小麦高騰:国連の食糧支援活動の重荷に-飢餓拡大の懸念も台頭

小麦など食糧価格の高騰が、国際連合の 支援活動の重荷になっている。世界最大の食糧支援組織、国連世界食糧計画 (WFP:本部はローマ)のジョゼット・シーラン事務局長がこのほど来日、 都内での講演会で、穀物価格の高騰が「深刻な問題である」と強調、アフリカ など最貧国の飢餓拡大につながるとの危機感を募らせた。

国際農林水産業研究センター(茨城県つくば市)の小山修・研究戦略調査 室室長は、穀物相場の上昇が最貧国にとってはダメージを与えるとの考えを示 したうえで「国連から支援される食糧が減少するうえ、外貨が少ない最貧国に とって、食糧の輸入量が減少せざるを得ない」。特に、穀物相場が高値にある ときは「食糧を提供する側の米国や日本などの先進国は食糧援助を減らす傾向 がある」と警鐘を鳴らす。

食糧援助半減、援助対象国を減らすことも

紛争や自然災害などで深刻な事態が発生した場合などの食糧配給、給食 を支給しながら教育の機会を広げる「学校給食プログラム」などを展開するW FP。その食糧援助活動を支援するために資金集めなどを行う認定NPO法人 「国連WFP協会」(横浜市西区)の丹羽宇一朗会長(伊藤忠商事会長)は、 穀物相場の上昇を補うほどの援助募金を集めるのは難しいとの認識を示した。 「援助する食糧の量を半減するか、援助の対象となる国を減らすしか解決方法 はない」と半ば諦め顔だ。

WFPが2006年度に世界で支援した食糧は672万トン。内訳は、小麦・ 小麦粉が全体の44%と圧倒的に多く、次いでトウモロコシなどの粗粒穀物 ( 25%)やコメ(10%)などが続く。

国連食糧農業機関(FAO)ローマ本部・トレード&マーケット部でコモ ディティと世界貿易の動向などを調査するエコノミストのアダム・プラカシュ 氏は、食糧輸入額増加の影響は最貧国に大きな衝撃を与えると分析。世界銀行 が定義する最貧国は、アフガニスタン、アンゴラ、シエラリオネ、ソマリアな ど、世界約180カ国のうち約30カ国が相当する。穀物価格や国際輸送運賃上 昇が影響し、プラカシュ氏は「2007年の最貧国の食糧輸入総額は、2000年に 比べ約9割増加する見通し」と語った。

シカゴ小麦相場は最高値更新

国際指標となるシカゴ商品取引所(CBOT)の小麦先物相場は現在、1 ブッシェル当たり8.50ドル近辺で推移し、過去1年間で84%上昇している。 9月28日には日中取引の最高値である同9.6175ドルを付けた。大豆相場も同

9.50ドル前後を行き来し、この1年で56%上昇した。

「1970年代前半の食糧危機のときを思い起こさせる歴史的な高騰」(穀物 商社、ユニパックグレインの茅野信行代表)を受けて、国内では、農林水産省 が輸入小麦の政府売り渡し価格を四半世紀ぶりに値上げしたほか、製粉業界最 大手の日清製粉が5月に値上げを実施、パン業界最大手の山崎製パンもこのほ ど、24年ぶりの値上げを表明した。

国連の親善大使で、シドニーオリンピックのマラソンで銀メダルを獲得し たポール・テルカド選手(ケニア)。彼は就学児童のときにWFPの学校給食 プログラムの支援を受けたそうだ。第2、第3のテルカド選手を輩出させるた めにも価格の乱高下に影響されない安定的な食糧援助が求められている。