斎藤・東京金先社長:外為証拠金取引など機能強化へ-競争激化(3)

東京金融先物取引所は、取引所間競争が厳し さを増す中、2年前にスタートした外国為替証拠金取引「くりっく365」のシス テムを来秋増強するなど取引所機能強化への取り組みを進める。斎藤次郎社長は ブルームバーグ・ニュースのインタビューに応じ、「くりっく365」のシステム増 強について「私どもの商品はどこにも負けない優れたものになる」と自信を示す。

外為証拠金取引は、わずかな資金で何十倍の金額といったレバレッジ(てこ の原理)の高い取引が可能で、内外金利差による円安圧力を追い風に、個人投資 家の間で急速に伸びている。

「くりっく365」は、1日平均の取引高が昨年度の6万2000枚から今年度は 現時点で15万6000枚と、2.5倍に増加。もっとも、シェアは証拠金取引全体の 1割にも満たないのが現状だ。参加している取引業者が13社と少ないうえ、レバ レッジの倍率、取引通貨数、機能の点で大手業者に劣る面もあるためだ。

東京金先は来年秋に約85億円をかけて同取引のシステムを増強する計画。対 円の7通貨にアジア通貨を加えるほか、ユーロドルなど対ドルのクロスカレンシ ーを上場。決済建玉の指定機能も導入するなど使い勝手を高める。

斎藤社長(71歳)は1993年から2年間、大蔵省(現財務省)事務次官をつ とめた。2000年に東京金融先物取引所の理事長に、2004年の株式会社化に伴って 代表取締役社長に就任した。財務省の財務総合政策研究所顧問、社団法人金融先 物取引業協会顧問も兼任する。インタビューは24日午後に行った。

金先取引所のシェア拡大は市場に有益

外為証拠金取引はOTC(店頭における相対取引)が中心で、当初は業者な どによるトラブルが多発、規制が強化された。東京金先は、公正で透明性の高い 市場づくりが望まれて参入した経緯もある。また、東京金先の外為証拠金取引で は他の取引所の先物取引と損益通算が可能なうえ、確定申告した年に控除し切れ なかった損失の繰り越し控除を翌年から3年間受けられる優遇措置もある。

斎藤社長は「非常に公正で、透明な取引が行われる」と指摘。「公正で透明な 取引が行われる私どものシェアが伸びることは、為替証拠金取引全体にとっても 有益」と語る。

日興シティグループ証券の為替ストラテジスト、山本雅文氏は「証拠金取引 業界での顧客争奪戦は激しさを増している。『くりっく365』も利便性を増し、魅 力を高める努力を迫られている。相場の要望に応え、取引通貨ペアの増加など、 多様な商品を提供する試みだろう」と述べている。

「これからも取引伸びる」-サブプライムで逆風も自信

昨今のサブプライム問題に伴う金融市場の混乱は、個人の外為証拠金取引に も多大な影響を与えた。斉藤社長は「(外貨の)買いから入る人が非常に多いなか で、私どもの取引所でも損を受けた人が相当多かったと思う」と話す。

「くりっく365」の買い建玉は、今月10日の41万枚から19万枚まで急減し、 短期間にかなりの取引解消があったとみられている。ただ、市場の落ち着きで再 び増加してきているという。斎藤社長は「相場の変動がある限り、いろんなかた ちの投資行動が可能。為替証拠金取引はこれからも順調に伸びていく」との見方 を示した。

証券化の功罪-デリバティブ市場への影響見極め

一方、斎藤社長は、サブプライム問題に絡み、さまざまな債権の証券化とい う資金調達の手法が、今後どのように評価されてくるかによってデリバティブ市 場への影響も違ってくるとして、今後の状況を見極める姿勢を示した。

サブプライム問題は、低所得者向けの高金利住宅ローンという、全体から見 れば一部の債権を含んだ商品で大きな損失が発生し、信用不安、流動性不安を引 き起こした。さまざまな債権を集めて、リスクを分散し、証券化して投資家に売 る、という資金調達手法の特殊な象徴とも見られている。複雑さを増すデリバテ ィブによってリスクが見えづらくなっている面もある。

斎藤社長は、日本ではこういった資金調達の手法が進んでいないため、影響 は小さいとしながらも、「証券化という手法自体が危ないということになれば、 デリバティブの世界に与える影響は非常に大きくなる」と指摘したうえで、「そ この見極めがまだついていない」と述べた。

「両方の要望が強かった」-翌日物先物2商品上場

一方、東京金先は新機軸も打ち出す。個人投資家向け「くりっく365」と金 融機関向けのユーロ円3カ月金利先物の二つの主力商品の取引増加を背景に収益 基盤を強めていることも踏まえ、今年12月には翌日物金利の先物を上場する。

翌日物金利先物では、無担保コール翌日物とGCレポ(現金担保付債券貸借) スポットネクスト物という、2商品を上場することになった。一つに絞りきれな かった経緯について、斎藤社長は「両方上場してほしいとの要望が非常に強かっ た。日本銀行の金融政策にも助けになる」と説明した。

コールは日銀の政策金利で、有名で分かりやすい商品だ。一方、レポは取引 規模が大きく、債券の需給によって変動の可能性が大きい商品。日銀が指標とな る東京・レポレートの公表を決定したことへの期待もある。

米国の政策金利フェデラルファンド(FF)レートの先物は有名で、翌日物 金利先物は将来の金融政策を予想するという意味で象徴的な商品でもある。斎藤 社長は「金融デリバティブはいろいろな商品が出てくるが、成功するのはごくわ ずか」と取引需要に注目するが、「活発な市場になると期待している」という。

損益分岐点が半分に-合理化が実る

主力のユーロ円金先は、日銀の金融緩和のもと、取引高が1日1万枚(1枚 =1億円)に落ち込む時期もあったが、昨年は1日平均が14万8000枚、今年は 17万9000枚まで増えている。2007年3月期の営業収益は107億7000万円と、前 期比162%の増加。9月期末を控えて、「収益的には去年以上のものになる」(斎 藤社長)見通しだ。

かつて東京金先は、家賃削減のための移転、年俸カット、人員整理など、大 幅な合理化に追い込まれた。しかし、その結果、損益分岐点が当時の7万枚(1 日平均)から半分に低下。短期金利の復活と為替証拠金取引の急増を追い風に収 益が急回復しており、経営努力が実ったかたちだ。

欧州で標準化されているシステムを導入し、コストを半分に抑える一方、取 引機能の強化を進めた。斎藤社長は、「システム、取引慣行から言っても、日本の 取引所の中で最先端。グローバル商品として取引の7割が海外投資家ということ の大きな要因ではないか」ともいう。

取引所の競争「いよいよこれから」-金商法施行

斎藤社長は、金融と証券の垣根がなくなる金融商品取引法の9月施行を前に、 「世界の取引所はあらゆる競争の中でやっている。日本もいよいよこれからだ」 と述べ、新商品の需要開拓などに意欲を示した。

10月からは東京金融先物取引所が証券先物を、東京証券取引所が金融先物を 上場させることも可能になる。しかし、それぞれの取引所がノウハウを持つなか で、実際は「新しい商品をどう介するか、いかに新しい需要を掘り起こすかとい うところに取引所間の競争が始まる」(同社長)という。

東証が証券現物、大証が証券デリバティブ、東京金先が金融デリバティブと、 それぞれが強みを持つ。一方、世界を見渡すと、シカゴマーカンタイル取引所(C ME)とシカゴ商品取引所(CBOT)が合併し、世界最大のデリバティブ取引 所も誕生しようとしている。

日本ではこれまで、監督官庁の縦割り行政で取引所の持分がはっきりしてい たが、最近は取引所の再編や総合化も議論され始めている。世界の市場はデリバ ティブを中心に急速に拡大しており、金融デリバティブで先頭を走る東京金先が 世界の波にどう乗っていくのか、市場関係者の注目が集まっている。

--共同取材:柿崎元子  Editor:Kosaka

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