「青い金脈」求めて投信増加中、野村アクア893億円-販売停止商品も

世界的熱波を通じて温暖化など地球環境の 悪化ぶりが再認識され、限りある資源の「水」に着目した投資信託の設定が相 次いでいる。顧客の反応も良く、野村アセットマネジメントの既存ファンドは 資産急増によって販売を停止中。同社が29日に新たに運用を開始した追加型株 式投信「野村アクア投資」もA、Bコース合わせて893億円という多額の資金 を集めた。「水」争奪戦を前に関連企業の株価は早くも上昇基調にあり、身近 なコンセプトと株価の先高期待が販売好調をもたらしている。

第1号商品は販売停止に

水をテーマとした国内公募投信第1号は、野村アセットマネジメントが04 年3月に投入した「ワールド・ウォーター・ファンド(A、Bコース)」。し かし、昨年夏あたりから販売額が急増した結果、運用資産の適正範囲維持のた め、今年5月に販売停止措置を取った。現在は購入できない。28日時点の純資 産総額は2コース合わせて993億円。

同種のファンドへの需要が高いことから、野村アセットは29日に「野村ア クア投資」を設定した。今年は6月に日興アセットマネジメント、7月に三菱 UFJ投信、そして8月は野村アセットと、3カ月続けて新ファンドが設定さ れている。28日時点で純資産総額の合計は1635億円だった。これに「野村ア クア投資」が加わると、2000億円台半ばまで膨らむ計算だ。

ラッセル・インベストメント証券投信投資顧問の水野善公・投資信託本部長 は、水など環境をテーマとした投資信託の設定が相次ぐ背景について、個人の 株式投資に対する関心が高まるなか、「複雑な商品性だと受け入れられにくい。 その点、環境ファンドなら身近に感じられ、好んで購入する傾向があるようだ。 販売会社にとっても新規顧客獲得の呼び水という役割を果たしている」と話す。

人口増と経済発展で水ストレスに

水は人間の生存に欠かせない。新興国を中心とした世界人口の増加と経済 成長に伴い、農業用水や飲用水、工業用水の需要は高まるばかりだ。しかし、 地球が供給できる水の量には限りがある。国土交通省のホームページによると、 地球上に存在する14億立方キロメートルの水の大半は海水で、淡水はわずか

2.5%。しかもほとんどが氷河や永久凍土で、容易に利用可能な水は0.01%で しかない。加えて、着実に進む地球温暖化によって砂漠化が進行し、干ばつや 洪水などの自然災害も多発。工業化に伴う水質汚染も深刻化しており、水のス トレス(需給逼迫による緊張状態)度は高い。

「かんがい技術の導入や改良による水の効率的な利用が求められている」 と指摘するのは、野村アセット・プロダクト・サービス部の村山治子マーケテ ィング・エグゼクティブ。蛇口をひねれば水が勢い良く出て、ほぼ100%の人 が安全な飲料水を口にできる日本では実感しづらいものの、世界レベルで見れ ば、利用可能な水の確保は重要な課題だ。石油をめぐる紛争の世紀だった20世 紀に対し、21世紀は水という「ブルーゴールド(青い金脈)」の争奪戦が繰り 広げられるとされる。

今年12月、第1回アジア太平洋・水サミットが日本の大分県で開催される。 アジアでは水の汚染が進んでいるうえインフラも整っておらず、政府主導での 対策や整備が急務だ。「水と安全はただ」という認識が染み付く日本でも、サ ミットを機に水問題や水関連に対する注目度が高まる可能性がある。

設備更新需要が目白押し、市場は年10%超成長も

水を確保している先進国でも、水道設備の老朽化による給水ロスが起こっ ており、更新需要の拡大が見込まれている。新興国の新規需要と合わせ、「ラ イフラインとしてのインフラ投資は安定かつ長期にわたる。水関連の市場規模 は年3650億ドル、今後年10%以上伸びると言われ、関連企業の収益機会はさ らに広がる」(三菱UFJ投信・証券マーケティング部の山口裕之チーフマネ ジャー)様相だ。

三菱U投信の「三菱UFJグローバル・エコ・ウォーター・ファンド」で は、水関連事業として、①上下水道の整備や水道サービスを提供する公益事 業・インフラ整備、②水道管やポンプ、バルブなど水関連装置、③海水の淡水 化と排水の再利用や工場向け純粋製造装置などの水処理技術、④上下水道イン フラや水処理システムのデザインや設計を手がけるエンジニアリング、⑤水の 節約や再生利用に関する装置や機器の開発・製造を手がける環境保全――の5 つを挙げる。いずれも、年15-30%のペースでの市場拡大を予想している。

このうち公益事業は仏スエズなど大型のコングロマリットが担っており、 参入障壁が高く、安定した収益を享受していくとみられる。水処理の分野では オルガノや栗田工業といった日本企業も活躍しており、ファンドでも6日時点 で組み入れている60銘柄のなかに栗田工など3銘柄が入る。投資候補となる水 関連企業は約90社。SRI(社会的責任投資)の観点から不適切な銘柄を除外 し、他ファンドとの差別化を図っている。

「野村アクア投資」

一方、「野村アクア投資」では、水関連企業として選んだ400社にサステ ナビリティ(持続的成長)の概念も加えて投資銘柄を選定する。選定は、サス テナビリティ投資に特化したスイスの運用会社、SAMサステイナブル・アセ ット・マネージメントが担当。同じ運用方針のもとに同社が運用している「SAM サステイナブル ウォーター ファンド」は6月末時点で、北米の家庭用パイプ でトップシェアの米ITTや、水質検査の試薬や水処理の消毒でマーケットリ ーダー的存在の米ダナハー、上下水道機器メーカーのスイスのギーベリッツ、 ボトル飲料水大手の仏食品加工会社ダノン グループなどに投資している。

関連株はすでに動く、エコ・ファンドの轍

関連企業の足元の業績は順調だ。水処理関連の世界大手5社の4-6月業 績を比較したUBS証券の星野英彦アナリストによると、「各社の増収率は好 調だった。なかでも栗田工業やクリスト、オルガノと、装置を手掛ける企業が 上位を独占した」。

個別銘柄の株価も、特にこの1年間で大きく値上がりしているものが多い。 投資魅力の高さを認識した投資家が積極的に買い付けており、28日時点でオル ガノの年初来上昇率は76%、栗田工も34%に達した。一方、今期予想PER (株価収益率)は栗田工とオルガノがともに26倍と、東証1部の平均17.6倍 より高い。「業績好調に加えて、世界的に水関連企業に注目が集まっているこ とから、相対的に高めで評価されている」(星野氏)。

投信の世界では、環境問題を意識した商品としてエコ・ファンドが1999年 ごろにブームとなり、その後廃れた経験がある。今回も当初設定額が膨らんで もその後残高が伸び悩むことも考えられ、ラッセルの水野氏も「残高動向には 注視していきたい」と述べている。

これに対して三菱UFJ投信の山口氏は、「当時のエコ・ファンドは啓蒙 や応援の色彩が強く、収益につながるものではなかった。しかし今回は、実際 に水関連企業にビジネスチャンスが広がり、収益源になっている。投資の面か らも妙味がある」と、違いを強調する。

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