テロ特措法期限切れ、海自活動中断-内憂外患で視界不良の福田政権

インド洋での海上自衛隊の給油活動の根拠 となってきたテロ対策特別措置法が1日付で期限切れを迎える。石破茂防衛相 は同日午後にインド洋での自衛隊の活動停止命令を出した。2001年12月から 約6年間に及んだ海自の給油活動は中断され、補給艦「ときわ」と護衛艦「き りさめ」が帰国の途に就く。

政府は活動内容を給油・給水に限定した新テロ特措法案の早期成立を目指 しているが、民主党など野党は反対の姿勢を崩しておらず、海自の復帰、活動 再開のめどは立っていない。

石破防衛相は1日午後3時に自衛隊の活動停止を命令。福田康夫首相は 「補給活動を可能な限り早期に再開できるよう、新テロ特措法案の速やかな成 立に向けて全力を尽くす」などとの決意を明記した談話を発表した。

政治評論家の森田実氏は「海自活動の再開はかなり難しい。米国は早期再 開を強く望んでいるが、民主党の小沢一郎代表が簡単に折れるとは考えられな い」と分析した。

テロ特措法は01年9月の米同時多発テロを受けて同年10月に2年間の時 限立法で成立。03、05、06年に計3回延長された。防衛省の公表によると、テ ロ特措法に基づく支援実施相手国は米英パキスタンなど11カ国、日本が無償 で提供した燃料は計48万キロリットル、給油回数は777回(約220億円、07 年8月30日現在)に上る。石破防衛相が1日午後の衆院テロ防止特別委員会 で明らかにしたところによると、海自は最後となった07年10月29日までに 計794回の給油活動を実施した。

首相は10月31日、「海上自衛隊任務が終わってしまうのは大変寂しい。 いつかまた、できるだけ早く復帰できる状況になればいい」と言明。町村氏は 同日の記者会見で、「国際社会が一致してテロと戦っている戦線から日本だけ が脱落することは大変大きな汚点を残す」と述べ、「民主党から責任ある対案 が示されていないのはいったいどういうことなのか」と語り、民主党を強く批 判した。

民主党の菅直人代表代行は1日午後、党本部での定例記者会見で、「民主 党が何か意図的に審議を引き延ばしたということではなく、政府、与党が無策 に行動を取った結果、テロ特措法の期限が切れた」と述べた。

日米同盟に影響も

海自のインド洋からの撤退は国際社会での日本の位置付けに変化をもたら す可能性がある。高村正彦外相は10月31日の衆院テロ防止特別委員会で、 「特に米政府、民主党主導の米議会で日本の対応への疑問を生じさせ、ほかの 分野での日米協力に影響を与える恐れがあり懸念している」と断言。さらに 「日本がテロとの戦いに消極姿勢に転じたと国際社会に受け止められて各国の 対日姿勢に影響する恐れがある」と語り、危機感を示した。

岡崎久彦元駐タイ大使(岡崎研究所理事長)は海自の補給活動中断によっ て、「国際社会における日本の評価が下がるだろう。米国は福田内閣になって、 日米協力が全面的に後退するのではないかと懸念している」と語った。

安倍晋三前首相は、日本外交の機軸である日米同盟を全うするためテロ特 措法の延長に「職を賭す」とまで表明したが、直後に退陣を余儀なくされた。 福田首相は11月中に米国を訪問してブッシュ大統領との初会談に臨み、日米 同盟の強化などを確認したい考えだ。

しかし岡崎氏は「米国は、福田内閣があてにならないとなったら『何もで きず、何の役にも立たない内閣だ』と失望する可能性がある。そうなると、日 本は米国に無視される」と語り、日米関係が悪化する可能性に危惧を示した。

「新しい政治を工夫」と福田首相

自民党は07年7月の参院選で歴史的な惨敗を喫し、民主党が参院第一党 に躍り出た。自民、公明の連立与党は衆院で過半数を占めるものの、参院で野 党が過半数を持つ「ねじれ国会」は戦後初めての事態。とりわけ参院の勢力構 図は、政界再編がなければ与野党逆転の状況が6年間続くことになる。

福田首相は10月29日、民主党の小沢代表と初めての党首会談で新テロ特 措法案成立への協力を求めたが、小沢氏はこれを拒否。首相は翌30日、政権 運営について、「新しい政治状態のなかで工夫をしなければならない」と語り、 野党との政策協議の重要性を力説した。併せて「大連立と言うのかどうか知ら ないが、何か政治を動かす方法を考えなければいけない。それは今のところ見 付かっていない」とも語り、政界大再編を意味する「大連立」という表現を使 うこともはばからなかった。

首相は11月2日、民主党の小沢代表との再会談に臨む。町村信孝官房長 官は10月31日の記者会見で、新テロ対策特措法案の成立に向けた打開策が打 ち出されることを「期待している」と語ったが、先行きは不透明だ。

民主党の菅氏は1日の記者会見で、2回にわたる福田首相と小沢代表に党 首会談を経ても全く成果が出なかった場合のシナリオについて、「『衆院解散が 早まる、遅まる』とは言いがたいが、福田首相が野党党首に2度の会談をお願 いしてきたわけだ。何かを期待し、何かの提案を用意されているなら、それら が全く実現に至らないときには『福田首相が政権運営を続けられるのか』と見 られる」と語り、会談の結果次第で、福田首相の政権運営能力に黄信号がとも るとの認識を示した。

「自民党と民主党がただ対立に終始していたのでは、国民生活に関係する 法律や外交案件もスムーズには成立しない状況にある」-。首相は11月1日 付のメールマガジンでこう心境を吐露した。「内憂外患」を抱える福田政権の 針路は極めて視界不良だ。

--共同取材:廣川高史 Editor:Ushiroyama(okb/kzt/okb/nkk)

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