記録的なペースで上昇するアジア通貨、各国のインフレ抑制姿勢を反映

インド・ルピーや中国人民元などアジア通 貨が軒並み記録的なペースで上昇している。各国中銀がインフレ抑制のために 通貨高を容認していることも背景にある。

ルピーの対ドル相場は、今年これまでに11%上昇と、1974年以来で最大の 値上がり。ブルームバーグ・ニュースが今年初めにまとめたエコノミスト26人 全員の予想を上回っている。人民元相場も同3.8%高と、2005年の連動(ペッ グ)制廃止以降最速のペースで上昇。シンガポール・ドルも10年ぶりの高値に 達している。

各国は通貨高を容認することで、石炭や鉄鉱石、小麦など経済成長に必要 不可欠な輸入物資のコストを抑えたい考えだ。通貨高は一方で輸出品の値上が りにつながり、企業の競争力を低下させるリスクもある。

国際通貨基金(IMF)の元主任エコノミストで現在はハーバード大学の 経済学教授を務めるケネス・ロゴフ氏は「アジア各国の中銀は、通貨安を求め る輸出業者からの強い圧力に対応しながら、インフレを警戒し続けている」と 指摘。「インフレに苦しめられる前に、自国通貨を上昇させなければならない」 と語った。

ロゴフ氏は、ワシントンで19日開催の7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G 7)では、米国やドイツなど一部参加国が、アジア通貨高の促進に協調して取 り組むよう提案する可能性があると指摘する。欧州委員会のアルムニア委員(経 済・通貨担当)は12日、人民元の対ユーロ相場について、中国政府はさらなる 上昇を容認すべきだとの考えを示した。

中銀のドル買い後退

アジア各国の中銀は、利上げや国債発行だけでは、賃金上昇やインフレ加 速につながる流動性を十分に吸収できないとの見方を強めている。そのように 指摘するバンク・オブ・アメリカ(BOA)の新興市場外為ストラテジー担当 責任者ローレンス・グッドマン氏は「中銀のドル買いは以前より少なくなるた め、アジア通貨は上昇する」とみている。

中国人民銀行は今年に入って5回、インド準備銀行も過去2年間で7回の 利上げをそれぞれ実施した。それでも中国のマネーサプライ(通貨供給量)は 過去3カ月で18%超増加。インドの今年の給与の上昇率は平均14.5%と、2年 連続でアジア最高となっている(米人事サービス会社ヒューイット・アソシエ ーツ調べ)。

7、8月に新興市場から流出した国際投資家の資金が再び戻ってきている ことも、自国通貨の上昇加速を望んでいるアジア各国の中銀にとっては好都合 だ。インド、中国、フィリピン、インドネシア、シンガポールの株価指数は、 過去1カ月の間に軒並み最高値を更新した。

JPモルガン・プライベート・バンクの主任外為トレーダー、ポール・バ レット氏は「市場関係者はアジア通貨が大いに出遅れた事実に気付き始めてい る」と指摘。「アジア通貨は安い」と語った。