米メリルリンチ:サブプライム影響は尾を引く恐れ-CEOに厳しい目

米証券会社メリルリンチのスタンレー・オ ニール最高経営責任者(CEO、56)は、同社がサブプライム(信用力の低い 個人向け)住宅金融会社のファースト・フランクリン・ファイナンシャルを買 収した際、高効率の収入を約束した。現実には、この買収が裏目に出て業績の 重しとなった。

ファースト・フランクリンからの利益の減少と2007年7-9月(第3四半 期)の50億ドル(約5900億円)の評価損で、ジェフリー・エドワーズ最高財 務責任者(CFO)が4月に予言したサブプライム住宅ローン証券化による年 7億ドルの利益は実現しないことが確定してしまった。

メリルを高収益事業に進出させたオニールCEOをたたえた投資家は今、 同CEOのリスク評価が適切だったかどうかに疑問を抱いている。買収に関し 「自制と選別」をモットーとしてきたとの同CEOの自己評価にも疑問符が付 いた。

RCMキャピタル・マネジメントの金融サービス業界アナリスト、アダム・ コンプトン氏は、オニールCEOへの信頼は「確かに揺らいだ」と話す。メリ ルの株価は年初来21%下落と、米証券会社中3番目の下落率だ。

1998年のロシアのデフォルト(債務不履行)とヘッジファンド、ロングタ ーム・キャピタル・マネジメントの事実上の破たん以来、信用市場がこれほど 揺さぶられたことはない。世界の大手金融機関は7-9月に価格が急落した住 宅ローン担保証券や企業向け融資などの評価額を210億ドル以上引き下げた。

メリルは5日に、第3四半期は最悪で1株当たり50セントの赤字との暫定 集計を発表した。約6年で初の赤字となる。正式の決算は来週発表する。

就任以来の大失態

赤字はオニールCEOにとって、02年の就任以来で初の大きな失態だ。同 CEOはコメントを控えた。同CEOは今月、「業績には失望している」として、 「リスク管理の改善」を約束していた。

住宅ローン仲介のファースト・メトロポリタン・モーゲージは、自己破産 したことのある個人などをファースト・フランクリンに紹介していたという。 業界出版物のインサイド・モーゲージ・ファイナンスによると、ファースト・ フランクリンが06年に実行した融資は277億ドルで、米サブプライム住宅金融 で10位だった。ファースト・メトロポリタンがファースト・フランクリンに仲 介する融資の額は現在、月100万ドル未満と、半年前の1000万ドルから急減。 同社は現在、サブプライム融資をほとんど提供していないという。

サンフォードCバーンスティーンのアナリスト、ブラッド・ヒンツ氏は「フ ァースト・フランクリン買収は最悪のタイミングだった」と話す。同社の事業 縮小はメリルの証券化事業を減速させる。ファースト・フランクリンを買収す ると発表した後、オニールCEOは06年11月に、証券化する住宅ローン債権 の供給源が増え、高効率の収入につながりリターンが向上すると語っていた。

ブルームバーグ・データによると、第3四半期のメリルの資産担保証券(A BS)引き受けは81億ドルと、前年同期の156億ドルから減少した。今年4- 6月(第2四半期)は286億ドルだった。JPモルガン・チェースのアナリス ト、ケネス・ワーシントン氏は8日付のリポートで、「メリルは債券事業の回復 に苦戦するだろう」と書いている。

過ちを繰り返さない

メリルのデービッド・コマンスキー前CEOは、買収を通して世界の株式 関連事業へと業務を拡大していった。ナスダック(店頭市場)総合指数が21% 下落した2001年、メリルの利益も85%減と急低下した。オニールCEOは同じ 過ちを繰り返さないことを約束し、就任後、04年までは大型の買収を控えた。 05年11月には買収について「自制と選別」を実践してきたと語り、1社を買収 する前には10-15社を見送ってきたと慎重さをアピールした。

その約1年後にメリルはファースト・フランクリンを買収しABS引き受 け事業への依存を高めた。証券化事業の成長は目覚しく、バンク・オブ・アメ リカのアナリスト、マイケル・ヘクト氏によると、業界全体の手数料収入は06 年に56億ドルに達した。

しかし、サブプライム住宅ローンの延滞率はその後上昇し約15%に達して いる。アージェント・キャピタル・マネジメントで運用に携わるケン・クロー フォード氏は「オニールCEOは投資家の厳しい目にさらされるようになるだ ろう」として、ゴルフで「打ち直しが許される回数は決まっている。同CEO は既に1回を使ってしまった」と話した。

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