キリン:サンミゲル豪州子会社を2940億円で買収へ-海外事業強化(5)

酒類事業を主力とする総合飲料最大手のキ リンホールディングスは8日、フィリピン総合飲料メーカー最大手、サンミゲル の子会社で豪州の乳製品・飲料最大手ナショナルフーズの全株を取得し、連結子 会社化すると発表した。買収総額は約2940億円。酒類市場が伸び悩むなか、乳 製品や果汁飲料などを生産する同社を取り込むことで事業基盤を強化する。

買収総額には有利子負債2000億円を含む。キリンがサンミゲルに約2200億 円を現金で支払い、2007年12月までにナショナルフーズの全株式を取得する。 買収資金は外部借り入れや社債の発行で賄う。ナショナルフーズが外部から借り 入れている負債はキリンが肩代わりする。取締役なども送り込む。

新生証券の宮川淳子シニアアナリストは「原材料価格が高騰するなか、海外 企業の買収は為替リスクも抱えるため、キリンの経営陣にとってチャレンジング な決断ではあるものの、同社の海外事業比率30%という経営計画との整合性が あり、戦略の一貫性が感じられる」と述べた。

キリンは国内でも10月に、医薬品や飼料、肥料を手がける協和発酵工業の 買収を決めたばかり。同社は頭打ち傾向にある国内酒類事業から、海外事業や国 内での他の成長分野へも経営資源を振り向ける方針を打ち出しており、これまで 国内外でM&A(企業の合併・買収)を進めている。

ナショナルフーズは05年にサンミゲルが買収した全額出資子会社。サンミ ゲルはキリンが20%出資している。キリンは豪ビール会社のライオンネイサン にも約46%出資しており、今回のナショナルフーズの買収で、ライオンネイサ ンとの調達・物流・販売網の共有化なども進め合理化を図り、アジア・オセアニ アでのキリングループの存在感をさらに高める。

海外比率3割達成を加速

キリンは15年を最終年とする長期経営計画で、酒税を除いた売上高2兆 5000億円、営業利益2500億円を目標とし、それぞれの海外比率を約3割に高め ることを目指している。加藤壹康社長は会見で、「目標実現を加速できる良いパ ートナーを迎え入れることができた」と述べ、これまで提携したメルシャンや協 和発酵にも触れ、「成長基盤はかなりできあがってきたが、目標達成に向け、今 後も有力な案件があれば検討を続けていく」として、さらなる買収に意欲を示し た。

財務の観点から、新生証券の宮川氏は「買収資金2940億円を全額外部借り 入れで賄う場合、キリンのデット・エクイティ・レシオ(負債・資本比率)は 07年6月末の0.2倍から0.5倍近くまで悪化すると予想され、財務へのマイナ ス影響は避けられない」と述べた。しかし、同氏は「嗜好品である酒類よりも、 食品事業の方が景気変動への抵抗力があり、収益基盤の安定化に寄与する」とも 述べ、評価できるとした。

キリンはナショナルフーズ買収に伴い、のれん代300億円、同社所有の無形 固定資産2300億円、計約2600億円の償却が今後、必要となる。キリンは営業利 益段階で年約130億円ずつ20年かけて償却する予定で、償却は08年から開始す るとしている。

今回のファイナンシャル・アドバイザーは、キリン側がリーマンブラザーズ 証券と豪州の独立系M&Aアドバイザリー会社カリバーン、サンミゲル側がモル ガン・スタンレー証券。

キリンとサンミゲルは02年に資本提携し、キリンから役員3人を派遣する など両社でアジア・オセアニア地域での事業拡大に向けて連携を深めている。ナ ショナルフーズは、ヨーグルトの世界的ブランド「ヨープレイト」などで知られ、 豪州内だけでなく、東南アジアにも生産拠点を持つ。

キリンの株価終値は前日比38円(2.2%)安の1697円。

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