進む食品インフレ、農業関連株の上昇狙う投信増加-長期テーマ性内包

パン24年ぶり、即席めん17年ぶり――。 今年は食料品の値上げ発表が相次ぎ、食に恵まれる日本でも食糧問題が身近に なってきた。世界に目を転じると、人口増加などによる需給不安から問題は深 刻化。供給側である農業の重要度は増すばかりで、株式投資の観点からも関連 株への投資魅力は高いと、農業をテーマに据えた投資信託の設定が増えてきた。

東京海上アセットマネジメント投信の平山賢一チーフストラテジストは、 食糧問題の深刻さについて「需要がじわじわと増加する一方、供給側を見ると、 耕作面積はほとんど伸びず、これまで需要の増加を支えてきた生産性の向上に も頭打ち感があり、需給ひっ迫感が強い」と指摘する。こうした長期的な課題 の下では、供給力の向上をもたらす企業は株式市場でも注目を集めやすい。

ドイチェ、三菱UFJ、フィデリティ

投信業界でも、食糧問題を長期かつ深刻なテーマと捉え、問題を解決に導 く関連銘柄で運用するファンドの投入が目立ってきた。ドイチェ・アセット・ マネジメントは9月21日に、追加型株式投信「DWS ワールド・アグリビジネ ス・ファンド」を設定。同ファンドの純資産総額は17日現在、363億円と順調 に育っている。

ドイチェアセットでは、昨年12月にも農業を3大テーマの1つにした「日 興・DWS・ニュー・リソース・ファンド」を投入、純資産総額は2340億円と大型 化しており、投資家の関心の高さを示す。

11月6日に追加型株式投信「三菱UFJ グローバル農業関連株式ファン ド」を設定する三菱UFJ投信では、「さまざまな国で農業のビジネスチャン スが拡大し、IT(情報技術)やサービス、金融といった第2、第3次産業が 主役を務めてきた株式市場でも、第1次産業の農業が注目され始めてきた」 (証券マーケティング部・山口裕之チーフマネジャー)と分析。人口増加を背 景とした食糧不安が短期に崩れる可能性は低く、「長期の投資テーマ」(山口 氏)と見ている。

フィデリティ投信も、投資テーマの1つに農業を入れた「フィデリティ・ス リー・ベーシック・ファンド」を今月29日に設定する。同投信インベストメン ト・マーケティングの山本和幸シニアマネージャーによると、「狭義の環境型 運用や社会的責任投資といった概念的なテーマにとどまるのではなく、地球と 人類の将来を考えるという地球規模の壮大な投資テーマ」という。

既存ファンドは好成績、モンサントや日水の名前も

農業の将来性に対する評価はすでに始まっており、多くのファンドが注目 する遺伝子組み換え穀物開発最大手の米モンサントの株価は、この5年間で11 倍に急騰した。過熱感は否めないが、ドイチェアセットの松元浩CIO(最高 投資責任者)によれば、「農業はドラスティックな変化の過程にあり、ソリュ ーションが必要とされている。需要が減ることはなく、今夏に株式相場全体が サブプライム(信用力の低い個人向け)住宅ローン問題で急落した際も、関連 銘柄は打たれ強く、戻りも早かった」そうだ。モンサント株は10月12日、史 上最高値94.23ドルを付けた。

ドイチェアセットの「DWS ワールド・アグリビジネス・ファンド」と同じ 運用方針の外国籍のファンド「DWSグローバルアグリビジネス」では、7月 末時点でモンサントが組み入れトップだ。農産物の米アーチャー・ダニエル ズ・ミッドランド、スイスの農業化学品メーカー、シンジェンダがこれに続く。

東京海上アセットマネジメント投信が2005年9月から運用する追加型株式 投信「エネルギー・食糧関連ファンド(愛称:大地の恵み)」は、エネルギー と食糧の関連銘柄に投資するほか、エネルギー指数と農産物指数にそれぞれ連 動する債券を組み入れる。第2期(06年9月16日-07年9月18日)の運用成 績は、プラス21%だった。

9月末時点の現物株ポートフォリオで最も多く組み入れているのが、食糧 関連銘柄の日本水産。銘柄選定のポイントは、「自社で生産、加工、運搬でき る体制を整えているか。日水は世界展開の積極化で国内外に養殖、加工拠点を 保有、販売会社も買収している最中で、原材料高に伴う値上げをしやすく、収 益も上げやすい」(東海上アセット・平山氏)点という。このほか、独の化学 メーカーのK+S、米モンサント、独のエンジニアリングサービス会社のGE Aグループと、組み入れ上位4位を食糧関連銘柄が占める。

生産性の向上技術は不可避

ファンドが掲げる投資銘柄の着眼点は、耕作面積に限りがある中で生産性 の向上が求められることから、これに関連した技術を持つ企業群だ。肥料や除 草剤、バイオ技術を導入した種子ビジネスや遺伝子組み換え製品、マルチシー ディング、かんがいシステム、自立走行のトラクターなど、関連産業は多岐に わたる。この中で、独自の技術を持った企業は「M&A(企業の合併、買収) の候補としても注目される」(三菱UFJ投信の山口氏)という。

国連によると、2006年に66億人だった世界の人口は増加ピッチを緩める ことなく、2050年には91億人に膨張する見通し。これに見合う供給の増加が 必須なほか、所得水準が向上した新興国では食生活が肉食中心へ変化し、より 多くの飼料(穀物)が使われることから、さらなる供給増が求められる。

しかし供給面を見ると、都市化の進展に伴う森林伐採や地球温暖化による 砂漠化などで耕作面積は横ばい傾向で、1人当たりの農地面積はむしろ急減。 また、生産性の向上をもたらしてきた遺伝子組み換えがかなり進んだ結果、一 段の向上余地は限られて、需給のミスマッチに懸念は強い。

資源高騰でより深刻化、飽食日本の行方

需給懸念に追い討ちをかけているのが、昨今のエネルギー価格の上昇だ。 異常気象と原油価格の高騰を背景に代替エネルギー需要が高まり、エタノール などバイオ燃料が注目を浴びだした。バイオ燃料の原料となる大豆やとうもろ こし、さとうきびなどの穀物が、食糧でなく燃料用として消費される傾向が強 まっている。米国農務省は今年2月、米国産トウモロコシに占めるエタノール 用途の割合が向こう10年間で30%を上回るとの予測を公表。2006年は約20% だった。用途拡大に伴ってトウモロコシ相場は昨年81%値上がりし、食糧用途 の需要に影響を与えている。S&P GSCI農業指数のこの1年間の上昇率は 42%と、S&P GSCIエネルギー指数の5%を上回った。

食糧調達分野の勝ち組で、飽食の時代とも言われる日本では食糧危機を実 感しにくい。しかし今年に入り、大手食品メーカーによる食料品の値上げが相 次ぎ、消費者も問題を意識せざるを得なくなってきた。日清食品や明星食品、 東洋水産は即席めんを17年ぶり、国内パン最大手の山崎製パンは24年ぶりの 値上げをそれぞれ発表。原料の小麦価格がこの1年間で2倍に跳ね上がり、最 終製品の価格上昇はもはや避けられない情勢だ。

農林水産省によると、1965年度に73%あった日本の食料自給率は食の欧米 化に伴って低下し、2006年度に初めて40%を割り込んだ。世界主要国は03年 時点で米国が128%、仏122%、独84%、英70%で、日本の低さが際立つ。不 足分を海外からの輸入で補う日本の現状は、世界人口の急増などでこれまで通 りの勝ち組とはいかない可能性も浮上してきた。人口12億人の中国は、小麦輸 出国から輸入国へと転じ、食のブラックホールさながらだ。食料品の値上げを 含む最近の潮流変化には、金融市場にとっても目が離せないテーマになった。

-- Editor:inkyo

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