【コラム】世界の石油業界、ゆっくりと着実に進む「清算」-ポーリー

エクソンモービルに次ぐ米石油2位のシ ェブロンが現在の株価水準で自社株の買い戻しを継続すれば、2023年ごろまで に全株式を清算することになるだろう。

シェブロンは先週、向こう3年間で最大150億ドル(約1兆7300億円) 相当の自社株を買い戻す計画を発表した。現在の株価水準なら、シェブロンは 発行済み株式の約7.5%を買い戻すことになる。

豊富な資金を抱える石油業界では、自社株の買い戻しが頻繁に行われてい る。エクソンモービルは毎年、約300億ドル相当の自社株の買い戻しを行って いる。この状態が続けば、エクソンは、2024年ごろまでに全株式を買い戻すこ とになるだろう。

これは、それほど不合理なことではない。石油業界は、ただ単に、買い戻 しを好む米金融業界の要望に応えているわけではない。企業が買い戻しを行え ば保有する株式が増え、利益や資産が拡大する。ただ、これらの利益や資産が 減少し始めれば、株主にとって有利な時期も終わりを告げることになる。

投資家が保有する石油会社も、石油輸出国機構(OPEC)加盟国以外の 産油国の国営石油会社同様、あと数年もすれば斜陽に向かう。

ウィーデン・アンド・カンパニー(コネティカット州)のアナリスト、チ ャールズ・マクスウェル氏は、英蘭系ロイヤル・ダッチ・シェル、英BP、仏 トタル、米コノコフィリップスなどの石油会社が、2011年ごろまでに増産でき なくなるとみている。

主にアナリストとして石油業界に50年間携わっているマクスウェル氏は、 2014年までにこれら石油会社の生産の長期的な減少が始まると予測。「石油各 社は会社の清算に入るだろう」との見方を示す。

及び腰

原油を原料とするガソリンなどの燃料の需要は世界的に拡大しており、石 油業界は、需要に対応するのに十分な新規の原油埋蔵量を発見できていない。

原油相場が1バレル当たり80ドルを超える水準にあるにもかかわらず、 石油業界の幹部らは、油田を発見したり生産を拡大したりするリスクは大き過 ぎると主張し、探査には及び腰だ。ウィーデンのマクスウェル氏によると、現 在の石油業界の経験則では、1バレル当たり45ドルという相場水準が損益分 岐点になっている。

エクソンモービルはことし、探査とプラントの整備に210億ドルを投資す る計画だが、この額は、自社株の買い戻し費用に比べるとかなり少なくなる見 通しだ。

このことは、OPECへの依存度が高まっている石油消費国にとっては悪 い前兆だろう。消費国とOPEC加盟国の多くは、政治的に友好関係にあると は言えないからだ。

マクスウェル氏によると、メキシコ、ロシアのほか、英国とノルウェーが 保有する北海油田など、OPEC以外の地域の日量の原油生産は既にピークに 達している。また、同氏は、中国の生産も2010年ごろにはピークを迎えると みている。

望めない手助け

もちろん、石油各社の原油生産がゼロになるのは数十年先だろう。OPE Cが消費国に助けの手を差し伸べ、石油会社の生産減を補う可能性もあるが、 これまでのところ、そのような動きはない。マクスウェル氏は「OPEC非加 盟国は原油生産を増やすことができないし、OPEC加盟国は増やすつもりが ない」と語る。

多くのアナリストらが指摘するように、原油が有限な商品であるとすれば、 OPECが保有する原油もいずれ枯渇するだろう。マクスウェル氏によると、 OPEC加盟国であるインドネシアの生産は既にピークに達しており、リビア の生産は約5年以内にピークになるとみられる。

経営陣は、自社株の買い戻しを要求する投資家の声は無視し、1株当たり 利益だけではなく、企業利益の拡大につながる投資を模索するべきだ。ただ、 石油業界が今世紀中に事業を清算することになるとすれば、その手始めとして 株式の買い戻しも妥当なことなのかもしれない。 (デービッド・ポーリー)

(デービッド・ポーリー氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニスト です。このコラムの内容は同氏自身の見解です)