【経済コラム】米住宅市場の底入れ近し、その根拠-K・ハセット

米住宅市場は底を打っただろうか。

サブプライム(信用力の低い個人向け)住宅ローン問題を受け、債券・株式 市場が10年前のアジア金融危機以来の混乱を呈するなか、米住宅市場はこのと ころ悪化を続けている。

苦境に陥ると、こうした状況はいつかは終わりを告げるということを忘れが ちだが、明るい材料がある。米住宅市場は底入れに近づいている可能性があるの だ。

先週発表された7月の米新築住宅販売は前月比2.8%増となり、新築住宅の 販売に対する在庫比率は7.5カ月分に低下した。信用懸念の広がりで住宅ローン の借り入れが難しくなるなか、このようなデータとなったことは、これまで住宅 購入を控えていた信用力のある消費者が購買に乗り出したことを示している。

サブプライム問題の衝撃は今後、さらに広がる可能性もあり、1カ月だけの データだけで結論を導くのには注意を要するが、米住宅市場の統計を冷静に分析 すると、同市場が経済全体に及ぼす悪影響は減っていくものとみられる。

住宅の経済学

米連邦準備制度のデータによれば、米国における新築住宅や改修への投資額 は2005年10-12月(第4四半期)から07年1-3月(第1四半期)にかけて 23%減少した。過去最悪の住宅不況に見舞われた1980年の減少率17%を上回っ た。

もちろん過去を上回る減少となったからといって、減少が止まることにはな らない。住宅販売の底入れが近いことを説明するには、住宅の経済学が必要だ。

理論上、長期資産への投資は、十分過ぎる投資を行ったと投資サイドが判断 したときに急減する。社会が1億戸の住宅を必要としていて、1億300万戸の住 宅があれば、住宅建設は急激に減る。

ただ余分な300万戸の住宅は壊されるわけではなく、所有者は戸数が自然に 1億戸まで減るのを待つことになる。

投資の減少

住宅投資は、自然減を補える水準以上に下落することから、このような縮小 局面に入ればデータにはっきりと表れる。

ただ、人口増を伴う成長経済では、この縮小は微妙に異なる。投資は、住宅 在庫のより持続的な増加を伴う水準まで減少することになる。

米連邦準備制度のデータによると、リセッション(景気後退)の時期を除け ば、1952年以来の国民1人当たりの住宅戸数の増加率は1.1%だった。リセッシ ョンの時期にも増加率はゼロに落ちることはなく、平均約0.8%となる。

したがって、不動産投資がすでに十分減少したかどうかを知るには、通常の 自然減と比較して現在を見る必要がある。投資が自然減に必要な水準より多けれ ば、まだ削減の余地があるということになるし、すでにそのレベルであれば、そ れ以上減ることはなく、安定化するだろう。

不動産在庫の増加率

そして最新の米連邦準備制度のデータは、投資がすでにこの水準まで減少し た可能性を示唆している。

1人当たりの住宅投資が年率約1.1%減少しているとの過去の政府データに 基づき、人口増加率を考慮して調整すると、住宅用不動産在庫の増加率は年率約

0.3%になる。

この数字は05年から約1ポイント低下しており、戦後のリセッションの時 期よりも約0.5ポイント低い。

しかし実際には、1人当たりの住宅投資の減少率はもっと大きい公算が高い。 もしそうならば、米国の住宅在庫は増加どころか、横ばいもしくは減少している ことになる。

サブプライム市場の損失の余波が広がるなか、今後も相場が暴落する可能性 が残っている。また、住宅建設とは逆に、住宅価格は一段と下落する恐れがある。

この2つが重なれば、個人消費の減少や法人の借り入れコスト増加によりリ セッションに至る可能性がある。だが、住宅市場が景気の重しとなる恐れはほと んどなくなったといえよう。 (ケビン・ハセット)

(ケビン・ハセット氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。 このコラムの内容は同氏自身の見解です)