金は850ドルに高騰か-投資熱、加バリックなど産金会社にも波及

カナダのバリック・ゴールドや南アフリ カ共和国のアングロゴールド・アシャンティの株価が向こう1年間、金相場を 上回るペースで上昇するとの見方が広がっている。これら産金会社の株価上昇 率は、金相場に追いついていなかった。

大手産金会社の株価は2003年以来の安値となっている。バリックや米ニ ューモント・マイニングなどフィラデルフィア・ゴールド・アンド・シルバー 指数の構成銘柄の株価収益率(PER)は27倍となっている。金相場が1オ ンス当たり平均364ドルだった4年前には約30倍だった。米JPモルガン・ チェースとベルギーのフォルティスは、ロンドンの金相場が1年以内に過去最 高値の1オンス当たり850ドルに達すると予想している。

米ヌビーン・インベストメンツの株式部門で、資産規模340億ドル(約3 兆9100億円)のトレードウィンズ・グローバル・インベスターズのデービッ ド・アイベン最高投資責任者(CIO)は「産金業界はこの世で最も魅力的な 業界だ」と語る。トレードウィンズは、約50億ドルを産金企業に投資してお り、産金大手3社のバリック、ニューモント、アングロゴールドの株主上位3 位に入っている。

米金融当局が先月、4年ぶりに利下げを実施し、対ユーロのドル相場が最 安値まで下げたことを受け、ロンドンの金現物相場は9月28日、1オンス当 たり745.84ドルと、27年ぶりの高値に達した。アナリストらは同月、ニュー モントと南アのゴールド・フィールズの利益見通しを引き下げており、金相場 の上昇は依然、アナリストらによる産金会社の利益見通しには反映されていな い。

ニューヨークの金先物相場は、昨年の3月末以降、28%高騰し、フィラデ ルフィア・ゴールド・アンド・シルバー指数の19%、S&P500種株価指数の 18%を、それぞれ上回っている。この間の米国債のリターン(投資収益率)は

9.4%だった。金相場が20年ぶりの安値まで下げた1999年7月以降、196%上 昇する一方、バリックの株価上昇率は56%、ニューモントは162%にとどまっ ている。

利益見通しは「明るい」

ブラックロック・インベストメント・マネジメント(ロンドン)で300億 ドル以上の資産管理に携わるグラハム・バーチ氏は「産金業界の08年の利益 見通しは明るいようだ」との見方を示す。「産金会社株は比較的割安になって いる。金相場が1オンス当たり700ドルを上回る水準で推移すれば、金関連株 にとっては非常に支援材料になる」と指摘する。

バーチ氏が運用する17億ドル規模の「メリルリンチ・ゴールド・アン ド・ジェネラル・ファンド」は、6月末時点で資産の75%以上を産金会社株に 投資しており、年初来では34%上昇している。

顧客口座に7億ドルを有するユーロ・パシフィック・キャピタル(コネテ ィカット州)のピーター・シフ最高経営責任者(CEO)は「産金会社の株価 が現在の金相場に追いつくまでには長い時間がかかるだろう」と予想。「産金 会社は、現物相場で買うよりも割安な金を埋蔵地で大量に保有しているのだか ら、わたしは金の現物より産金会社の株式のほうを多く保有する」と語る。

シフCEOは05年12月、資金の半分を金と産金会社株に投資しているこ とを明らかにした。これ以降、金相場は46%上昇している。

鉱山会社の幹部らは、金相場がさらに上昇すると予想。相場上昇は、利益 見通しの改善や生産コストの管理、生産の維持や増強につながるとみている。

金は1200ドル台にも

世界4位の産金会社、ゴールド・フィールズのイアン・コッケリルCEO は「金相場が1オンス当たり1200ドルに達することも十分にあり得ると思 う」と述べ、「約2年以内にはそうなるだろう。もっと早いかもしれない」と の見方を示す。

コッケリルCEOはインタビューで、現在の相場水準でもインドや中国の 消費者の金需要は引き続き拡大するとの見通しを示した。また、バリックのグ レゴリー・ウィルキンスCEOは、金を原料とする宝飾品の購入量は増加して おり、世界の鉱山の生産は需要に追いついていないと指摘する。

世界の鉱山や再生業者からの金供給は減少している。貴金属調査会社、英 GFMSは、06年に10年ぶりの低水準まで落ち込んだ鉱山生産が、ことし下 期(7-12月)に、さらに1.6%減少すると予想している。同社では、アナリ スト15人が金や銀、プラチナ、パラジウムの調査に携わっている。

ウィルキンスCEOは、現在の産金会社株の状態を見ていると、原油相場 が1バレル当たり50ドルを超えるまで投資家らがエネルギー会社株への投資 を手控えていたことを思い出すと言う。

「新しい時代」

ウィルキンスCEOはインタビューで「産金会社にとって全く新しい時代 が到来しているため、投資家らが、この状態が持続するかどうかを見極めるの に時間がかかるのは当然だ」と述べ、「エクソンの株価が原油相場に追いつく のに3-4年はかかった」と振り返る。同CEOは、金相場が年末までに800 ドルに達するとみている。

ソーンバーグ・インターナショナル・バリュー・ファンド(ニューメキシ コ州)で140億ドルを超える資産を運用する共同マネジャー、レイ・ワン氏は 「金そのものは、ベッドの下に隠しているだけでは利益をもたらさない」と述 べ、「金を購入する際は金相場に投資するが、産金会社の株式を購入する際に は、金相場のほか、企業が保有する金の埋蔵量やマージンの改善度、経営効率 などを評価する必要がある」と指摘する。

ドルの代替投資先であるとともに、金融市場が混乱するなか安全な投資先 として投資妙味が高まっていることなどから、金相場はことし、年間ベースで 7年続伸となる可能性がある。そうなれば、少なくとも第2次世界大戦以降で 最長の上昇相場となる。個人投資家は現在、日本銀行の保有量を上回る量の金 にETF(上場投資信託)を通じて投資している。

懐疑的な見方

03年当時、ニューヨークの金先物相場の平均は1オンス当たり364ドル、 原油先物相場の平均は1バレル当たり30.98ドルだった。ことし9月28日に は、金相場は750ドルまで上昇し、原油は81.66ドルに達した。

それでも、インフレ調整後の金相場は、80年1月に付けた最高値の半分に 満たない水準で推移している。この時、ロンドンの金現物相場は850ドルに、 ニューヨークの金先物相場は873ドルに達した。一部のアナリストは、金相場 の上昇ペースが鈍化すると予想している。

仏ソシエテ・ジェネラル(ロンドン)のアナリスト、スティーブン・ブリ ッグズ氏は「われわれは常に最も弱気な見方をしている」と語る。同氏は9月 28日に、07年の金相場平均が650ドルになるとの見通しを示した。これまで の年初来平均は666ドルとなっている。同社の08年の相場平均の予想は625 ドルと、ブルームバーグが調査した12社のうち最も低い。ブリッグズ氏は、 この予想はドル相場が回復するとの見通しに基づいているとしている。

投機筋の持ち高

米政府の統計によると、ニューヨーク商業取引所(NYMEX)COME X部門のヘッジファンドなど大口投資家による金先物の買い越しは、8月24 日終了週以降、2倍以上に膨らんでいる。

GFMSは9月13日、7-12月の金の投資需要は306トンと、1-6月 の10トンから急増するとの見通しを示した。また、7-12月の宝飾業者向け の金の販売量は6.3%増の1309トンになると予想している。