【経済コラム】中国が享受する「ベン」キャリー取引-W・ペセック

中国の投資家は今週、金を稼いでいない。理 由は簡単。株式市場が国慶節(建国記念日)の祝日のため開いていないからだ。

中国株ブームに乗るのは簡単だ。市場が開いていれば金もうけは可能。本 土株相場がファンダメンタルズ(経済の基礎的諸条件)よりも、相場そのもの の勢いにけん引されていることは、だいぶ前から知られていることだ。市場と いうよりは、むしろネズミ講に近いのかもしれない。一方で日増しにフロス(小 さな泡)が増え、現実離れしているのもまた事実だ。

マカオは恩恵を受けていない。マカオのカジノ市場は、ギャンブル好きの 国民性を支えに拡大しているが、最近ではそのお株を上海や深センの証券取引 所に奪われている。

中国は今、変革の時を迎えている。投資する銘柄の知識をほとんど持たな い投資家が、これほど簡単に金もうけができた例は少ない。中国株をバブルと 呼ぶのはもはや遅過ぎる。アジア第2位の経済大国は、株式や不動産、大気汚 染、スーダンからミャンマーに至るさまざまな国との外交の危機などあらゆる 面で、バブル中のバブルに直面しているのだ。

中国の高揚感は香港にも波及している。個人投資家は今週、本土市場の休 場などお構いなしに香港株を買い増している。海外投資家も積極的だ。本土投 資家による香港株投資が解禁されれば、香港株はさらに大幅に上昇するという 見立てだ。

香港株のバブル

香港株買いの効果は表れている。今週は香港ハンセン指数が初めて2万 8000ポイントを上回ったばかりでなく、売買高と株式時価総額も過去最高に達 した。ドイチェ・アセット・マネジメントのファンドマネジャー、ウィリアム・ バーバー氏(シドニー在勤)は、香港株の上昇を「バブル」と見ている投資家 の1人だ。

ハンセン指数が8月20日以降25%も上昇している事実をほかの言葉で表現 するのは難しい。香港証券取引所を運営する香港証券取引決済所の株価は今年 に入って167%上昇。香港紙スタンダードは今週のムードを「マーケット・マッ ドネス」(市場の熱狂)」という見出しで表現した。

中国本土から珠江デルタを横切ってやって来た「負けるわけがない」とい う心理は、ベン・バーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長がくれたプ レゼントだ。FRBが9月18日に実施した0.5ポイントの利下げは、世界市場 の混乱を和らげたばかりか、アジアで最も割高な銘柄への投資に再び安心して 投資できる環境をもたらした。

マーク・インベストメントのファンドマネジャー、アレックス・マーク氏 は、顧客向けリポートで「将来のバブルの種をまくモラルハザード(倫理の欠 如)があったという次元の問題ではない。プラス効果がほとんどない一方、マ イナス効果が多いため、利下げは間違いだ」との見方を示した。

救いの手

比較的長期的な視野に立ったこうした見方があるものの、投資家の多くは 気に留めていないようだ。

マイナス要因が株式の買い材料になる場合、何かが忘れられていることが 多い。株式市場がより道理にかなった状態にあれば、世界の信用市場が混乱す るなかでUBSやドイツ銀行が大規模な資産償却を進めている事実は、警告の シグナルになる。米国の住宅不況が悪化している事実も同様だ。にもかかわら ず現在は、こうした事実が明るみに出ることが強気材料と受け止められている。

もちろん「バーナンキ・プット」に頼れる限り問題はない。かつては「グ リーンスパン・プット」だった。市場の状況が危うくなるたびに救いの手を差 し伸べてくれるFRB議長の弱点を揶揄(やゆ)する表現だ。

世界的な信用危機にも、米国の消費者信用の拡大にも、サブプライム問題 にもバーナンキ議長が常に対応してくれる。ドル安によって円キャリー取引が 打撃を受けても、バーナンキ議長が救ってくれる。円キャリー取引が「ベン」 キャリー取引に取って代わりつつあるというわけだ。

無責任な投資家

おそらく最大の偽善は、米国が1997年に批判していたアジアの金融政策を 米国自身が実践していることだろう。無責任な投資家、銀行そして格付け会社 が自らの行動の付けを払わなければならないにもかかわらず、FRBは金融市 場に資金を供給。資金の大半がアジアに向かっている。

97年のアジア危機当時、米政府はアジア諸国の首脳に対してリセッション (景気後退)を恐れるべきではないと主張。リセッションは域内のこれまでの 過剰を解消させるため、新たなスタートの準備になるとの考えを示していた。 しかし今では、FRBが資産バブルに再び火を付け、おそらく必要性のあるリ セッションを回避するため、インフレリスクの台頭に目をつぶっているのだ。

リセッションは起きる。利下げに次ぐ利下げによって必要不可欠な調整を 回避する事態に歯止めをかけるには、数四半期間マイナス成長が続くことも必 要なのかもしれない。リセッションによって中国が景気過熱を回避し、貿易黒 字を縮小すれば、長期的には同国経済にとってプラスとなる。

政策当局者は、ジョン・メリウェザー氏率いるヘッジファンド、ロング・ ターム・キャピタル・マネジネントを救済した1998年の出来事から何も教訓を 得なかったのだろうか?FRBはその後も、過度なリスクを取る投機家を何度 も救うことで、そうした行為をむしろ後押ししている。

アジア市場は長らく好調な状態を享受してきた。バーナンキ議長がメリー ゴーラウンドを回し続けてくれることを知っている限り、投資家は心配無用と いうことなのだろうか。 (ウィリアム・ペセック)

(ウィリアム・ペセック氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニスト です。このコラムの内容は、同氏自身の見解です)

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