【米経済コラム】指標が景気悪化示すまで追加利下げはなし-J・ベリー

9月の利下げ以降の米経済指標は景気の悪 化を示唆してはいない。10月30、31日に開催される米連邦公開市場委員会(F OMC)での追加利下げの可能性は低そうだ。

個人消費と雇用者数の伸びは鈍化しているものの、劇的な悪化ではない。 輸出拡大と貿易赤字縮小が、住宅販売・建設の減速を一部補っている。

世界の短期金融市場は着実な改善の兆候を見せている。コマーシャルペー パー(CP)発行も増加しつつあり、レバレッジド・バイアウト(LBO)向 け高リスク高利回り融資の投資家への販売も進み始めた。投資適格級社債への 需要は堅調となり、ダウ工業株30種平均とS&P500種株価指数は過去最高値 付近を行き来している。

FOMCは9月18日にフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0.5 ポイント引き下げ4.75%とした。10月9日に公表された議事録は大幅な利下げ について、「そのような行動がなければ、信用収縮と住宅市場の調整の悪化が生 産と雇用に弱さをもたらすリスクがあると考えた」と説明している。

当局が最も恐れたのは恐らく、住宅市場の一段の落ち込みが個人消費に悪 影響を与えることだっただろう。サンフランシスコ連銀のイエレン総裁は9日 の講演で、「大きな問題は、相対的には小さい住宅という分野が、住宅価格の下 落を通して、より大きな消費という分野に広がるかどうかだ。住宅価格下落が 失業率上昇とともに起こった場合、リスクは重大なものになる」と述べた。

米商務省の12日の発表によれば、9月の米小売売上高は、家具や建築資材 など住宅関連の一部分野に弱さが見られたものの、前月比0.6%増と大方のアナ リストの予想を上回った。

ストーン・アンド・マッカーシー・リサーチ・アソシエーツのレイ・スト ーン氏は「当局者にとって問題なのは、住宅関連の支出の弱さが一時的なもの か、今後数カ月に悪化するかだろう」と話す。

明るいニュース

明るいニュースとしては、8月の米貿易赤字は576億ドルの赤字と、3カ 月連続で赤字幅が縮小した。貿易収支改善のおかげで、住宅市場の問題にもか かわらず、2007年7-9月(第3四半期)の国内総生産(GDP)は年率3-

3.5%成長を確保しそうだ。

ただ、貿易収支改善が続いたとしても、個人消費の伸び減速と住宅建設の 減少で10-12月(第4四半期)成長率は1-1.5%にとどまるとの予想もある。

米金融当局らが思案しているのは、08年初めがどうなるかだ。この問いへ の答えはまだない。コーン米連邦準備制度理事会(FRB)副議長は5日の講演 で、「住宅不況の景気への影響や信用収縮の波及による短期的な弱さを乗り越え た後は緩やかな成長が続く」との見方を示した。ただ、「この予想は通常よりも さらに不確実だと認識する必要がある」として、「家計や企業が金融市場の展開 にどう対応するかは不明だ。市場が平常と異なる動きをしているときにはこの ような不透明感が最大になる」と語った。

インフレ懸念

成長減速への懸念を表明したからと言って、米金融当局が突然インフレへ の監視をやめてしまったわけではない。コーン副議長は「インフレ加速を許す ことは国民の利益にならないし、物価安定と最大雇用の実現という、法によっ て定められた連邦準備制度の使命にも反する」と強調した。

米失業率は依然、4.7%と比較的低い。新規失業保険申請件数は週30万件 を若干超える水準で、解雇が急増してはいないことを示唆している。生産性の 伸びは2、3年前ほどではなく、報酬の伸びは加速しつつある。コーン副議長 は「単位労働コストの上昇は明らかに加速している」と指摘した。

一方で、インフレ率は今年、低下している。8月の個人消費支出(PCE) 価格指数は総合指数、コア指数ともに前年同月比1.8%上昇だった。FOMCメ ンバーらはこの数字に満足し、これを再び上昇させかねない政策行動を取るこ とはしないだろう。つまり、緩やかな成長を持続させるために必要となる以上 の利下げはしないということだ。

当局者は1998年秋の金融危機の後に米景気が急速に回復し、金融当局が利 上げを再開しなければならなかったことを覚えている。FOMCは9月18日の 声明で、その日の0.5ポイントの政策金利引き下げが一連の利下げの初回であ るとは示唆しなかった。

追加利下げが始まるのは、今四半期の弱さが来年に入っても続くか一段と 悪化する場合だけだろう。今までのところ、そうなる兆候は見られない。 (ジョン・ベリー)

(ジョン・ベリー氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。 このコラムの内容は同氏自身の見解です)