米国債市場にインフレ懸念が再燃、ドル急落で-TIPS人気高まる

米国債市場は1年半ぶりに、インフレ懸 念の高まりを示唆している。ドル急落で、インフレ高進への懸念が再燃した。

ブッシュ米大統領の就任以来31%に達するドル下落と過去最高に近い原 油高、4年ぶり低水準の金利の組み合わせは、投資家に物価上昇加速を確信さ せた。住宅不況のなかで米国債相場は上昇しているが、インフレ連動米国債 (TIPS)ほど大きく上昇したものはない。

TIPSの年初来のリターンは10%と、2002年以来で最高。通常の米国 債の投資リターンは7.3%となっている(メリルリンチのデータ)。10年物T IPSの利回りは通常の10年債を2.43ポイント下回る。この格差(ブレーク イーブン・レート)は、債券の年限におけるインフレ率予想を示す。9月には 同格差は2.19ポイントだった。

バンガード・グループのシニア・ポートフォリオマネジャー、ケネス・ボ ルパート氏は「現在はTIPSにとってほぼ完璧な状況だ」として、「世界経 済の強さとエネルギー価格、ドル安の組み合わせはインフレ要因だ」と話した。

米連邦準備制度理事会(FRB)の貿易加重主要通貨指数によると、ドルは 年初来12%下落している。ブルームバーグ・データによれば、主要貿易相手 国の16通貨中、メキシコ・ペソを除いた15通貨に対して下落。カナダ・ドル とブラジル・レアルはともに、ドルに対し約20%上昇となっている。

1年9カ月後

ドル安は輸入物価を押し上げ、インフレ要因となる。ドル安のヘッジとし て購入する商品の価格も上昇する。原油相場は年初来61%上昇し、11月には 一時1バレル=98.62ドルに達した。金は31%上昇し1オンス=848ドルを付 けた。10月の輸入物価は前年同月比9.6%上昇だった。11月15日に発表され る10月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比3.5%上昇と、06年8月以 来の高水準が予想される。

ドイツ銀行の米金利調査部門責任者、ムスタファ・チャウデュリー氏によ ると、インフレは通常、ドル下落が始まった1年9カ月後に加速し始める。同 氏はドル下落の結果、09年の消費者物価が「大きく」上昇する可能性がある とみている。アメリカン・センチュリー・インベストメンツのファンドマネジ ャー、セス・プランケット氏は「インフレ連動債が今一番有望だ」と話した。

住宅販売の低迷と住宅ローンの延滞増、信用市場の動揺を受け、米金融当 局はインフレ阻止の利上げに動くことが難しい。米連邦公開市場委員会(FO MC)は逆に、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を2カ月で0.75 ポイント引き下げ4.5%とした。金利低下はさらなるドル売り要因となり、イ ンフレをあおる。バーナンキFRB議長は8日の議会証言で、インフレには重 大な「上振れリスク」があるとの認識を示した。

先週は、10年債利回りは10ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%) 低下し4.22%で終了した。信用市場での損失が拡大するなかで、資金が国債 に逃避した。10年物TIPS(2017年7月償還)の利回りは13bp低下し

1.80%。インフレ予想を測るもう1つの目安である2年債と10年債の利回り 格差も一時81bpと、05年3月以来の水準に拡大した。インフレ懸念から長 期債のパフォーマンスが見劣りした。

バークレイズ・グローバル・インベスターズで運用に携わるジャバズ・マ タイ氏は「TIPSへの需要は高い。すべての指標が1直線に並んでインフレ の方向を指しているからだ」と述べた。同社は、商品相場との連動の大きい5 年物と10年物のTIPSを推奨している。

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