないはずだ。 (ジョン・ベリー)

(ジョン・ベリー氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。 このコラムの内容は、同氏自身の見解です)

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